第16話《三》赤絲再逅(えにし ふたたび)-2-
さて、山荘に到着するなり
「うむ・・・」
彼の傷の状態を
「これは、
何か言おうにも、まるで声が出ない。
博士は続けた。
「もしもこれが
彼の
「
彼女の必死の
「はっきりと申し上げた方がよかろう。助かる見込みは、十中二、三分・・いや、それ以下かも知れぬ。万一の場合も大いにあり得ることを、お心に留めておいて下され」
「
「この方に、もしものことがありますれば、
「⁉」
「解り申した、
少なからず感じるものがあったらしく、
「この
そしてすぐに、こうも言った。
「しかしながら、何せ、出血が多すぎる。よいか、この病人を、決して動かしてはなりませぬぞ!ここ四、五日が、大きな峠となろう。非常に困難ではあるが、それさえ乗り切れば、何とか望みが出るやも知れぬ。ともかくは、やってみるまでじゃ《わし》はこちらに泊まり込むゆえ、どなたかを我が屋敷へやって、
「は、はい!ありがとうございます!!]
それからの数日間に
一進一退を
しかしながら、
だが、当然のことながら、完全に
さらに十日後になって、その日の診療を終えた
「恐らく、最も危険な状態は、
そのあとで、彼は急にしみじみとした口調になった。
「それにしてもそなた、何と、よう
感に耐えぬ様子でそう言い残し、十数日ぶりに、自分の屋敷へと戻って行った。
半月近くもの間、
年齢的に見ても、当然、その極地に達している筈であった。
にもかかわらず、彼は、医師として一人の若者の命を救い得たことに
その後ろ姿に向かって、
ただ一人、彼の
けれども、今、彼女の心身を
〈私はとうとう、この方をお助けすることができたのだ!〉
その喜びが、ふいに彼女を涙ぐませ、よりやさしい視線を
濃い眉の下の美しい彼の
彼の美貌を形成する
〈何て、お美しい
〈
何とも不思議な気がした。
けれど、寝台の側の脇机に並べられた、
中でも、とりわけ
〈どなたの
悲しい・・
だが、どうしようもないことだった。
そうと解ってはいても、やはり悲しい―恋する女心というのは、なぜ、こんなにもいじらしいのだろう?
〈きっと、この方にふさわしい、美しい
涙がこぼれそうになった
〈何を考えているの、馬鹿な
気を取り直し、再び
こうして、誰に
その時である。
何の
「お嬢様。もし、お嬢様!・・・」
「なんです
恥ずかしさに
「はい、申し訳ございません、お嬢様。でもちょっとだけ、こちらにおいでになって下さいまし」
何も知らない
「なんなの?早くお言い!」
彼女は相変わらず、機嫌が悪い。
「はい。申し上げますわ。お嬢様」
なんだってお嬢様は、こうも御機嫌
「実はね、お嬢様。他でもないあの方のことなんですけど・・・」
「あの方がどうかして!?」
「まあ!そんなに
「いえね、どうやらあの方、
「えーっと、
「
「でも、お嬢様!」
「いいから!もうおやめと言っているのです!!」
今までにただの一度として、彼女は、女主人のこんなにも激しい語気を聞いた
〈お嬢様。あなたはやっぱり、この方を・・・そうなんですの!?〉
「うぅ・・」
苦しげな
どうやら
「
「
そのうちに、
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