魔法少女ラビリンス〜今日も平和を守ります〜
汐留 縁
第1話
「来たわね、魔法少女ラビリンス」
波打つ長い水色髪の少女は街中に立ち並ぶビルの上に降り立つ。
腰に携えたリボンを靡かせて、満月を背にポーズをとるように右手を掲げる。
「魔法少女ラビリンス、魔物が作り出した迷宮から、今日もこの街を救い出して見せますわ……って、なんだって今日もこんなことしないといけないのよー!!」
少女の叫びは街中に響き渡った。
「いい加減にしてよ!毎日毎日!こっちだって自分の生活でいっぱいいっぱいだってのに、無理やり戦わせられて、しかもこんな夜に…私女子高生なのよ!華の16歳!勉強にも恋にも大忙しなの!余計な仕事増やさないで!!」
目の前の必死な少女の叫びに、仮面をつけた黒髪ロングの女性はポカーンとしていた。
そんな中、ポンっと音を立てて女の子の傍に丸い生き物が現れる。
「ダメだよラビリンス。魔法少女なんだからそんな品位が落ちるような言葉使っちゃあ」
傍に現れたこの子はマルポチャ。魔法少女のサポートキャラで、略してポチャと呼んでいる。
「品位が落ちるも何も、聞いているのなんか目の前の敵だけじゃない。こっちだって、毎回毎回ストレス溜まってんのよ!だから…」
少女はどす黒い表情を浮かべれば、まっすぐに敵を指さす。
「てめぇら全員ぶっ倒す」
ポチャはわたわたしながら「だから、そういうこと言っちゃダメだって」
スーツ姿の仮面の女性はしばらく少女の勢いに呆然としていたが、突然ハッとしたかと思えば咳払いをして本来の目的を思い出したかのように切り替えた。
「さぁ、じゃあ今日こそこちらが勝たせていただくわね」
そう言って右手を振りあげれば後ろから黒い魔物が出現する。
よく分からない叫び声を上げながら魔物はこちらに向かって攻撃してきた。
そばのポチャが「ラビリンス、必殺技だ!」
と叫ぶ中、
こんなもの…
「必殺!一撃必勝ウルトラパーンチ!」
「ちがーう!」というポチャの声を聞きながら右手で思いっきり魔物を殴り飛ばした。
魔物はパンチと共にまた訳の分からない叫び声をあげて消えていく。
仮面の女性はその光景にポカーンとした様子だったが、またハッと思い出したように仮面に手を置いて口を開く。
「きょ、今日も負けてしまったわね。次こそは必ず勝つから覚悟していらっしゃい」
そう言い残して女性はビルから飛び降りた。
「そっちこそ!また次来たらどうなるか覚えとけよ!」
少女の叫びに「だから…」とポチャは何か言いたげだったが、それ以上は何も言わなかった。
☆
セーラー服に身を包んだ長い三つ編み髪の女の子は大きく欠伸をする。
「柚希、また遅くまで勉強してたの?」
同じ制服を着ている目の前の少女はそう言って「はい」とスティッククッキーを差し出した。
差し出された女の子は素直にクッキーを受け取る。
柚希の目の前にいる少女は、
髪は短く肩上ぐらいまでしかなく、性格は少しサバサバしている柚希の1番の友人だ。
柚希は桜咲の言葉に「そうなの」と言って苦笑いを浮かべた。
昨日は魔法少女として街の平和のために戦ってましたなんて言えるわけが無い。
実際、柚希は普段から勉強を欠かさない真面目な生徒だ。けれども昨日は戦いで疲れてしまい結局勉強ができず、結局今朝慌てて起きて課題だけ終わらしたような状態。
それもこれも、あいつらのせいだ!
☆
今年の春。桜が満開の中、高校の入学式を終えて柚希に2つの出会いがあった。
そのうちの1つが、魔法少女に関すること。
入学式を終えたその日の夜、ある夢を見た。
『あなたは選ばれし存在。どうか魔法少女としてこの街を守ってください』
そう言われ柚希は目が覚めた。
何、今の夢。と、ベッドから起き上がって目をこすっていればまた声が聞こえた。
「おはよう!魔法少女ラビリンス。僕はマルポチャだ。これからよろしくね」
今度は子供のような可愛らしい声。
ぽけ〜としながら、目の前でふよふよ浮いている丸い生物を眺める。
しばらくして意識がはっきりすれば、ギャーっと叫び声をあげた。
「な、な、な、なにこれ!?い、今しゃべっ…」
「落ち着いてラビリンス。今説明を、」
「いやー!やっぱり喋ってる!」
しばらく混乱して落ち着いたのはだいぶ時間が経ってからだった。
「落ち着いたかい?」
ふよふよ浮いている生き物は疲れたような顔をしてそういった。
「お、落ち着くわけないでしょ。でも、とりあえず話だけは聞くことにする」
ベッドの隅に縮こまるようにして柚希は口を開けば、丸い生き物はホッと息をついた。
「改めて、初めまして魔法少女ラビリンス。僕はマルポチャです。僕は魔法少女のサポーター役を担う、いわゆるマスコットキャラクターだと思ってくれていい。これから、君は色んな悪の敵と戦って、町を守る魔法少女になるんだ。きっと、この先色んな困難が待ち受けていると思う。でも、大丈夫!君は絶対に強い魔法少女になれる。君は選ばれし者だからね!ここまでで分からないことはあるかい?」
柚希は呆然として首を横に振りながら「全部」と呟く。
マルポチャはポカーンとして目をぱちくりさせると、「じゃあ、もう一度説明するね。僕は魔法少女のサポーター役を担う、」
「そ、そうじゃなくて!」
柚希は痺れを切らしたように口を開いた。
「まず、大前提として魔法少女って何!?街を守るって?悪の敵って?選ばれし者だから戦えってどういう意味よ!」
マルポチャは丸い目をパチパチさせて口を開く。
「魔法少女はそのままの意味だよ。魔法を使うことが出来る少女。この世界にも魔法少女っていう言葉はあるだろう?」
「ある、けど…」
マルポチャは空中で一回転をする。
「それと同じ。変身して魔法を使い、敵を倒すんだ。今この街には、平和を脅かす危険な魔物が存在する。その存在を放っておけば必ず街の人に危険が及ぶ。そこで、街を守るための魔法少女として君が選ばれたんだ」
柚希はマルポチャを見つめながら目をぱちくりさせた。
しばらく言葉もなくお互いに見つめあっていると、ベッドのそばにある目覚まし時計がなった。
「あ、そうだ。桜咲と出掛ける用事があったんだった。準備しないと」
柚希はタイマーを止めて準備するためにベッドから降りる。
「え、ちょ、まだ…」
柚希はピタリと立ち止まれば、マルポチャを振り返って口を開く。
「とにかく、どんなに説明されても無理!私に街を守るなんてこと出来るわけないし、私は、普通に生活していきたいの!だから、悪いけど他を当たって」
そう言い残して柚希はバタンと部屋の扉を閉めた。
その後、遊びに出かけた先で魔物に襲われ戦わざるおえなくなり、初めて魔法少女ラビリンスに変身して無事に魔物を倒したのはまた別の話。
そしてその日から、魔物と戦う日々が当たり前になっていった。
初めの頃は、もう少し魔法少女としての責務を多少は感じていたと思う。けれども、日々戦うのが当たり前になれば徐々に魔法少女とか責務とか平和とかがどうでも良くなって言ったというか、もちろん魔物が出現すれば倒すけれどやっつけ仕事な感じで言葉遣いも悪くなっていった。
☆
「それじゃ私、部活動があるから」
そう言った桜咲とは手を振って別れた。
柚希は帰るために玄関で靴を履き替え外に出る。
そのまま校門の方へ向かえばキャーと女子の黄色い歓声が聞こえた。
そちらに目を向ければ、サッカー部がコートで練習試合をしていた。コートでは左側のチームは勝ったのか、肩を組み合い喜んでいて、その中心では一際目立つ男子がいた。
柚希は彼の名前を知っていた。
入学当初からかっこいい1年がいると噂になり、瞬く間に学校中の有名人になった。
そしてその彼こそがもうひとつの、柚希が入学式の日にあった出会いだった。
入学式の日、柚希は渡り廊下を歩いている時に彼を見つけた。
桜の木の下、もの思うような彼の表情から目を離せなかった。
花びらが舞い散る中、1人佇む彼の横顔に一目惚れした。
柚希は彼に恋をしたのだ。
その時は名前も彼のことも何も知らなかった。
クラスに戻り、自己紹介の時間の時に初めて彼が同じクラスであることと彼の名前を知ったのだ。
でもあっという間に彼の噂は広まって、彼は
だから、柚希は遠くから彼のことを見つめるだけだった。
今も、彼がサッカーをしている姿を遠くから眺める。
柊はボールを蹴りながら敵チームの2人のガードをすり抜けて見事ゴールを決めていた。
キャーと騒ぐ女子たちに混ざって柚希も小さく「やったー」とガッツポーズをする。
その時、柊の方を見れば彼と目が合った。
えっ、と驚いていれば一瞬で周りの女子達が間に入り、壁となって彼の姿は見えなくなる。
気の、せいかな?
もう一度彼の姿を探せば、次のゲームが始まっていて彼は試合に集中していた。
多分、気のせいだよね?
きっと自分の願望がそう見えてしまったのだと思う。
途端、自分の妄想だったと思えて恥ずかしくなってきた。
目が合っただけで自惚れて、私と柊君は全然遠い存在なんだから。
その時、ポンッと音を立ててポチャが現れる。
「大変だ!ラビリンス、魔物が現れた」
柚希は慌ててポチャを鷲掴みにし周りが歓声をあげる中、急いでそこを離れた。
建物の影に隠れればポチャを宙に放り投げて、叱るように腰に手を置く。
「もう!人前で姿を現さないでって言ってるでしょ!」
「そんなことより、早く魔物を倒さないと!」
ポチャの焦りように、仕方がないと柚希はため息をついて胸元からペンダントを取り出す。
右手で握りしめて柚希は目を閉じ、呪文を唱えた。
「マジカルマジカル。魔法少女ラビリンスの名のもとに、迷宮の扉よ、開け!」
ペンダントから降り出す光の中で柚希はくるりと回って変身する。
光が消えれば波打つ長い水色の髪、水色のレースがふんだんに広がるワンピースと前が膝丈で後ろが長いアシンメトリーのスカート、腰に結ばれたリボンは蝶のように広がっていて、そこには魔法少女ラビリンスの姿があった。
「さあ今日もギッタンギッタンのボッコボッコにしてやる」
ボキボキと手を鳴らすラビリンスの姿にポチャは遠い目をして見ていた。
☆
ポチャに案内されて小学校の屋上に向かえば、既に仮面をつけた女の姿と黒い影がいた。
「やっぱり来たわね、魔法少女ラビリンス」
ラビリンスは女を凄むように睨みつける。
「今日こそは、再起不能になるまでぶっ潰してやる」
あまりのラビリンスの様子に女は「ひっ」と悲鳴をあげて仰け反る。
「どっちが悪役か分からないなぁ」と隣のポチャが突っ込む。
「相変わらず、口が悪いわね」という女にラビリンスは殴り掛かる体勢に入る。
女は「待って待って」と焦ったように両手を降って、「ほら、はやくいきなさい!」とラビリンスを指させば黒い魔物がこちらに向かってくる。
今日もいつものように向かってくる魔物を殴って倒そうと振りかぶった。
「必殺!一撃必勝、」と殴ろうとすれば、魔物はそれを避けて背後に回る。
え?と思えば右手は空振って、そのまま体当たりされるように屋上から落とされた。呆然としていれば宙に体が投げ出される。両手を伸ばしてもあっという間落ちていく。
ポチャが「ラビリンス!」と叫ぶ声が聞こえた。
屋上の景色が遠ざかるほど地面が近づいていく感覚に体が強ばった。
ぶつかる!
目を瞑り、衝撃に構えた。
けれども、地面にぶつかると思って強ばった体は何かに包まれて、驚いて顔をあげれば仮面をつけたマントを羽織っている男の姿。
ラビリンスはじっと男を見つめ、「あっ!」と声を上げれば男はビクッとする。
「でた!謎の仮面の男!」
この仮面の男はいつもタイミング良く助けに来る。
1番初めの戦いの時も、この仮面の男は苦戦して戦うラビリンスを助けるようにして登場した。
そしてその日から戦いの度、ラビリンスを助けに来る。今のように。
仮面の男はハハッと笑い声をあげる。
「謎の仮面の男、ね。まぁ、確かに今まで名乗ってなかったからね」
そう言ってラビリンスを地面に降ろす。
「さぁ、今日もあれを倒しに行こうか」
仮面の男は屋上を指さす。
魔物は黒い煙のようにモヤモヤと屋上の上を漂っていた。
そしてまた謎の叫びをあげている。
ラビリンスはため息をつきたい思いを飲み込んで仕方がないと口を開く。
「そうね、さっさと倒しましょう」
ラビリンスは強く地面を蹴れば、屋上にいる黒いモヤに向かって蹴りを入れ込んだ。
魔物はまた謎の叫び声をあげて屋上に叩きつけられる。
「はあ!!」と言って魔物に右手を振りかぶる。今度こそ見事に命中した。
魔物は1番強い雄叫びをあげる。
よし!とラビリンスは手をパンパンと払う。
今日もこれで任務完了!と、終わったとばかりにラビリンスはくるりと後ろをむいた。
さてと、っと思っていればポチャが「ラビリンス!まだだ!」という声とともに一際大きい叫び声が背後に聞こえた。
後ろを振り返れば先程よりも膨張した黒い影があった。
呆然としていれば、横から何か衝撃が来る。
「…うぅ、ぅ」と呻き声を上げれば誰かに抱きしめられていて、ラビリンスが元々いた地面にはヒビが入っていた。
呆然としながら抱きしめている人間に視線を落とす。
「ちょ、謎の仮面男!」
ぐったりとしている仮面の男を揺すった。
男は片手で頭を抑えながら起き上がる。
「…無事かい?ラビリンス」
男の苦しげな声に、ラビリンスの方も苦しくなった。
私が油断したせいで、彼に怪我をさせたのだ。
「ごめんなさい…私が油断したせいで…」
男はじっとラビリンスの様子を見つめていると、ラビリンスの頭にそっと手を置いた。
「大丈夫、僕は君の盾だから。今度こそ、僕が君を守るよ」
え?、とラビリンスは男を見つめた。仮面の奥の彼の瞳は優しく微笑んでいるように見えた。
あれ?この顔、どこかで…
そんな中、魔物はまた雄叫びをあげた。
ハッとしてラビリンスは魔物を見上げる。
ラビリンスは仮面の男から手を離して立ち上がる。
「ありがとう仮面の男。でも、私強いから。街を守る魔法少女だから、大丈夫だよ。いつも助けて貰ってる分、今度は私が守るよ」
そう振り返って微笑む。
仮面の男はこちらをじっと見つめていた。
ふと、昔、子供の時もこんなことがあった気がした。
いじめられていた男の子を守った記憶。子供の頃のヒーロー気取りのようなことだったけれど、確かにこんな感じで男の子を背にして守った。
私って子供の時からこんなことやってたんだな。
正直魔法少女なんて無理やりやらされてる気分だったけど、意外と性分にはあってたのかもしれない。
ふふっと微笑んでラビリンスは右手をあげる。
「魔法少女ラビリンス、魔物が作り出した迷宮から、今日もこの街を救い出して見せますわ」
そして、そのまま右手でビシッと魔物を指さす。
「そして!この非現実の迷宮を作り出したてめぇら、全員問答無用でぶっ倒すから覚悟しろ!」
「また、そんなこと言って…でも、これでこそ魔法少女ラビリンスか」
ポチャがそんなことを呟いた。
「うりぁ!!」と魔物に右手の拳を繰り出す。
魔物は瞬時にその攻撃を避けて背後に回り込む。
ふっ、とラビリンスは笑う。
2度同じ手には引っかからないわよ。
ラビリンスは横に飛び退く。
そこに魔物の攻撃が繰り出された。その魔物に向かって思いっきり蹴りを繰り出す。
魔物は雄叫びをあげて屋上から落ちていく。
さあ、留めだ!っと地面に落ちた魔物に向けて右手に力を込めていれば「ひゃっ!」と叫び声が聞こえた。
見れば魔物の傍に赤いランドセンを背負った女の子がいた。
嘘っ、と驚いていれば、魔物は女の子を見ると獲物を見つけたようにニタァと笑って女の子に襲いかかろうとした。
危ない!ラビリンスは咄嗟に飛び降りる。
「ラビリンス!魔法を使って!」というポチャの声にウッと眉を寄せる。
ええい!仕方がない!と右手を伸ばす。
「ラビリンスの名のもとに!いでよ、魔法のステッキ」
ポンっと音を立てて右手には魔法のステッキが握られている。
ステッキの先端は惑星の様に光を閉じ込めて輪がクルクルと回っていた。
ラビリンスはそのステッキを思いっきり振り上げる。
「ステッキー!アターック!」
「ちがーう!」というポチャの声を聞きながら思いっきりステッキを魔物に叩きつけた。
魔物は強い雄叫びをあげた。そしてステッキの衝撃と共に消滅していき、魔物の姿は完全になくなった。
ラビリンスはステッキは手放すように投げて、役目を終えたステッキはポンっと消えた。
ラビリンスはふぅと汗を拭う。
無事に終わったとホッとする。
視線を動かせば地面に驚いたように腰を抜かしている女の子がいた。
ラビリンスは手を伸ばすと女の子を立たせて、服についた砂埃を払ってあげる。
「大丈夫?怪我はない?」
女の子はポーっとしてこちらを見つめて「おねぇちゃんは魔法使いなの?」と聞いてきた。
あー、そうだ見られたんだと改めて思い出す。
ラビリンスはうーんと悩んでから女の子を見つめて口を開いた。
「私はね、この街を守る魔法少女なの」
「魔法少女?」
女の子はコテンと首を傾げ、それにラビリンスは頷く。
「だから、誰かに私の姿を見られるわけにはいかないの」
「どうして?」
不思議そうな表情の女の子にラビリンスは困ったように微笑みをうかべる。
「だって、さっきみたいな魔物がいる街は怖いでしょ?だから、私みたいな存在はいない方がいいの」
女の子は目をぱちくりさせていた。
「私は平和のために魔物を倒す魔法少女だから、誰かに知られるわけにはいかない。だから、私の事は秘密にして欲しいの。できる?」
女の子はじーっとラビリンスを見つめたあと、ゆっくり口を開いた。
「また、まものに襲われたらおねぇちゃんは助けてくれる?」
ラビリンスは目を瞬かせてから微笑む。
「ええ、必ず助けに来るわ。魔法少女ラビリンスの名にかけて」
女の子はぱあと明るく微笑んで頷く。
「うん絶対約束する!誰にも言わない!絶対に!」
そう言って女の子と指切りを交わした。
そうしてラビリンスは女の子に手を振って、地面を強く蹴って屋上へ戻る。
女の子はそんなラビリンスの姿を見あげて「かっこいい!」と目を輝かせていた。
ラビリンスが屋上へ戻れば、仮面の女も男もおらずもぬけの殻だった。
「くっそぉ、逃げられた…」
ラビリンスは膝をついて悔しがる。
仮面の女をコテンパンにやっつけて、平和な日常に帰ろうとしたのに。
あと、あの仮面の男の正体も聞きたかった。何が目的なのか、それと、何者なのか。
あの既視感。
もしかして、前にどこかで会ったことがあるのだろうか。
ラビリンスが考え込んでいれば、はしゃぐような声が耳に届いた。
「おつかれラビリンス!さすが、ぼくが見込んだ魔法少女だ!あっという間に敵を倒したね」
嬉しそうな様子でこちらに近づいてきた丸い物体をむんずと掴み。
「ふにゃ!」という声をあげるポチャを凄む。
「あんた何敵を逃がしてんのよ」
「へひ(てき)?」
「もう、今日で全部終わらせるつもりだったのにぃ」
悔しげなラビリンスの姿をポチャはポカーンと見つめている。
「…さっきまであんなにかっこよかったのに」
悔しがるラビリンスの姿にポソりとポチャは呟いた。
「これ以上魔法少女なんてやりたくないの!私は、普通の女子高生に戻りたいの!!」
魔法少女の叫びは響き渡って空へと消えていく。
魔法少女ラビリンス〜今日も平和を守ります〜 汐留 縁 @hanakokun
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