第21話《三》赤絲再逅(えにし ふたたび)-7-
このところずっと
一時期は小康状態を保っていた北方の
彼らの存在は、
その頭領に、
彼らはいつの頃からか、歴代王朝の圧政極まる
そして
ちくりちくりと、針を刺すように
しかも、大した被害が無いからと油断でもしようものなら『針』はいつの間にか『剣』に変わり、思いもよらぬほどの打撃を
その為、一挙に押し寄せては来ない解っているにもかかわらず、ひょっとしたら
そういう変幻自在、
おまけに、中央権力の遠く及ばぬ最果ての地に根拠を置く彼らの、正確な数をも把握するのは困難、と来た日には
無論、そちらの方も決して手を
それやこれやで、やたらひっきりなしに重臣たちが招集され、宮廷内外は、騒然とした雰囲気を
重臣としての立場に加え、軍人としても要職にある
そんな事情で、
ともかく、その
〈奴だ!奴に違いない!!〉
これまでのように
以前、彼らが散々にいたぶった娘が、実は
そしてかの子倅は、
聞けば、
〈これで決まりじゃ!今度こそは、あの憎たらしい小僧めを、さんざっぱら命
大いに
とにもかくにも
その時、丁度折り良く、
〈またまた
だがしかし、と
〈この際、義侠気取りの
腹の中に、いつもながらの黒い
まだ、昇り切らぬ太陽の光を受けてキラキラと輝き、ゆっくりと
二人はずっと、無言だった。
無言のまま、歩き続けていた。
「
先に沈黙を破ったのは、
「・・・」
不安が、さらに自分を
「今夜遅くに、私はここを発って、
〈ああ、やはり、そう・・・〉
こうなることは、はじめから覚悟していた筈である。
―この方は、いつかは私の側から離れて行ってしまうのだ。本来が、私などの
ここ数日来の彼の様子から、何となく、
だが、こんなにも早く、こんなにも
〈今夜だなんて・・・ひどい!〉
彼女は胸が一杯になり、思わず知らずの
泣いてはいけない!
でも、でも
その様子を、何とも言えぬやさしい
「
「・・・」
答えられる訳がない。
つい今しがた
〈どういう積りなのかしら、このひとは!?〉
彼女の
「私にとっては、ただ姉こそが、理想の女性でした。ですから、他の女性に目を
向けたこともなく、ましてや妻を
その時はまるで信じられませんでしたが・・・やはり、姉の言ったことは正しか
ったようです」
彼は思い出したように照れた微笑を見せたが、それはほんの一瞬で、たちどころに
「あなたに
そう言って
彼の
「これを?私に!?・・」
しばらくは声も出せずにいた
「いつか、お話し致しましたね。亡き姉が、私の妻となる
「嬉しゅうございます、
彼の言葉も終わり切らぬうちに、思わずそう叫んでしまった
「でも
「もうおよしなさい、
「およしなさい、御自分をそんな風におっしゃるのは!・・私が本当のことを言
ってあげましょうか。いいですか、
「うれしい!!」
心に
「歩いて下さいますか?私と。たとえ、道無き道であっても・・・」
彼女を抱きしめ、
「はい、・・喜んで!」
〈よく似合う!〉
彼女を見下ろす
お互いが、生まれて初めて体験する、異性への愛の確認である―このままずっと、こうしていられたらいいのに!!―二人は、同時にそう感じていた。
やがて唇は離れ、再び彼らは見詰め合う。
すでにこの時、
そして、彼女は恥じらいながらも、それを口にするのを
「
切ない想いは炎となって、その
〈抱きたい!あなたの何もかもを、奪ってしまいたい!!〉
だが、
「ありがとう、
彼は静かに、自分自身に言い聞かせるように答えた。
「私も、できることなら今すぐにでもそうしたい。しかし、今はこのままお別れしましょう。
「ああ、
二人はまたもやひしと抱き合い、万感の思い
いつしか太陽は昇り切り、
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