第15話

夕飯のカレーは辛口にしたので、ラッシーもつくっておく。

辛いものには乳製品。カレーも夏野菜ごろごろでいいにおいがしている。

もちろん、お店で食べるインドカレーとかナンとかも好きだけど、家で作るカレーっていうのは飽きないと思う。

チキンカレーもいいし、ビーフもポークもおいしい。ビーフは牛筋とかで作るとがっつりして食べごたえもある。

シーフードももちろんおいしいし、辛さによってまた違った味にもなる。

思いっきり汗かきたい!というときは刻んだ生姜と山椒を追加して食べたりもする。



「からー!」


『うまい!』



暑いけど、エアコンは27度設定のまま。

ひりひりした辛さが止められずスプーンが進む。

箸休めのように食べる福神漬けとらっきょがさっぱりしてカレーがまた進む。



「んふー、からい!」



ツインズは二杯目をがつがつ食べている。

さすがに2杯は食べられないので、半分食べたところで追加!



『あ、俺も温泉卵!!』



半熟な黄身を少しすくってカレーと一緒に口の中に。

まろやかーでもからーい!

がつがつとカレーを食べて、そのあとにラッシーを飲み干す。



『あーごちそうさまでした!』



あっつー!とそれぞれ扇子やうちわでぱたぱた扇ぐ。

お腹いっぱいでしばらくゆっくりとした時間が続く。

ふとなんか面白そうな情報ってあったのか聞いてみようと思い立った。



「掲示板になんかあったー?」


『んー、あんまり』


「あれ、そうなの?」



どうやら目立った情報はなかったようで、これからかなーとのこと。

イメージは情報が一気にどーんと集まって掲示板が祭り状態になるのかと思ったがそういうものでもないらしい。

地道に続けてみるしかないね、ということだった。

たぶんあのCMのような美麗なかっこいい感じになるにはかなり時間がかかるのかもしれない。



『俺らもう一回ログインするね』


「ん?そうなの?じゃーちょっとだけしよかなー」



ちょっと気になっていることもあるし、汗も引いてきたのでそれぞれ自室に引っ込む。

すぐにログインしようかと思ったが、その前にストレッチをする。

寝転がり続けるということは、運動不足まっしぐらではないかと。

なのに糖分が欲しくてホットケーキ桃のコンポートとバニラアイスを添えて、ってメニューにありそうなものをぺろっと食べてしまっている。



「アラサーだからこれはいかん」



ログインしたら、その分運動する時間を増やそう…と心に決めて、さらに着圧ソックスをしっかり履いて、ログインボタンを押した。




言われた通り、中央広場にログインされている。

人もそれなりにいて、みんなそれぞれ自由に楽しんでいるようだ。

ツインズはギルドに行ったらしい。フレンドチャットにそうメッセージがきていた。

便利だなーと確認してから、野菜を売っていたおかあさんのところに向かう。



「おかあさーん」


「あれ、どうしたんだい?」


「んー、ちょっと聞きたいことがあって」



そう、気になったのは、薬草の使い方。

ツインズも話していたが、回復職も必要というところ。

これも漠然としたゲームイメージだけれど、光魔法とか白魔法的なものかなぁとも思っているが、薬草があるならこれも充分使えるんだよね?と思ったのだ。



「なんだい?」


「薬草ってどう使うのか教えて欲しくて!」



きょとーんとした顔の後に、あっはっは!!と元気な笑い声が響きわたる。

あれー、なにか変なこと聞いたのかしら?



「ごめんね、おじょうちゃん笑ったりして」


「いえいえ、ものすごい知ってて当然のこと聞きましたか?」


「素直なのはいいことだよ。薬草に関しては、薬爺のところに行くのが一番さ。」


「薬爺?」


「あぁ、ちょっと手紙を書いてあげるよ。地図もね。その間にカゴを買って、薬草を取っておいで。」



ほら、いっといで、と言われたので大人しく従うことにした。

カゴは近くに売っていたお店で、購入する。50Gだった。安いのか高いのかもわからないが、丁寧に使えば長持ちするらしい。

ついでに、少し大きな布も買っておく。これは2m×2mのサイズで100Gだ。

そのうち適当なサイズに切るかなーと買ったばかりのカゴに畳んで入れて、東門から外に出た。


やっぱり左手はぷるるんを狩っている人が多くいるが、右手には人の気配はない。

いそいそと昨日見つけた場所に行くも薬草が見当たらない。

あれ?全然ない?と思ったら、ややさらに左奥に進んだところにたくさん生えていた。

少し気になったが、黙々とカゴに薬草を入れていく。

手元ばかり見ていた視線を上げると、目の前に果実があった。



「…無花果?」



これも見るからに無花果です。

社長は果物好きなのかしら…。と、じーっと眺めていたら、


―イチジク―


と表示された。



「うわ、」



急に説明テロップのように無音で表示されたから後ずさる。

するとぱっと消えてしまう。

また、じーっと見つめると同じように表示される。


ついでに薬草をじーっと見つめると、やっぱり同じように―薬草―と表示された。

ええーと、ステータス!と唱えると、さっき確認した際にはなかったものが表示されている。


鑑定レベル1


鑑定?これはなんですかっていうのがわかるということかな?

またツインズに聞くしかないなーと気にせず薬草とせっかくみつけたイチジクも採取しておいた。


そのまますぐにおかあさんのところに戻ると、手紙と地図を渡される。

お礼としてとったばかりのイチジクを3つほどあげると、またたいそう喜んでいただけた。


地図には、西門と裏門の間ぐらいということだった。

正面門が地図上だと、南に位置しているので裏門は北になる。

その間だから、北西にあるらしい。

お礼を言って、そちらに向かって歩き出す。そんなに大きくないので、20分ほどで言われた周辺につく。



「うーん?」



きょろきょろ見渡すと、猫がいた。

猫!?この世界にもいるんだー。ふっさふさの長毛種で優雅な感じがしている。

ゲームの世界というかファンタジーな世界だし、周りに誰もいないことを確認して問いかけてみる。



「猫さん、この薬爺のお店知ってるー?なぁんて」


「そこ」


「…!?」


「お主から聞いてきたのだろう?そこだ」



いや、しゃべるとおもわなかった…。

思わず猫を見つめてしまって、しばし硬直してしまった。

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