50.告白!?
「……なんで有里ねぇに?」
いくらアドバイスを貰うとはいえ、有里ねぇはやめといた方が良い気がするんだよな。
するとそんな俺の考えを読んだのか
「だっ、だって! 有里ねぇがっ……」
凛津がそう言いながら何やら反論しようとしていた。
「有里ねぇどうしたんだ?」
「こっ、この方法なら今回のデートだけで、……その……その、……そういうところまで行けるって……」
「えっ? そういうところまでって?」
「だっ、だからっ! それはっ……その……そういうこと」
凛津は『そういうこと』としか言わなかった……が、顔を真っ赤にしている凛津を見て、流石に勘の悪い俺でも察してしまった。
「いっ、行くわけないだろっ! 俺をなんだと思ってんだよ! っていうか……今、そんなに無理する必要ないだろ?」
だって、俺たちはもう両思いだって分かってるわけで……。
「……でっ、でも!」
凛津はそう言って、俺の顔をじっと見つめた。
「……」
「私っ……このまま何もしないままだったら、今までと何も変わらないと思うの……」
「……」
「優太と両思いだって分かった時はすごい嬉しくて……これから一体どういう風に接すれば良いんだろうとか色々考えた。でもさ……私、分からないよ。今まで誰とも付き合った事もないし……。だから、このままだと……今までと何にも変わらないような気がして……」
そう言って凛津は俺の足元へと視線を移した。
「……そう……か」
凛津がそんな事を考えて、今日のデートに来てくれてたなんて、俺は微塵も考えていなかった。
考えてみれば、俺から凛津にアプローチしたのは、告白した時位……いや、あの時もろくなアプローチになっていなかった……。
「……ごめんな、凛津。俺……知らなかった。凛津が、そんなに不安になってたなんて……」
「優太が謝ることじゃないよ……別に、優太が悪い訳じゃないんだから」
「……そうか。でも……」
あの夜、凛津は俺のことを好きだと言ってくれた。
『今でも……優兄ちゃんの事……好きだから』
『優兄ちゃん! なんで他の女にデレデレしてんの! 私は今有里ねぇなんだから……その、キス……するなら私の体が戻ってから……』
思えば俺は、ずっと受け身だったのかもしれない。
この前、俺たちが、一緒に学校に行った時だって、凛津はラブレターのようなものを俺に見せてくれていた時だって……
『そっ、それじゃあ! 今ので、優太の私への思いよりも私の優太への思いの方が強いって事も分かってたんだよね?』
あの時、凛津は俺に自分の気持ちを改めて伝えようとしてくれていたってことじゃないのか。
だとしたら俺は……
「凛津……俺は、お前が好きだ。この気持ちは変わらない」
今、ここで伝えるしかない。
凛津の目を真っ直ぐに捉える。
「……なっ、なにっ!? 急に!?」
「いやっ……なんかその、もう一回言っとかなきゃって……」
「……そっ、そう……なんだ……」
凛津はさっきから、俺の目を見てチラッと見ては、視線を逸らす。
「……うん。そっ、それで……さ」
俺はそのまま
「つっ、つっ、付き合って下さいっ!」
一息にそう言い切った。
人生で初めての告白。
体中から汗が噴き出てきそうなくらい緊張している。
一方で、凛津はというと
「……え?」
ポカンとして俺の顔を見ていた。
「だっ、ダメ……か?」
「え……えぇぇぇっ!? 今!?」
「……そのっ、ダメ……か?」
「そっ、そっ、そんなのっ! いっ、良いに決まってるじゃんっ! はぁ、はぁっ、もうっ! 不意打ちやめてよ! 心臓に悪いから!」
「そっ、そう……か! その……ごめん」
凛津は両腕を振り回して、ポコポコと俺を叩いてくる。
「でっ、でも……そのっ……なんで今なの?」
「……うん、なんかさ、今言わなきゃって気がしたんだ……」
俺がそんな返事をすると
「もうっ、答えになってない!」
凛津はまた俺をポコポコと叩いた。
「良かった……失敗したらどうしようかと思って……」
「まっ、まぁ?……優太が告白するの、もう少し遅かったら私振ってたかもだけど?」
「えっ? マジ?」
「うん。マジ」
俺たちは顔を見合わせる。
「……今、告白してなかったら俺はどうなって……」
「まっ、まぁ? その時はその時だけど……多分、優太のことを振ってから、私の方が後悔して……」
「えっ? 自分で振ったのに?」
「うっ、うるさいっ! 乙女心は複雑なのっ!」
「……そういうものか」
俺は判然としないまま凛津の言葉の続きを聞いた。
「そっ、それで! 結局、私から優太に告白するの……」
「……え」
「だっ、だから!……結局付き合うの。だっ、だって……私」
「……」
「優太のことが世界で1番……好き……だからっ」
そう言った凛津の顔は今にも爆発しそうなくらい真っ赤になっていて……そして、今まで見た表情のなかで1番可愛かった。
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