第2話 大根王になってしまった。

 俺は、王と名乗る大根に連れられ、人間の死角となっている草むらへ着いた。


「大根に転生したって、どういうことなんだよ」


 俺は、大根に転生してしまったということに驚きを隠せず、困惑していた。


「そんなことわしに言われても……神様に聞かんと、わからぬ」


「え、神様と話せるのか?」


 神様に話をして、なぜ俺が大根に転生したのかを問いただしたい。そして、願わくば“この転生、チェンジで!” と伝えたい。


「そんなわけあるかい! 神様など、見たこともないわい。わしには、お主が大根に転生した理由などわからぬということじゃ」


「なんだ、この役立たずじじい」


「うぉい! だから、心の声が漏れておるぞ! お主、わざとやっておらぬか?」


 わざとだなんて、心外だな。ただ、俺はちょっと人よりもおっちょこちょいなだけだ。お茶目さんなだけだ。


「まあ、じゃが、一つだけわかることはあるぞ」


 さっきまで声を荒げていたじじi……王と名乗る大根が、落ち着いたトーンで喋り始めた。


「人間が大根に転生した場合、足が生えてくるということじゃ」


 なんだって……!? え、よくSNSで足の生えているような大根の画像がアップされていたが、あれは人間の生まれ変わりだったのか……。俺がハマっていたあの、EDMでステップを踏む大根も……?


「ということは、アンタも人間だったということか?」


 そう聞くと、王と名乗る大根が、ふんぞり返った気がした。


「そうじゃぞ。お主はわしを無下に扱ってくるが、わしが人間だったころは、ブイブイいわせていたんじゃぞ」


「へー」


 興味がなさすぎて、大根役者ばりの返事をしてしまう。


「興味を持て! 興味を! お主が聞いてきたのであろう。じゃから、わしがこたえておるのに」


 なんかプンスカしているが、興味がないものは興味がないので、俺はさっきから気になっていたことについて質問をしてみた。


「というかアンタ、ここの畑を護っている王だとかなんだとか言っていた気がするが、一体なんなんだ?」


 俺が質問をすると、王と名乗る大根は、きょとんとした声でこたえた。


「ん? そのままの意味じゃが? わしはこの畑を護っている王じゃ」


「武勇伝の続きか? それは興味がないからもういいって」


 俺が呆れながらそう返すと、またもや王と名乗る大根がプンスカし始めた。


「わしをイタいもの扱いするでない! わしはれっきとした、この畑を護る王じゃ! じゃが、わしが王を名乗るのも今日までじゃ……」


 キリッとした空気が流れ始めると、王は真面目なトーンになる。


「わしは隠居するので、お主に王位継承する」


 大根に転生したということだけでもキャパオーバーな俺に、この王は強烈な一言を放ってきやがった。


「はぁあ!?」

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