51.早すぎる!?
「そっ、そう……か。なっ、なんか……照れるな」
「そっ、そこっ! ニヤニヤしないっ!」
「しっ、してない!」
そんな小っ恥ずかしいようなやり取りをしばらくしていた。
「してるっ! めちゃくちゃニヤニヤしてるっ! その顔やめないともう別れるから!」
「えぇーっ!? 早すぎない!?」
「優太が悪いんだからねっ!」
「……ふーっ。ふーっ……」
俺は何とかしてこの危機を解決しようと試みた……が
「すまん……なんか、嬉しすぎてどうにもならん」
「そっ、そんなに!? それじゃあ……」
「まっ、待てっ! 考え直してくれぇーっ!」
俺は両手を合わせて凛津に懇願する。
すると、
「じっ、冗談に決まってるでしょ。そんな簡単に別れるわけないんだから!」
凛津はそんな俺を見て大声でそう言った。
「そっ、そうか……良かった」
俺は安堵感からペタンと地面に倒れ込む。
すると、凛津が俺の前でしゃがみ込み
「でも……」
そう言って俺の顔を見つめた。
「でも?」
「逆に、優太が私と別れたいって言っても……絶対別れてあげないんだから……ね」
顔を真っ赤にしてそう言った。
「……凛津」
「なっ、なに!?」
「……好きだ」
「なっ!? だっ、だから不意打ちは!」
「今の顔、今までで2番目に可愛い……」
「だっ、だからこれ以上は! って………1番目はいつなのよっ!」
「それはだな……」
凛津は両腕をワタワタさせながらコロコロと表情を変える。
俺、こんな可愛い女の子の彼氏になったんだよな……。
「あのさ、凛津……」
「こっ、今度はなにっ!?」
「俺、絶対に凛津を幸せにするから……」
「えっ……それって? けっ、けっ、結婚!? プッ、プロポーズ!?」
「んっ……まっ、まぁ? そんなところ? なのか」
「はっ、早すぎ! まだ付き合って10分も経ってないのに!」
「……確かに。なんか……勢いで」
「そういうのは勢いじゃなくてっ! キチンとした時にするものなのっ!」
「……そうだな。ごめんな……変なこと言って」
「わーっ、もっ、もうっ! べっ、別にダメって言った訳ないじゃん……」
「え? てことは……」
「いっ……いい……よ」
凛津は両手で顔を覆いながらそう言った。
「……凛津ってさ」
「うっ……うん」
「その……押しに弱い所あるよな」
俺がそういうと同時に凛津はガバッと顔をあげた。
「どっ、どういう意味よ!」
「……すまん。別に悪意があったわけじゃ……」
「くっ……! わっ、私チョロい女なんかじゃ……」
「いや、別にそこまで言ってる訳じゃ……」
「ゆっ、優太っ!」
「はっ、はい?!」
「私、決めた……優太とは付き合う」
「あっ、あぁ……それはさっき……」
「でもっ! 結婚はまだ! 私、そんなに軽い女じゃないし!」
「……だからそんなこと思ってないって!」
「ジーっ」
「本当だ!」
「……私、悠太に変な誤解されたくないもん……」
「そんな事言わなくても、凛津がそういう女の子じゃないって事は分かってるさ。だから心配するな!」
「……くぅっ!」
「どっ、どうした? 凛津、まだ何かあるのか?」
「なんか、今日は優太の方が上手だった……だから解せない」
「おいっ! どういうことだよっ!?」
かくして、俺は凛津と付き合うことになった。
それから2人で弁当を食べて……時間をみると
「もうそろそろ、有里ねぇとの約束の時間だ」
「くぅっ! ……このまま、優太とずっと一緒に居たいけど、約束は約束……」
「そうだな……それじゃあ行ってくる」
「まっ、待って!」
そう言って凛津が立ち上がったので俺もそちらを向くと
「あぁ、って……んっ!?」
頬にキスをされた。
「おっ、おい!? なっ、なん……」
「……わっ、私まだ一回もキスしてなかったし! ゆっ、有里ねぇだって私の体でキスしてたし! とっ、とにかくっ! そっ、それは今は置いといて!」
「置いとけないだろっ!」
「とにかくっ! 優太はもう私の彼氏だから……忘れないで」
「……あぁ」
「でも……有里ねぇも……優太の事、私と同じくらい好きだから……ちゃんと話してきて欲しい」
凛津はさっきまでの雰囲気とは一転、真剣な眼差しで俺にそう言った。
「うん……」
「じゃあ……有里ねぇのことよろしく」
凛津は再び笑顔に戻って、俺を後押しした。
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