56.同棲!?

「えぇっ!? 優太、明日帰っちゃうの!?」


有里ねぇは目を大きくして俺にそう言った。


「うん……」


「なんで、そんな事黙ってたの!」


凛津は少し怒ったようにそう言った。


「実はさ、俺もこの事を知ったのは昨日なんだ。だから今日中に言っとかないとなって思ってたんだけどさ……」


俺がそう言って俯くと、


「デートを楽しみにしていた私達の前では少し言いづらかったってことか〜」


さっきまで机の上に身を乗り出していた有里ねぇは再び椅子の上に座ってそう言った。


こういう時の有里ねぇは本当に察しが良いと思う。


「……まぁ、そういうこと」


「それじゃあ、優太君とは、またお別れって事ですか……」


今度はテルが悲しそうにそう言った。


「まぁ……。でもさ、俺これからは定期的にこの島に 来ると思うし、別に最後ってわけじゃないぞ?」


「じゃあ、来年も来るんですか!」


「うん……。来ようと思ってるよ」


「そうか〜! じぁあ、僕も優太君がいる時には絶対に会いに来ますね!」


「いや……別に、テルに会いに来る訳じゃないんだけどさ……」


俺はそう言ってから凛津の方に目を向けた。


すると、


「ゆっ、優太!」


その凛津がそう声を上げて立ち上がった。


「どっ、どうした?」


「その……私」


「凛津は、優太と年に一回とかそんな感覚じゃなくて、もっと会いたいしイチャイチャしたいんだって!」


「ちっ、ちょっと! 有里ねぇ!」


「うん? 私、何か間違った事言った?」


「そっ、それは……間違い……じゃないけど」


凛津はそう言って俯いた。


元凶の有里ねぇは俺の方をみてニコニコとしている。


「……凛津、その俺も……本当はもっと凛津と一緒にいたい。だって、俺たち付き合ってるんだしさ……だからさ」


からかうような有里ねぇの視線を横目に感じながら


俺は凛津の方に目を向けて


「いっ、一緒にくっ、暮らさないか?」


そう言った。


「え……? ええっ!?」


「えっ!? えぇーっ!」


当然、そんな俺の言葉を受けて、凛津は盛大にあたふたしていた。


ついでに、さっきまでニヤニヤして俺を見ていた有里ねぇも度肝を抜かれたような表情で俺を見た。



「そっ、その一緒に暮らすって……」


「こっ、言葉通りなんだけどさ……その、凛津が高校に通う時になったらこっちの高校に来ないかって……」


「でっ、でも……お母さんたちは……」


「それなんだけどさ……。実は、凛津のお母さんからそう提案されたんだけど……」


「…………え? お母さんが提案したの?」


凛津は目をぱちくりとさせた。


「うん……」


「優太に?」


「うん……」


「一緒に暮らせば、って!?」


「まっ、まぁ……その、一緒に暮らすって言っても……寮だけどな……」


「んっ? 寮?」


「そう。寮、うちの学校全寮制なんだけどさ……って凛津?」


「ゆっ、優太っ! 一緒に暮らすってそういう事!? 変な誤解を生むような事言わないでよっ!」


「……あ。確かに……。その、ごめん」


俺はそこで自分の言っていた言葉の意味をようやく理解した。


「もっ、もうっ! 優太のそういうところは嫌い!」


「そう? 私、そういう所も好きだけどな〜? 良かったら、優太は私がもらってあげようか?」


「有里ねぇは何をさらっとすごい事言ってんだよっ!」


「優太君……さすがに今ので、一緒の寮で暮らそうっていう解釈は無理があると思いますけど……」


「確かにテルのいう通りだな。凛津、変な誤解を招いてごめん……」


すると、凛津は顔を上げて


「今のは少し腹たった……けど」


それから少しして


「優太のそばにいられるなら……私、優太について行く」


そう言って俺に笑いかけた。


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