三者三様
◆◇◆
──得体が知れぬ。看破が必要な手合いか
コムラードは兜の下で顔を顰めた。
そういうモノとやり合うなら相応の準備がいる。
殴って殺せる、潰して殺せるモノであるならばともかく。
何かしらの根源、成り立ち、そういったものを看破し、打ち破らないと倒せぬ敵というものは珍しくない。
そして協会式の術式というものは、そのような手合いに対しては些か相性が悪いのだ。
コムラードは己の不利を悟る。
悟れば後はシンプルだ。
(時間を稼ぐ。然るのち、逃げるべし)
幸いにも、とコムラードは思った。
こういう手合いを得意とする術師が1人いる…
■
「そうですか、では俺も行きましょう。悪魔というのは面倒くさいのです。まあただ、仮に顕現されてもサブルナックであるなら問題はないでしょう。勿論多少面倒でしょうが。最良はやはり顕現前に悪魔崇拝者を始末する事ですね」
ミシルはちらりとこちらを見て聞いてくる。
「問題はない?根拠はあるのですか?」
勿論ある。
ただの偶然の産物にすぎないものであるが。
あの時、名も知らぬ子供の名も知らぬ姉に掛けた言葉は別に出まかせではない。確かにアレはそれなりに手古摺らされた。
アレと比べれば魔猿などは木っ端も同然だ。
「一度、殺しています。格付けは済んでいるという事です、術師ミシル」
顎に手を当てなにやら思案しているミシル。
「私は悪魔と交戦した事はありません。いざという時は頼らせて貰います」
助かる。
仕事は向いている者にやらせるべきなのだ。
ああ、そうだ、彼らの事を忘れていた。
ルシアンやドルマはともかく、あのお転婆娘だけはどうにも不安だ…
「それと術師ミシル。銀の月に生徒ルシアンと生徒マリー、生徒ドルマがいます。彼らに人を付けられませんか?彼らは暴漢を仕留めて情報を持ち帰ってくれた功労者です。一応身を護る札を増やしておきたいですね。まだまだ子供ですから…」
ではアリーヤを向かわせましょう、とミシルは言った。
あの骨のある術師ならば問題あるまい。
「敵が襲ってきたとして、情報源として生かしておく必要が無いのならばあの子で問題ないでしょう。彼女は4等術師ですが、3等でもおかしくない実力です。4等にとどまっているのは、彼女が…まあ…少し派手好きな性格だからなのです」
はて、派手好きとは…?
◆◇◆
SIDE:ルシアン
「ええ?帰れっていわれたとおもうけど」
僕はマリーへ言った。
「ルゥシアン!いい事!?いまこそ!弟子としての奉公を示す時じゃないの!?」
違うよ、弟子じゃないよと僕は思った。
生徒ではあるけど…。
「弟子じゃねえよ。というか勝手に弟子を名乗ったりしたら教師ヨハンは怒るんじゃねえの?形にこだわるタイプだろアレ」
ドルマの言葉に全面的に賛同する。
「…な、なら弟子候補よ!候補なら問題ないはずだわ!」
そうかよ、とドルマはマリーに呆れて、木窓を開けて外を眺めていた。
ドルマがいてくれて良かったと思う。
猛犬みたいなマリーも可愛いけれど、少し疲れる時があるのだ。
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文字数少ないですが、状況調整回です。
話をぐいっと動かす前に調整しておかないと書くのが大変なので…
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