第10話

基本的に、仕事をするうえで残業はしたくない。

どうしても仕方ない状況、例えば先週のあほの後始末からの引継書は、仕方ないと思って仕事を片付けた。が、今週は毎日1時間~2時間、残業をしている。

ツインズに、せっかくだからゲームスタート初日のはじめだけは一緒にログインしない?といわれたため、有給取得をしたのだ。

金曜日が初日だから、そのまま3連休だし、思う存分ツインズは楽しむ予定らしい。仕事に支障をきたさなければいいけど…。

ツインズはなんだかんだ二人で行動するだろうが、私は特に何も決めていないので、一緒に行動する予定もない。

単純に、あの世界に入れる瞬間を共有したい、ということだった。


すごいね!と、感動を分かち合いたいと言われたら、わかった、と休みを取るのに躊躇いもない。

可愛いツインズの願いですから。

いや、25の背も高めの細マッチョな2人に可愛いとか言えるのは姉の私だけですけどね?

そんなツインズの願いを叶えて、少し動き回ったらあとは自由行動となる。

なにかクエストとかで意見が一致してタイミング合えば一緒にできたらいいね、ぐらいだ。



「神さん、今日も残業ですか?」


「今日までね」



月曜からばたばたと仕事をして、気が付けば木曜日。

早いものだなぁと思う。

1日が早いというか、一週間が早い。これも歳をとったということか…。


ツインズは仕事の休みになればお菓子の新作を考えるか、巨大掲示板を眺めてなにか情報がないかと集めようとしていたみたいだが、さして情報はなく、新作を考えることに専念したようだった。

掲示板の情報かー、と思い出して、そういえば、ランダムってレアでないらしいよ?と伝えたのは昨日のことで、相変わらずシンクロ100%な状態で『は?』と返ってきた。

あのナビゲーターの人が言ってたよー、これは迷っている人の選ぶきっかけになれば、っていうぐらいのもので、ランダムを選んでも差はありませんって言われたよ?と伝えれば、掲示板にもない新しい情報かも、と言われた。

掲示板に書き込むべきか?と二人で考え出したので、お任せすることにしたが、そういえばどうしたのだろう、あの後。


まぁいっか、と残りの仕事を終わらせることに集中することにした。



いつもより遅めの時間に帰宅したが、深夜にはならないのでツインズも起きている。

みていたテレビには、相変わらずあの社長と秘書がでているCMが流れていて、最後に明日正午スタートと付け加えられていた。

なんかかっこいい感じで。社長と秘書が戦ってる流れから。社長も秘書もイケメンだから、最近は掲示板でもすごく人気らしい。



「明日だねー」



らいが用意してくれた夕飯は、オムレツに野菜スープとフランスパン。

いただきますと野菜スープに手を伸ばしながら声をかけると、ツインズから『楽しみ』という返事が返ってきた。

ツインズはいつもの日課のストレッチをしている。

この二人、恋人とかいないのかしら、大丈夫かしら、とたまに姉的に心配になる。

いやこんだけイケメンだしきっと引く手数多だろうけれども…。

そう考えると、彼氏いない歴が3年になってきた私はアラサーという点も考えて、真剣に見合いするべきではないかと悩むところ。


結婚相談所に登録でもするべきか。



「うーん」


『味濃かった?』


「んーん、おいしいよ。ちょっと考え事してただけー」



ていうか、彼氏いない歴3年のアラサー独身女がVRMMO始めますって、かなりわびしいものが…ないか?

なんだか自分で自分の首を絞めて、致命的なダメージをくらった気がしたが、せっかく社長がくれたわけだし、とことん楽しんでみよう。うん。

そう開き直って、目の前の食事を堪能することにした。




金曜日


起きてから3人で軽い朝食をとりながら、今日をどう過ごすかを考えた。考えるまでもなく、だいたいいつもと変わらないけど。

ゲームは正午スタートということで、それまでに家の掃除や洗濯、あと夕飯の下準備までしてしまうことにした。

早めにお昼ご飯を食べてから正午にログインできるようにするという。


掃除や洗濯は分担して一気に片付ける。

部屋の窓を開けっぱなしにして、空気も一緒に入れ替えていく。

ひと通り掃除が終わったら、買い物に。近くのスーパーでお昼ご飯と夕飯の食材をカゴに放り込んでいく。



「お昼は、わんぱくサンド。夜はカレー」


『夏野菜カレー希望』


「じゃあ夏野菜は、茄子と枝豆いれて作ろう。チキン?」


『うん、ヘルシーに』


「わんぱくサンドの中身は?」


「アボカド、レタス、トマト」


「半熟ゆで卵、ハム、きゅうり」


「全部はさめるかなぁ」


『気合ではさむ』



言われた食材を次々放り込む。

帰宅してカレーの準備と、昼食を作って食べたら、少し休憩できるぐらいの時間があまるはず。

カレーは私が、わんぱくサンドはツインズが。

カレーって、基本的にカレールー優秀だからあれこれ隠し味~ということを、あまりしない派です。

玉ねぎは一応飴色になるまで~とか炒めた分と、後入れ分を分けたりはするけど…。


わんぱくサンドはどうやって食べるの?とよく言われるけど、勢いよくそのままかぶりつくべし。

6枚切りの食パンを軽くトーストしてからが個人的に好みで、ツインズも同じ。

外で食べるには女子的に勇気がいるけど、家だし、気にしない。

出来上がったわんぱくサンドとコーヒーで、早めのお昼ご飯。



「おいしいー」



『いただきます!』をして、わんぱくサンドにかぶりつく。

一人でご飯より、やっぱりおいしい。

コーヒーもちょうどいい濃さで、幸せな有給だなーと思う。


とりあえず有給取得した本来の目的のゲームだが、ツインズは6時間ログインするつもりらしい。

私は様子を見てかなー、と伝えておく。疲れたらログアウトすると思う、とも。

なんせついていけるか不安で仕方ないアラサーですから。


一昔前になるのか、3Dのゲームで酔った記憶もあるしね…。


食べ終わった食器を洗い、それぞれ自室に引っ込む準備をする。

ログインしたら、最初にある街の中央広場に集合らしい。

わかったーと返事だけして、部屋に引っ込む。


寝冷え…寝るわけじゃないけれど、冷えてもいやだしなぁとタオルケットをお腹にかけてメットを被り、ログインできるのをただぼんやり待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る