巻ノ二 鳳凰雌伏(ほうおうしふく)
第11話 《一》静暇嵐襲(あらしのまえ)-1
あの
最愛の父と姉を一度に失った衝撃は計り知れず、加えて、
徹底的に打ちのめされた彼の魂は深く傷つき、その傷の深さたるや、
並の人間ならば恐らく、二度と再び立ち上がることは出来まい
だがしかし、この
考えようによっては、そうなった方が、いっそ本人にとっては楽であろうと思えるのだが、持って生まれた誇り高き意志の力と、幼少の頃より、かの翔琳寺に
〈
決然と、彼は
七日
しかしながら、そんな
「
彼は
当主となった
しかも、それらはすべてに渡り、どさくさ
財産乗っ取りは
しかし、
父・
さすがの悪党・
その財産を、
たまたま
遺族たちの誰もが、思いがけない若主人の厚意に感激し、涙ながらに彼の
その行為が、
もともと
従ってその
仮にも「
暮らし向きは、決して以前ほど豊かでなかったにせよ、
ところで――。
が、いかに
けれど
もともとが、彼の与り知らぬところで取り
それに、理由はどうあれ、何かにかこつけて相手から金を巻き上げてやろう、などというさもしい根性は、爪の先ほども持ち合わせてはいない。
現在、
もっとも、当の娘の身にしてみれば、それはこの上もなく
まさに音に聞こえた絶世の美男子たる
そうこうするうちに
どれもこれも純粋で意気盛んな若者たち、それに、年頃もほぼ同じときている。
中でも
その名を、
彼は、
しかし、さすがに筆を持たせれば、こちらの方も大したもので、性格そのままに
彼らは
驚いたことに、かの
そんなある日のこと、
「まことに勝手な言い分ながら、
簡素な文面が
その主人に似つかわしいい実直者の使者は、
〈何事だろう?〉
人通りの
裏庭から中庭を横切って
長い廊下をしばらく歩いて
「よう、お越し下された。呼び出しの書状など差し上げて、まことに申し訳のう存じております」
彼は椅子から立ち上がると、
「いえ、
「いやいや、お手前のお心
「一族の者の目を
そこまで言うと、さすがに苦笑した。
「いや、これはまた!・・お許しあれ、老いぼれのつまらぬ
老人は、
「何を隠そう、他ならぬ
そういって彼は
その声に
まだ若い女のようには見受けられたが、どこまでも
が、
彼女は、二人に対して
「この者は,実のところ
言いながら
「この身はしばらくの間、席を
「そなた、そのままでは
彼がそう
「いいえ、若様。お心
「
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