26.花火!?


「おっと……そろそろじゃない? 花火」


葉山さんがそう言うので近くにあった時計をみると、時刻は18時40分。


有里ねぇの学校での話を色々聞いていたら、あっという間にこんな時間になってしまった。


「確かに……そろそろ席取っといた方が良さそうですね」


俺はそう言いながら立ち上がる。


すると、他のメンバーも


「確かにそろそろ行かないとね」


「……やっと花火。楽しみ」


「たーまーやー!」


「いや、陽香……まだ打ち上がってもないぞ?」


ちなみに、田﨑さんの弟の大智君は田﨑さんの肩の上ですやすやと眠っている。


大智君……もっと大人になってから今度は一緒にお祭り行こうな。


「にしても、凛津はまだ帰ってこないのか?」


藤崎さんが先程買ったペットボトルのお茶をゴクっと飲み干してからそう言った。


「うーん。道に迷う……ってこともないだろうし……花火までには帰ってくるんじゃないでしょうか?」


なんせ、外見こそ凛津だが中身は有里ねぇだ。


恐らく、どこかで面白いものでも見つけてそっちに気を取られてるに違いない。


「まぁ、それもそうか……凛津には一応LINEしとく!」


そう言いながら藤崎さんは右のポケットから携帯を取り出す。


藤崎さんは初対面の時、面倒見の良さそうな人だと思ったけど、やっぱりそのイメージは間違っていなかったらしい。


将来いいお母さんになるだろうな……そんなことを思った。


藤崎さんが凛津にメッセージを送った後、俺達はそのまま花火大会の会場へと向かった。



「わー! 物凄い人だ!」


「こんなに人が多いとはな!」


「……すごい人」


「まっ、まさか! これみんなハーレ……いたっ!」


俺は田﨑さんが何か言い終える前に頭を引っ叩いた。


年上だからとか……もうそんなの関係ない。


「なーにすんのさ! 優太君!」


「……JKなんですよね?」


「そうだよ!」


「……」


「なんで黙るのさ!」


すると、有里が俺の袖をクイクイと引っ張って


「優太! デレデレしないで!」


「してねぇよ! 今のどこを見たらそう言えるんだ!」


そりゃあ田﨑さんはめちゃくちゃ可愛い……けど!


「やっぱりハーレムキングは違うね〜」


それを帳消しにする程、バカだと思った。


「……本当に?」


「あぁ……本当」


「なら良かった……私も少し田﨑さんを見習った方がいいのかと思った……」


「絶対それだけはやめろ!」


凛津まであんな風になってしまったら俺は……。


考えただけで目眩がしてきた。


「だから、凛津はそのままでいいんだぞ!」


「うっ……うん」


凛津はそう言いながら顔を俯けて少し笑った。


……可愛い。


俺が不意打ちの笑顔にそう思ってしまった事は凛津には内緒にしておこうと思った。



時計を見ると時刻は18時55分。


俺たちはようやく、花火を見ることの出来る席に腰掛けた。


俺達が会場に来た時、残りの席もほとんど埋まっていたので少し不安だったが……。


葉山さんの言う通りにしておいて良かったな……そう思いながらひとまずホッとする。


凛津によると、ここの花火大会は19時から19時45分までの45分間あるらしい。


そして、1番盛り上がるのは、最後に打ち上がる花火らしい。


具体的にどう盛り上がるのかは……何故か、凛津は教えてくれなかったのだが……まぁ見ていれば分かるだろう。


俺がそんな事を考えながら、ふと時計を見ると時刻は18時59分。


「そろそろ始まるな!」


「うん! 楽しみ!」


そう言いながら、横にいた凛津が俺の手をギュッと握るのと一発目の花火が打ち上がったのはほぼ同時の事だった。

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