第9話 恋愛相談はサービス外
この世界に来て4日目。昨日は意外な特技が開花したよ。
「おはよ」
朝、リビングに行くとみんなはもう揃ってた。
アンリくんはいつも通り軍服だけど、モコちゃんは昨日僕が作った服を着てくれてる。
あの後スカートも新しく作ったんだよね。
「おはようございます! モコちゃんすごく似合ってるね、かわいい」
「当たり前でしょ」
自信たっぷりなモコちゃんを朝から見れて、幸せな気分で席に着く。
「今日はどうする? 店出てもいいし、服作ってても良いけど」
「今日はお店に出るよ。服の依頼ってあんまり来てないみたいだし、宣伝もかねて」
モコちゃんの手が回らない時は装備品の調整を断る事も多いみたいで、依頼自体がそんなに来ないらしい。
今からは受付けられますよって言えば、依頼も来るよね……?
「まぁ確かにそうかも。じゃあよろしく」
「はーい」
朝ごはんはパンとポテトサラダ。
ルネちゃんは料理が好きみたいで、色々凝ったものが出てくる。
アンリくん曰く食べ合わせの良い食事が出てくるようになるまでは1食が全部おかずだったり汁物だったりで大変だったらしい。
「ダイヤ、この2、3日かなり明るくなったよな。ほんと、モコのこと好きなんだなぁ」
「うん! 大好きだよ」
モコちゃんが隣でため息をついた。
「大好きな何かが有るってのはいい事だからな。うん、良いねぇ」
アンリくんがニヤニヤしながら僕たちを見てる。
「アンリウザイ。ルネでも見ててよ」
「悪い悪い」
ヘラヘラ笑ってるアンリさん。
顔が良いから絵になるんだよな……。僕もそれくらいかっこ良かったら……モコちゃんは顔で人を判断しないか。
——と、言う感じでお店に出てきたんだけど……。
何故か僕は今お客様の恋愛相談に乗っている。
「って感じなんですけど、どうしたら良いんですか……?」
ほんの数日前までなら鏡を見ていると錯覚してたであろう感じの男の人——ミムンさんと言うらしい——が、落ち着きなく手を動かしながら、事のあらましを話してくれた。
とにかく好きな人が居るから頑張って告白したけど、根本的に見た目が無理と言ってフラれた……と。
ドールオーナーをしていて、すごく強いドールを操ってて、僕でも分かるくらいの凄そうな功績がたくさん有る。
でも、ドールもミムンさんも見た目は一切気にしてない感じ。
ドールは女の子らしいけど、パーツが見事にバラバラで強ければ良いと思ってるのが見て取れるおぞましい見た目をしている。
サラって可愛い名前をしているだけに、すごく可哀想だと思っちゃう……。
ミムンさんも、目にかかる黒髪は適当に切ったのが分かる感じで、ボサボサで、服もヨレヨレで……。
すごく、すごく過去の自分を見ている気がしてなんとかしたいと思う!!
「えっと……まず、サラさんの見た目を変えるのは確定で良いんですよね?」
「はい。せめてサラちゃんだけでもなんとかしなよって言われたから……」
「でも、どうするべきなのか分からないんですね……?」
「そうなんです。本当に、本当に見た目とか気にした事が無くて」
見た目を僕の好みやモコちゃんの好みで良い感じにしてあげる事はすごく簡単だけど、それじゃダメな気がする。
せめてミムンさんの好きな人の事とかを詳しく知りたい。
できるならこの世界で今なにが流行ってるのかとか、ミムンさんや彼の好きな人、サラさんの趣味とかを知ってから行動したい。
「見た目を変えるにはまず、外を見て回るのが1番ですが……」
でも、今は営業時間だし、終わってから連れ回しても多分他の店は閉まってるだろうし……。
「えっと……どうしよう」
ルネちゃんに店番を任せる? でもそんな無責任な事していいのかな。
「あっ、あっ、あの、アンリからこれ預かってます」
アンリくんの知り合いなんだ……。
というか、アンリくんがこの人にここを勧めた感じなのかな。
モコちゃんセンス良いもんね。分かってるな。
なんて思って、ミムンさんに渡された物を受け取る。
それは『ダイヤにミムンを任せる』とだけ書いた紙だった。
アンリくんは僕をなんだと思ってるんだ……?
恋愛経験どころか、モコちゃん以外の人を好きになった事すら無い僕に何を求めてるの!?
「アンリに呼ばれた気がしたから来たよ☆」
ルネちゃんが突然現れて、僕の手元を見る。
「だいたい分かったから行ってこい☆」
「えっ……いやでも僕」
「分かったから行け☆」
恋愛相談はサービス外なんだけどな!?
あっ、でも恋愛相談は些細な事ではないし……上手く解決できたらモコちゃんに褒めてもらえるかな……?
もしかしてアンリくんはそれを狙って応援してくれてる!?
……違う気もするけどやる事になったんだから仕方ない! 頑張るぞー!!
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