57.別れの時!?

「それじゃあ、バイバイ! 優太、凛津!」


「2人とも元気でいてくださいね!」


船の上にいる俺たちに向かって、テルと有里ねぇの2人がそう言って手を振っている。


「あぁ! テルも有里ねぇも元気で!」


「テル、有里ねぇ……またね」


「あれっ? もしかして……凛津、泣いてるの?」


「なっ! なっ、泣いてないもんっ!」


凛津は慌てて有里ねぇにそう返した。


「ふふふっ! まぁ、泣いてないっていうんだったらそういうことにしてあげるよ?」


「有里ねぇ、あまり凛津をからかうなよ! これでも昨日からずっと泣いてたんだから……って、むぐっ!」


「ゆっ、優太っ! 余計なこと言わないのっ!」


「はははっ! 全く、凛津ちゃんと優太君の上下関係はいつまで経っても変わらなそうですね」


テルがそう言って笑っていると


ポー


という音が鳴った。


「あっ、そろそろ船の出発の時間みたいですね……。って、有里香さん?」


「ゆっ、優太、凛津っ!」


「はぁ……。凛津さんをからかうくらいだったら、自分も泣いてるっていえばよかったんじゃないですか?」


「そっ、それはダメっ! だって、私はお姉ちゃ……」


そこでなぜか有里ねぇは言葉を止めてから


「……そうだね。私は、もう……」


そう言った後


「凛津! 優太! 私、泣いてないからっ! 2人が幸せになるのを心なら願ってるから! これは私の気持ち!」


俺と凛津は顔を見合わせて有里ねぇの方を見て頷いた。


しかし、有里ねぇの言葉はそこで終わらず、


それから、と小声で言った後


「私っ! 2人の事が大嫌いっ! 私じゃなくて、凛津を選んだ優太のことも大嫌いだし、優太と結ばれた凛津のことも大嫌いっ! だからっ! そんな2人を見返すためにもっ! 絶対に幸せになってやるんだからっ! これが私の本心だよっ!」


有里ねぇは今まで、言っていたお姉ちゃんだからという言葉を使わずに俺たちに向かってそう言った。


「有里ねぇ……」


俺がそう声を漏らしていると、


「有里ねぇっ!」


今度は、凛津がそう大声を上げた。


それから


「有里ねぇはっ! 私達のこと大嫌いって言ったけど! その……私は、私達は……有里ねぇのこと……大好きだからっ!」


凛津は有里ねぇのいる方へと顔を向けてそう言った。


「凛津……」


どうやら、変わったのは有里ねぇだけじゃなかったってことだろう。


俺がそんな2人を見ていると、いよいよ船が動き始めた。


「凛津〜〜! 元気でねっ! ……っ!」


「っ……有里ねぇも!」


「あと、凛津っ! さっき凛津たちの事嫌いって言ったけど! 本当は大好きだから〜〜〜っ!」


「わっ、わかってるって!!」


「有里香さん……良かったですね。本心を伝えられて……」


「うん……」


俺と凛津は、テルと有里ねぇとのそんなやりとりを見ながら、段々と離れていく島を眺めていた。

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