第19話《三》赤絲再逅(えにし ふたたび)-5-
その時、不覚にも
ふいに身辺に忍び寄って来る
〈何たるざまだ、
侵入者は、音も立てずにさらに近づくと、
まだ若い、野性味
「お久し振りでございます、
ことさら感情を押し殺し、冷たく
「あなたはもしや、
「
押さえた
言うまでもなく、
「
相変わらずの歯切れの良さで、彼女は非礼を
「やはり、あなたでしたか!あの折りの厚情、私は決して忘れてはおりません。今改めて、あなたに御礼申し上げねばならない」
「そのようなことなさいますな、
「それならば、
だが、その詳細は
「申し遅れました。
彼女は改めて名乗りを上げ、それに
「あなたが
彼は我知らず、自分も
まるで無意識のうちの行動であったとは言え、人妻の身でありながら命
〈抱かれたい!!このひとに・・・ただ一度だけでよいから!〉
突如として身の内に
しかし、すぐに
「はい!御安心下さいませ。我が夫・
そして
「そうだったのですか・・・」
まさに
人の世の
「本日まかり越しましたのは、
そして彼女はすっくと立ち上がった。
「無事役目を果たしました上は、
「
心からの謝意と願いを
「どうぞお顔をお上げになって、
「この
訴えるように彼を見つめた
「
彼は
「あの方を・・大切になさって下さいませ。先ほど
〈
そう思った
その様子を見守る
それゆえ、一人娘の
「そのまま、そっとしておくがよい。決して、騒ぎ立ててはならぬぞ。
以前、娘が
そのような正義感
そこで
その結果、
さらに彼は、細やかな情報活動の副産物として、若者の
こうなると断然、
彼は何度か山荘を訪れ、回復途上にある
そしてますます、深みに
その絶世の美貌もさることながら、彼の持つ内面の素晴らしさが、
それ
彼が
今年ではや二十四になろうかという彼女にとって、余りにも遅すぎる初恋の
〈それも、よかろう〉
『
その
―もしや、宿縁とでも呼べるものではあるまいか?―
彼女の夫となるべく運命が定めた、この世でたった一人の男―それが、もしも本当に彼であるのなら、娘にとって、また父親にとっても、どんなに喜ばしいことだろう!!
年齢的には、確かに
だがしかし、娘の将来を
実に
娘を思う、ごく当然の親心だった。
けれども彼は、
もしも万一、そういう
先日、
忠義心
「
彼は
だが、旅立つその前に、ぜひともしておかねばならぬことがある。
〈あなたが好きです。
そして何よりも―
思い出すのもおぞましい悪夢に
〈あれは確かに、彼女だった!〉
けれど彼女は、
そうまでして、自分の名誉を守ってくれる
しかも、決して気持ちを押し付けようとはせず、ただ黙って側にいる・・・。
『一緒に生きたい。生きて欲しい!』
もしも、そう告げたなら、彼女は何と答えるのだろう?
〈私には、あなたしかいない!だからせめて、この想いを伝えて
しかし、
よしんば
そのように
けれども、彼の激しい恋心は、当然自らに課すべき
若さは純粋、
さらにその上、少なからず自分勝手でもある。
それが
必ずしも相手にとっての幸せにはつながらないと頭では解っていても、
困難が大きければ大きいだけ、
心を決めた彼は、亡き姉に向かってこう語りかけた。
「
そして、あなたが
〈ひとまずは、
彼はそう思っていた。
二日後、
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