読者諸兄姉の諸君は蒸留酒を嗜む際、どのような飲み方をされているだろうか。
呑みやすくするためのトワイスアップか、爽快感を求めてのハイボールか、はたまた香りを開かせるために水を数滴落とすのか。
どのような飲み方も個人の自由ではあるが、本作は是非ともストレートで楽しんで頂きたい……。
本作はクトゥルー神話の一遍、『宇宙からの色(異次元の色彩)』をモデルとしている。
『宇宙からの色(異次元の色彩)』由来の作品は数多い。
多くは、『外宇宙から来たナニカ』のために世界がえらいこっちゃになるのが話の筋だ。
しかし今作品は違い、『外宇宙から来たナニカ』が作中世界に到達するとジ・エンドである。
このようなストーリーラインは初めてであり、私としてはかなり新鮮だった。
又、全編のほとんどの部分でクトゥルー神話っぽくないのも良い。
詰まり、クトゥルー神話を知らない方も存分に楽しめるという事だ。
文章は難読漢字、表現が多くコッテリめだが、非常に繊細で優美な表現が秀逸である。
執筆活動をされている方には手本となること請け合いだ。
一話当たりの文字数も多く呑み(読み)応えたっぷりなので、夏の夜長にぴったりである。
本作品は流し読みなどせずに、是非ともストレートで頂いて欲しい。
美文と切ない物語に打ちのめされることだろう。
さあ、大作も読破した事だし執筆に取り掛かるとするか!(ここで窓を見る)。
「ああ、夏なのに雪が降ってらぁ。
この世界ももう終いだな」
(極彩色の光に呑まれる中グラスを傾ける……)