第3話 大根畑を護ることになってしまった。

「俺に王位継承するって、どういうことだよ!」


 俺は驚いた勢いのまま、王に言葉をぶつける。


「どうもこうも、そのままの意味じゃが?」


 はて? って感じで喋るんじゃないよ。何もかもが唐突すぎるんだよ。


「いきなりそんなこと言われてもだな……」


 俺は戸惑った様子で返すと、王が現実を突き付けてきた。


「そうしたら、お主は食べられるだけの運命じゃぞ? それでもいいのか?」


「それは嫌だ」


 死んで転生したと思ったら、またすぐに死ぬだなんて。そんなの嫌すぎる。

 俺には、王になる道しかないのか……。


「わ、わかった……。王に……なる」


 俺は、王になる道を受け入れることにした。


「だけど、王って何をするんだ?」


 王という冠を先に得てしまったが、俺は大事なことを聞き忘れていた。


「この畑をありとあらゆるものから護るのが、王の仕事じゃ」


 旧王は、得意気にそうこたえた。


「ありとあらゆるもの?」


 なんだ? 異世界ファンタジーみたいに、魔人やらなんやらが襲ってくるのか?

 そんなことを考えていると、旧王は説明をはじめる。


「うむ。畑には日々、様々な生き物がやってきて大根を狙ってくるのじゃ。アブラムシ、アオムシ、ケラ、シカ、イノシシ、サル、etc. そやつらと戦って、大根畑を護るのじゃ」


「そんなことかよ……」


「そんなこととはなんじゃ! これもれっきとしたお仕事なんじゃぞ!」


 俺は、旧王に強く怒られてしまった。

 というか、戦わなきゃいけないのかよ。


「戦うって、追い払うだけじゃダメなのか?」


 俺がそう聞くと、首を振りたかったのだろうが、体全体を左右に振りながら旧王はこたえた。


「それだけじゃダメじゃ。追い払うだけじゃと、また畑を狙ってくるぞ。ちゃんと戦って、倒さなければならん」


 なるほど。倒さなければ、いたちごっこになるってわけか。


「でも、戦うっていっても、どうやって戦えばいいんだよ」


 いたちごっこになるのは嫌なので、戦わなければならないということを俺は受け入れ、質問をした。


「それはじゃな、EDMを使って倒すのじゃ!」


 決め台詞かの様にそう吐いた旧王を目の前にし、俺は唖然としていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る