42.卒業アルバム!?

凛津は、『卒業文集』と書かれたラベルが貼られた棚の前で立ち止まった。


それから、その内の一つを抜き取り、俺に手渡した。


「275ページ見て……」


「あぁ、分かった」


俺は正直、凛津が何を見せたいのか全く分からなかったけれど言われるがままページをめくった。


と、275ページに『美鈴凛津』という名前を右下に発見した。


タイトルは……『私の大好きなお兄ちゃん』


俺は凛津の顔をちらりと覗き見た。


「……ぅっ」


顔を真っ赤にして俯いている。


今にも爆発しそうだ。


「あの……これ今読まないとダメなのか? 恥ずかしいんだったら別に凛津がいない時でも……」


「ダメ! いっ、今……読んで欲しいの……」


凛津はそう言って、顔を真っ赤にしながらもこちらを向いた。


「……凛津がそれでいいなら」


俺はそう言ってその文集を読み始めた。


―それから数十分後


「凛津……読み終わった」


「そっ、そう……」


「あのさ、これって……」


俺はそこでなんと言えばいいのか躊躇う。


だって、さっき見せられた文集の内容は……簡単に言えばラブレターのようなものだったから。


「ラブレターだよな?」


なんて俺は言えるわけも無く、そのまま口籠るしか無くなった。


さっきまで近くにいた有里ねぇとテルは、俺がそれを読んでいる間に、どこかに行ってしまったようだった。


2人の間にしばしの沈黙が訪れた。


「……」


「……」


「……どっ、どうだった?」


先に口を開いたのは凛津だった。


俺を上目遣いで見ながらそう聞いてくる。


「えっ……どうって……」


ラブレターを見せられて、『どうだった?』と聞かれた場合なんて答えれば正解なんだよ!


俺はそういう意味も込めて、凛津のほうを見る。


けれど……


凛津にその意が伝わっているはずもなく……


「……」


静かに俺の答えを待っていた。


流石にここで黙ったままというのは、流石にナンセンスだという事位俺にも分かる。


「……嬉しい」


だから、ただそれだけ言った。


すると


「……良かった!」


凛津はパァッと顔を輝かせてから、またいつもの調子に戻った。


どうやらこの答えは正解だったらしい。


俺がほっと一息ついていると……


「そっ、それじゃあ! 今ので、優太の私への思いよりも私の優太への思いの方が強いって事も分かってたんだよね?」


「え? 今のって、そう言う事だったの!?」


「え? 伝わってなかったの?」


凛津はキョトンと首を傾げる。


(伝わる訳ないだろ!)


俺はそう言うのを必死に我慢して


「……つっ、伝わってた……ぞ?」


必死にその言葉を搾り出した。


が、俺の咄嗟の切り返しも虚しく……


「……怪しい。はぁ……優太はもっと女の子の気持ちに寄り添わないとダメ!」


などと、俺は何故か凛津にお叱りを受けてしまったのたった。




「これで凛津のやりたかったことは終わったのか?」


「うん」


図書館を出た後、俺と凛津は、いつの間にかいなくなっていた有里ねぇとテルとも合流した。


「じゃあこれからどうするつもりなん……」


と俺が言いかけたところで


「次は私の番だよ?」


今度は有里ねぇが手を上げながらそう言った。


「有里ねぇもあるの?」


「ふふん! まぁ、楽しみにしててよ!」


「……なんだだろう。 有里ねぇが自信満々の時って嫌な予感しかしないんだけど……」


「さぁっ! 早く行くよ!」


「……」


「早くっ!」


若干の不安を覚えながらも、俺達は有里ねぇの後について行った。








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