3.最高の再会!?

翌日、俺は目覚まし時計の騒音によって目が覚めた。


ジリリリリっ


「んっ」


ガチャンッ


俺は少々強めに目覚まし時計を叩いて、ベッドから起き上がる。


カーテンを開けて、窓を開けると、ムワッとした暑さが体全体にのしかかってくる。


「だめだ……あっつい」


俺はそう言いながら窓を閉めて、そのまま部屋を後にする。


向かったのはリビング。


「おはよう」


俺がそう言うと、朝ごはんを用意して椅子に座りテレビを見ていたおばあちゃんがこちらを向いた。


「うん。おはよう」


「おじいちゃんは?」


「あー、あの人なら街の集まりで朝早くから出ていったんだよ」


「そうなんだ……」


俺はすぐに席に座り、おばあちゃんの作ってくれた朝ごはんを食べる。


今日もおばあちゃんの料理は美味しいな……なんて、のほほんと考えていると


ガチャ


ドアが開く音と同時に、俺が後ろを振り返るとそこには凛津がいた。


「おはよう!」


俺はさながら、小学校の先生と同じようなテンションでそう声をかけたのだが……


「……」


無視された。


「おばあちゃん、おはよう」


「凛津ちゃん、おはよう」


どうやらおばあちゃんには普通に挨拶するらしい。


なんでおばあちゃんには挨拶するんだよ!


くそっ!


納得出来ない!


なんでおばあちゃんだけ!


って……はっ!


俺は今おばあちゃんに嫉妬していたのか……


なんてアホなことを考えていたら、俺はあっという間に朝食を食べ終わっていた。


「ご馳走様。美味しかった」


椅子から立ち上がり、リビングを後にする。


ひとまず部屋に戻ってから服を着替えると、ふと昨日行けなかった山の方まで散歩しようと思い立った。


滝島にはいくつかの山があるが、俺が今から行く山はこの島では1番大きい山だ。


そうはいっても……元々、島自体がでかいわけでもないので、頑張れば小学生でも登れる程度の山だ。


「行ってきまーす」


そう言って、外に一歩足を踏み出すと、ムワッとする熱気と共に突き刺さるような日差しがジリジリと肌を焼く。


「俺はいつからフライパンの上に乗ってたんだろう……by月島優太」


「なに一人で呟いてんの?」


「うぉっ!? りっ、りつ!?」


凛津の前で、ポエムを披露することになるとは思いもしなかったので俺はタジタジになりながらも、なんとか平静を装う。


「そっ、それで? 今日も俺についてくるのか?」


「ちっ、違うっ! 今日は本当に用事あるし! って!昨日は優太について行ったんじゃないって言ってるじゃん!!」


「……」


なんか凛津は顔を真っ赤にして吠えている。


どうやら、また怒らせてしまったらしい。


ごめん……◯◯えもん、やっぱり俺には乙女の気持ちは分からないよ。


「じゃ、俺は行くわ」


「……そう」


俺は玄関の前で、凛津と別れて1人で山の方まで歩いて行く。


田んぼ、畑、田んぼ、畑、たまにお店


そんな光景が続く道を30分程度歩いたところで、ようやく山の入り口らしきものが見えてくる。


「あれだな……」


小規模な住宅街に面した密林。


そのすぐそばにそれはあった。

 

昔よく凛津や有里姉ちゃんと一緒に登った思い出深い山だ。


「はぁ……ここから20分か」


山頂までたどり着くには大体その位だろう。


久しぶりの山登り……俺は少しワクワクしながら山を登り始めた。




登り始めて10分……


「はぁーっ、はぁーっ」


想像以上にキツい。


ただだでさえ、キツイのにこの暑さは反則だろ!


「一旦休憩しよう」


俺は近くにあった大きめの石に腰をかけ、一息ついた。


セミの鳴き声と鳥のさえずりが一体となり、一つの音楽のようにも聞こえる。


俺はしばらくその音色を聴き続けた。


……それからどのくらい時間が経っただろうか。


俺がぼんやりとしながら、辺りを見ていると


「えっ?」


突然人影らしきものが見えた……気がした。


「だっ、だれかいるんですか?」


俺は、恐る恐る人影らしきものが見えた方へと近づいて声をかける。


「あっ、あの〜!」


これで誰もいなかったら俺、相当恥ずかしいな……なんて思いながらもそのまま進んでいくと


「うわっ!!」


「うわっ!」


草むらの中から突然、すごい美少女?いや美女?が飛び出してきた……かと思うと、そのままガクッと足を滑らせて倒れてしまった。


「えっ……えっと、大丈夫ですか?」


俺がその人の方に手を差し伸べて、起き上がらせようとした時。


その人は俺の顔を見てから


「ゆう……た!?」


目を大きく見開き、とても驚いた様子でそう言った。


「えっ?」


なんで俺のこと知ってるんだ?


こんな可愛い娘、俺の知り合いにいたっけな?


「わぁ〜〜っ! やっぱり優太だ! 私、有里香だよ!」


「……ゆ、有里姉ちゃん!?」


言われてみれば……確かに、喋り方とか雰囲気も有里姉ちゃんそのものだ。


「む……優太、どこ見てるの! 久しぶりに会ったのにそんな所ばかり見られたら、お姉さん恥ずかしいよ!」


「どこの話してるんだよ! 俺は有里ねぇの足しか見てないぞ!」


両手で恥じらうように胸を抑えるポーズを取る有里ねぇに俺は全力でツッコむ。


「……えっ、もしかして……足フェチ?」


「違ぇよ!」


ダメだ。


有里ねぇと会話してると漫才みたいになってしまう。


それから、俺はゆっくりと有里ねぇを起き上がらせた。


「ところで、優太はどうしてここに?」


「あぁ、何となく? そういう有里ねぇは?」


「私も何となく……かな」


「そうなんだ……」


「優太も山頂まで登るんだよね?」


「そのつもり……だけど」


「よし! じゃあ山頂までどっが先に登れるか勝負しようよ!」


そう言いながら有里ねぇは突然、走り出して……


「よーし。スタートっ!!」


「えっ? そんなっ、急に!」


俺は慌てて、少し先を走る有里姉ちゃんを追いかけるようにして山頂まで駆け登っていった。

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