第4話

「よーし、じゃあ射的は終わり!」



 彼女はニコニコしながらそう言った。彼女はそのままこちらに顔を寄せ、「ねぇ、次はどこに行く?」と聞いてきた。

 正直な話、僕はこういった祭りには一度しか行った覚えがない。それも幼馴染のあいつに無理やり連れてこられたようなものだ。だからどこに行けばよいとか、そういったものがわからない。



「あー、定番ならわたあめとかじゃないのか?」

「いや、それ以外にしよ」

「わたあめ嫌いなのか?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「じゃあ良くないか?」

「ダメ!」

「えぇ……」



 よくわからない。嫌いでもないのに固辞する理由が全く思い浮かばない。参った。僕は本当にこういったことに不慣れなのに……。食べ物系統がダメなのか?じゃありんご飴とか、そういったのもダメと……。それ以外だと……遊び系統か?



「金魚すくいとかはどうだ?」

「それならいいよ。君は金魚食べたりしないでしょ?」

「むしろするやつがいる方が驚きなんだが」

「あははっ、そうだよね」



 彼女は屋台を指さしながら「そこが金魚屋台だよ」といった。

 金魚屋台も射的屋台と同じく、不気味な印象を感じる。屋台に立っている人も生気を感じられない。



「よーし、じゃあ勝負だ!」

「はあ?」

「え、しないの?」

「するわけが……」

「あー聞こえないー」



 無理やりポイを押し付けられる。



「……わかった」

「うんうん」



 二人で静かに金魚すくいをする。余程集中しているのか、彼女も真剣な顔をしていた。何故だろうか。彼女とは初めてあったはずなのに、こうやって並んで金魚すくいをやっていることにデジャヴを感じる。不思議な感覚を覚えながら僕は目の前の金魚に集中した。

 結果として、僕のポイが破れて僕の負けになった。掬った数でも負けていて、完全敗北だった。



「はい、また私の勝ち!」

「またって……一回目はいつ勝負したんだよ」

「え?射的」

「あれ勝負だったのか?」

「そうだよ?」



 さも当然かのように言われる。納得いかない……。

 ……でも、少し楽しく感じる。あいつもこうやって無理やりいろんなところを引きずり回しては勝負してきた。あいつはよくこういった祭りに参加してたからこういうものに異常に強かったし、屋台にも詳しかったのをよく覚えている。



「ねぇ、今度はこっち行こうよ!面を売ってる!」

「ちょ、ちょっと待て。行くから引っ張るな」

「ほら、早くー!」

「だから待てってば!」



 * * *



 面を売ってる屋台についた。相変わらず不気味だが、売っている面は割とオーソドックスなものが多い。狐だとか、いろんなゲームとかのキャラクターを模した面が並んでいる。



「ねぇ、君はどうする?私はこれにする!」

「……じゃあ僕はこれで」



 そういって犬の面を取る。ほかの面はファンシーなものが多くてあまりつけたくはない。よくわからない場所だし狗神が憑依して何か願えないかなと淡い期待を持っているのもある。



「……あ!これもうすぐ花火が上がるんだよ。上に行ってみてみない!?」

「構わない」

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