第5話ただ、小説家なるものは
川端康成氏を「名誉市民」にしようと、彼の故郷の茨木市の役人たちが、鎌倉の彼の家に訪ねた時に応えた言葉である。
「ただ、小説家なるものは、不名誉の言行をあえてするにきまっており、無道背徳の作品をあえて書くにきまっている、それがなくなれば小説家の死滅であるほどだから、いつなん時名誉市民の称号を取り消されてもよい、たいていそういう事態が生じるだろう」、と私は繰り返し強く言ったが、市の人たちは納得がゆかぬようであった。
※川端康成の随筆「美しい日本の私:夕日野」より
確かに名誉市民などの称号を得れば、当然、周囲からの監視も(下手をすれば、嫉妬、やっかみ、細かな失態への非難まで)強くなる。
これでは自由に取材(主に社会的批判の強い人々、場所)への取材などは、当然、難しくなる。
自由に取材して、正確な事実をもとに文を書かねば、小説としても深みも重みも、あったものではない、その意味で、小説も小説家も死滅するのである。
それを考えれば、「小説家だから偉い」「名誉市民だから偉い」などと言う認識は、小説を書くものにとって、蹴飛ばしたくなる程の「不要な、いらないもの」になる。
また、同書中に、川端康成氏自身が「自殺」に否定的な見解を述べた部分があるけれど、結局、川端康成氏も自殺してしまった。
(後日、その部分も考えてみたい)
結局、ノーベル賞など貰って、それが多大な負担になったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます