13.何で2人が俺の部屋に!?

「ねぇ、優太! 何で離れるの?」


「そっ、そうよっ! 大人しくしてなさいよ!!」


有里姉ちゃんと凛津の体が、かけ布団の中で俺の体に密着してくる。


「っ! だから、抱きつくなって言っただろ!」


ヤバい……。この状況はヤバい……。


さっきから凛津と有里姉ちゃんの胸の感触がそのままダイレクトに伝わって……。


俺のそんな気持ちは当然2人に届くはずもなく……。


「くっ、この体はまだ成長途中で!」


「ふふん。すごいわ! この胸があればどんな男もイチコロよ!」


2人はずっと何か言い合っているようだった。


珍しく凛津が押され気味っぽい。


「くっ、だったら直接!!」


なんて言いながら凛津が顔を真っ赤にしながらパジャマを脱ぎかけて…………


「ちょっ!! やめろっ!!」


俺は咄嗟に叫ぶ。 


「なっ、なに?! 急に大きい声出してどうしたの?」


「『どうしたの?』じゃねえよ!! それはこっちのセリフだよ!! おまっ、お前急に男の部屋で服を脱ぎ出すとか痴女……。はっ! お前、さては痴女だったんだな!!」


「ちっ、違ぁ〜〜うっ!! わたしっ、わたしまだ誰とも付き合った事無いし! それに痴女って!……。私、優くんのイメージでは色んな人とセッ……」


「言うなっ!! それ以上はもう何も言うなっ!!」


俺は抱きついてくる2人の手を強引に引き離しながら叫んだ。


「はぁ……一体なんでこんなことに……」


俺はそう言いながら少し前の事を思い出していく。


そう。それはほんの10分前、俺が夕食を食べ終わって自分の部屋でゴロゴロしていた時だった。


ガチャ


突然俺の部屋のドアが開いた。


おじいちゃんやおばあちゃんが入ってくる時は必ずノックしてくるので、あの2人では無いはずだ。


じゃあ誰なんだ?


扉が開くと……


「じゃ〜〜ん!! 来ちゃった! 一緒に寝よっ! お兄ちゃん!」


なんて言いながら凛津が入ってきた。


「おっ、おいっ!! 冗談だろ!? 早く出て行って自分の部屋で寝ろっ!!」


俺が大声でそう言うのと同時に凛津は俺のベッドにダイブしてきた。


「えへへへっ。お兄ちゃんの匂いだ〜〜っ!! くんかくんか」


「……」 


俺はまだ整理できていない頭を必死に動かそうと凛津と距離を取る……が、しかしその直後……


「ゆっ、じゃない凛津!? どこ行ったの!!」


と言いながら今度は有里姉ちゃんが俺の部屋に入ってきた。


そして、俺のベッドの上で寝転んでいる凛津を見つけると


「なっ、なにしての!?」 


と言った後、俺の顔をちらっと見てから


「凛津が一緒に寝るのOKしたの?」


なんてとんでもない事を言い始めた。


「いやいや!! OKも何も…………、突然部屋に入ってきたかと思えばそのままベッドにダイブしてきて……」


俺はベッドの上でずっと匂いを嗅いでいた凛津を指差して、

「この有様だよ」


と今の状況を説明した。 


「はぁ〜〜っ! 妹サイコ〜!」


凛津はその間、ずっとそんな事を言ってベッドに顔を擦り付けていた。


「てことで、私今日はお兄ちゃんと一緒に寝るからっ!」


それからすぐに凛津はそんな事を言い始めた。


「はぁ?! ダメに決まってんだろ!!」


「えぇーっ! 私妹なのに〜?」


「いや、そもそもお前妹じゃ無いしっ! 『妹』みたいな幼馴染だから!!」


「一緒一緒〜! さぁ、早く寝ようよお兄ちゃん!!」


ダメだ。何を言っても通じない。


まるで有里姉ちゃんみたいだ。


そんな様子を有里姉ちゃんは棒立ちになってじっと見ていたかと思うと、


「妹だから……。はっ! そうよ! じゃあ今の私はお姉さんじゃない! それなら……」


なんて言いながら俺のベッドのそばまで来て


「妹が嫌なら……お姉ちゃんと一緒に……寝る?」


「寝ないよっ!!」


俺は全力で突っ込んだ。


俺は無理やりベッドから凛津を引き剥がして、椅子に座らせる。


有里姉ちゃんもその隣の椅子に座らせた。


「えっと……なんでそもそも俺の部屋で寝たいの?」


俺は穏やかに凛津に向かって尋ねる。


「お兄ちゃんのこと大好きだもんっ!」


「……」


ダメだ。今日の凛津はどうかしてる。


俺は聞く相手を変える。


「じゃあ、有里姉ちゃん。なんで凛津はここで寝たがってるのかわかる?」


「……それは」


「それは?」 


今日の有里姉ちゃんはいつもよりもしっかりしているし、きっとまともな事を言ってくれるに違いない。


「妹……だから……?」


……なんて事だ。2人ともそろっておかしくなってる。


俺は理由を探るのは諦めて2人を部屋から追い出そうと席を立った。


その時だった。


さっきまで座っていた凛津が突然立ち上がって俺をベッドの上に押し倒した。


「えぅ?」


俺は驚きのあまり、自分でも聞いたことのないような叫びをあげる。


凛津の胸が俺の体に密着してきて……ヤバい……。

たすけて……。


と、そこに俺の眼は有里姉ちゃんの姿を捉える。


「ゆっ! 有里姉ちゃん!! たふけっ……えっ……」


俺は有里姉ちゃんに助けを求めようとしたその瞬間、突如目の前に現れた何かに顔を押し潰される。


……柔らかい。………何これ?


俺は状況を整理するまでに少し時間がかかった。


「わっ、私もっお姉ちゃんだしっ? 妹が寝るなら見守ってあげないとっ!!」


俺はその声を聞いてようやく今の状況を理解する。


「えっ?! ちょっと! 有里姉ちゃんまで!!」


「ふーん。なかなかやるわね〜。りつ、じゃなくて有里香も」


俺の腕に抱きついていた凛津も負けじと抱きついてくる。


「もうっ!! 分かった! 分かったから! 一旦2人とも離れてっ!」


俺の大声が部屋の中で、こだました。


それから数分後……。


「寝てる間に抱きついたりしてこないでよ? 2人とも?」


「……」



「……」 



「分かった?」


「うっ、うん」


「分かったよっ」


眠っている間に抱きついたりしてこないという条件付きで一緒に寝るのを渋々、本当に渋々許可した……。


断じて、美少女2人と一緒に寝られる!! なんて思っちゃぁいない。……多分。


それからさらに数分経って今に至る。


凛津が痴女なのか、と言う話もひと段落ついて(凛津はずっとワーワー言っていたけど)ようやく静かになったところだ。


「凛津、有里姉ちゃん? まだ起きてる?」


「……うん」


「……起きてるよ〜」


2人はまだ起きているようだったので、俺は今日ずっと2人に聞きたかった事を聞いてみる。


「あのさ、今からすごい変な事言うかもしれないんだけど……そうじゃないと説明がつかないというか……」


「なになに〜〜? 早く教えてよ?」


凛津がそんな風に急かしてくる。


「うん。分かった。じゃあ言うね。もしかして、もしかしてだけど凛津と有里姉ちゃん……2人の体が入れ替わってる……とかそんなのは無いよね?」


自分でも意味不明な事を言っているとは思うが、そうでないと説明がつかない位、2人の態度が急変しているのだ。



「……」


「……」


しばらく沈黙が続いた後、その沈黙を破ったのは有里姉ちゃんの声だった。


「そっ、そんな訳ないでしょ? 映画じゃあるまいし!」


「そっ、そうだよな……」


そうか……映画じゃあるまいしそんな事ないよな……。

なんて俺が思っていた所に、さっきまで黙っていた凛津が勢いよく


「そうだよ!!」


なんて事を言い始めた。


「……どういう事だ?」


凛津の方を見てみると、えっ?みたいな顔をしている。


「そうっ! 2人は入れ替わった……なんて本当に思ったの?」


「はぁ??」


ますます意味がわからない。

そのまま凛津は続ける。


「じゃあ、本当に入れ替わったかどうか確かめれば良いじゃん!」


「確かめるって、どうやって?」


俺が聞き返してから、数十秒して凛津は息を大きく息を吸っていった。


「私達と、デートしてっ!!!」

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