第23話《三》赤絲再逅(えにし ふたたび)-9-
まさに
よって、余程の
万一の場合に備えた山荘の抜け穴は、普段は全く使われることのない書斎の壁を通って、この
さすがの猛火も、ここまで駆け下って来るのは不可能だったと見え、
彼女の背中にたった一つ結び付けられた包みは、その
山火事の翌日に降った豪雨のために、あちこちで
けれども、彼女は決して
何としても
間違っても
彼女にとっては
多分、上官への報告書には『
「
猛烈なスピードで
従って、彼女の体には大きな外傷も無く、その顔一つ取ってみても、鼻と唇から出血して、額に打撲の跡があるだけで、これと言った損傷は見当たらなかった。
「よかった、
彼女の
「許して!とうとうお前までを、犠牲にしてしまったわ」
どのくらいそうしていたのか、
だが、よも
この場所には木々の根が複雑に入り組んでいて、
とりあえずは、土の柔らかい所を探して遺体を運ばねばならないのだが、一体全体、どうやって運べばいいのやら・・・。
「どうなさいました?このような場所で、何をなさっておいででございます!?」
この時の
とにかく、彼女の驚きはひととおりのものではなく、雷に打たれたように全身が
引き
かなり遠方からやって来たらしい彼女の、尼僧にしてはどこか野性的な光を
「・・・・・」
無意識のうちに、
けれども、鋭い視線で瞬時にそれらを見て取った尼僧はすべてを察し、やおら
「
彼女は、
「さ、早く!
とても女の、それも重い遺体を背負った足とは思えない。
しばらく山道を登り詰めた地点で
「すぐ、そこでございます」
彼女の指差す先には、
本堂と呼ぶには少々おこがましい気もするほどに小じんまりとした一室の、粗末な台座の上に敷物を延べ、
その間中、
やがて経が終わると、
「
「は・・はい」
「許して、
「左様にお
「この方のお顔を
「
「この方は、こうすることで、あなたさまへの真心を
そして、
「ようなさいました、
「
幼い頃から、ほとんど
勝気な娘同士、時には
けれど、ここ最近、彼女はなぜかめっきり口数が少なくなっていた。
それらの一つ一つが皆、彼女の
『さようなら、
最後に残したそのひと言に、
「ありがとう。本当にありがとう!お前のことは、決して忘れない。いつかきっと、また会いましょう。ね、
でも、ありがとう!!愛してくれて・・・。
「
ひとまずの
「長い間
彼女は手早く
「さ、どうぞ冷めぬうちに召し上がれ、あなたさまが
実のところ
見知らぬ
いつの間にかその場から姿を消していた尼僧が、ややの
「お食事が済みましたなら、
「はい」
素直に
「
最後の仕上げに彼女の黒髪を
が、彼女はじきに何事も無かったかのような静かな表情に戻り、
そうやってすっかり
「
重ね重ねの
「
「すべては、
「ならばせめて、あなたさまのお名前なりとも、お聞かせ願えませぬか?」
「
しかし、その問いにもやはり
「そのようなことよりも、
寺の左手の道を、来た時とは反対の方角に向かって少し下ったところに深い
その
「この道を、西へ西へと
そこまで来ると
その彼女を、
「もし、
そう願いつつ自分を見詰める切れ長の目の中に、かけがえのない
「よろしゅうございますとも。この身が、確かに
「ありがとうございます。
その姿は、すぐに茂みの
「
数刻後―・
その
鳳凰傳 桃花鳥 彌(とき あまね) @momonohananotori
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