14.なんで俺の水着だけないんだよ!?
「優太! 早く早くっ!!」
「早く来なさいよ〜っ!」
橋の向こうから凛津と有里姉ちゃんが呼びかけてくる。
「ちょ!! ちょっと待てっ!!」
俺は息を切らしながらようやく橋の上へと辿り着く。
「はぁ、はぁ、はぁ、2人とも早すぎだろ」
「それはデートですからっ!!」
「まっ、まぁ……? 一応……デートらしいし?」
2人とも張り切りすぎだろ!
どんだけデートってシチュエーションに憧れてるんだよ……。
2人とも誰とも付き合った事ないって言ってたし……まぁそういうものか……。
バジャーン!
そんな事を考えていると突然、すぐ近くで水飛沫が上がった。
「うぉっ! 冷たっ!!」
「早く早くっ! 優太と、り……有里香も!!」
水面から凛津が顔を出して呼びかけてくる。
どうやら橋の上から川の方へ飛び降りたようだった。
「じゃあ、私も!」
有里姉ちゃんもそのまま川の方へ飛び降りていった。
「はぁ〜……2人とも元気だな……。よしっ! 俺も行くか」
そうして俺も2人に続いてそのまま川へと飛び込んだ。
そもそもなんで俺が川まで来ているのかというと……話は昨日に巻き戻り…………
「デートしてっ!」
凛津が俺の顔を見て言った。
「…………デート? なんで?」
俺は訳がわからずにそう聞き返した。
「それは…………そう! デートしたらさっ、嫌でも私達の事ずっと見るでしょ? で……そしたら私達が本当に入れ替わってるかどうかも分かるし……」
「いや、別にデートじゃなくてもいいんじゃない?」
「……そっ、それは」
凛津は隣に居た有里姉ちゃんに助けを求めるように目配せする。
すると、突然話を振られた有里姉ちゃんは
「……えっ、私っ?! そっ、そうね。私たち誰とも付き合った事ないから……その練習も兼ねて……? みたいな?」
「なんで俺なんだよっ!!」
「そっ、そりゃあ他に頼める人居ないし?」
「はぁ〜〜。じゃあ最初からそう言えば良かったのに」
俺はあくまで、2人のデートの練習という体で今日のデートを引き受けたのだった。
そうして、朝早くから2人に叩き起こされて、どこに行くかさえ、知らされないままついて行った結果……今に至るというわけだ。
「きゃっ! 凛津! 冷たいって!」
「有里姉ちゃんこそ! そう言いながら水かけてこないでよっ!」
「やだね〜!」
2人はとても楽しそうだ。
楽しそうなのは結構なのだが……
「おいっ!!なんで俺にも水着がいるって言ってくれなかったんだよっ!!」
「えぇ〜。だって、男の子は濡れたら後で乾かせばいいでしょ?」
「最悪、全裸でも走って帰ればバレないんじゃない?」
「後で乾かせばいいって! そんなこと言ったら女子もそうだろっ! それに、有里姉ちゃんは俺に全裸で帰れって言うのかよ!?」
え?帰らないの?みたいな感じで首を傾げるのをやめろ!!
「はぁ……。まぁいいや。で、俺は彼氏役として何をすれば良いの?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました!! でも、その前に私たちに何かいう事あるんじゃないの?」
「ん……?」
「あるでしょ! ほらっ!!」
凛津はそう言いながら俺の目の前まで来て自分の水着姿を見せつけるように言った。
「……もしかして俺に水着の感想を言えと?」
こくんこくんと凛津が頷く。
その仕草があまりにも可愛いくて、俺は少し動揺してしまう。
「っ……と。かっ、可愛いと思う……ぞ?」
「やった〜!! 優兄ちゃんが可愛いって言ってくれた〜〜!!」
「ゆ、凛津にだけずるいっ!!」
「……その有里姉ちゃんにも感想……言えばいいの?」
「うん……」
有里姉ちゃんは少し顔を俯きがちにしながら言った。
「有里姉ちゃんも可愛いけど……そのなんていうか……」
俺は有里姉ちゃんの方を見る……けど正直、目のやり場に困る。
2人とも学校で使っているようなスクール水着なのだったが、凛津の場合は年相応で似合っていた。
が、有里姉ちゃんはというと……。
その……胸が……ぱっつんぱっつんになっていて……
「なんていうか?」
「その……」
言っていいのか?
まぁ有里姉ちゃんだし大丈夫だろう!
「その……エr ぐはぁっ!」
俺が口を動かした瞬間、有里姉ちゃんの強烈な蹴りが俺の頬に炸裂した。
うっ、いつもの有里姉ちゃんだったらそこは
『もう!優くんはエッチなんだから!』
てな感じで返してくると思ったんだけどな なんて思いながら俺はそのまま川の中へと倒れた。
その後、凛津が倒れた俺を助けてくれて(その間有里姉ちゃんはやりすぎたなみたいな感じでずっとあわあわしていた)
それから、今はみんなで昼食を食べるというところだ。
「じゃじゃ〜ん! 今日のお弁当はね、2人で一緒に作ったんだよ!!」
お弁当は一段のお重の中に入っていて、唐揚げ、ミートボール、卵焼きなどなど色々入っていた。
どれも美味しそうだ。
「……」
ワッハッハと笑っている凛津とは対照的に、有里姉ちゃんはあれからずっと申し訳なさそうにして、口数が少なくなってしまった。
「おぉっ!! 美味しそうだな!! 有里姉ちゃんも一緒に作ったのか?」
「えっ?うっ、うん」
ずっと有里姉ちゃんに暗い顔されるのは嫌だし、精一杯フォローしないとな。
そもそも原因は俺だし……。
「じゃあ、有里姉ちゃんはどれを作ったんだ?」
「…………トマト」
「えっ……」
トマト? 今トマトって言った?
一から栽培した……とか?
いや流石にそれはないだろう。
だってこれ、うちの畑のトマトだしな……。
「そっ、そうか。じゃあトマトからいただきます」
俺がトマトを口に入れると、ジュワッと口の中にトマトの風味が広がって…………
うん。安定のうまさなんだけど……。
チラッと有里姉ちゃんの方を見てみると、背筋をピンと伸ばして緊張した面持ちで俺の感想を待っているようだった。
「うまいよ!」
「…………良かった」
そりゃ、一切いじっていない、そのままのトマトだから美味しいよ!
なんて事は勿論思っちゃいなかった。
正確には、そう思えなかった……。
なぜって?
そりゃあ……、笑顔で喜んでる有里姉ちゃんが可愛いすぎて、そんな些細なことどうでも良くなったからだ。
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