第24話 キャンプのよるに

……さて、今の話をする前に、あの筋肉質な一団がどうなったかをプレイバックしてみよう。




『やれと言われたらやるが……この場で俺の火魔法は危険だな』

『なら先に僕が!』

『のわぁっーー!?』


声と同時に指輪を取り出した二条くんが高圧水流で一人ふっとばし。


『んじゃ次は俺っと!』

『って三崎! 抜け駆けだぞ!?』


黄色い稲妻と小規模な炎の竜巻が融合してマッチョマンのタンクトップに直撃。

衝撃で吹っ飛ぶと同時にマッチョマンは上半身裸に。


『なんの! 我らにとって上半身裸程度なんの恥にもならんわ!』

『ミヤビ、あいつら何』

『体を見せびらかすことを趣味にしている集団、の中でも感覚がおかしい連中』

『……』


と、ここで少しキレ気味な雰囲気をまとった二条くんが一人マッチョマンの近くへ。

無防備な接近に思わず危ない、と言おうとした瞬間。


『これ以上邪魔しないでくださいね』


魔法で発生した水がマッチョマンの顔にまとわりつく。

当然彼は呼吸するための空気を失いその場で苦しみだし……溺れる寸前くらいで開放された。


『まだ、やりますか?』


あの、二条くんってこんなに冷酷に笑うキャラでしたっけか?

これがいわゆるギャップ萌えってやつなのだろうか………

ヒィッと叫びその場から逃げ出すマッチョマン。

しばらく彼らはプールとか行けないだろうけど、自己責任だから受け入れてね♪



で、そこを加味した私の総合的な判断の結果、


「今日のMVPは二条くんでーす!」

「ありがとうございます!」

「ちぇー」

「それじゃあこのお肉は二条くんに!」


その賞品として、今日のBBQの中で一番高いお肉は私と二条くんで折半することになったのだ。

ワクワクするよね! 高いお肉! それでは早速いただきまーす!


「うん、流石高級肉! 流石バーベキュー! うまい!」

「とっても、美味しいです!」


この滴る肉汁、赤身肉の旨味! いやー、バーベキューといえばこういうお肉ですよ!

脂身の美味しいお肉も捨てがたいけど、野性味あふれる赤身肉もまたうまいんだよなぁ。


「ミヤビさん、もっと食べますか?」

「へ? けど、その手のフォークにあるお肉は二条くんの」

「食べますか?」

「あ、はい……頂きます」


なんだろう、この圧。

二条くん、君は小動物系からヤンデレ系に進化したというのかい?


「美味しいですか?」

「うん。美味しい!」


その言葉にニコッと微笑む二条くん。うーん魔性の魅力に若干私の顔も赤くなる。

けどまぁ、まだ「他の男なんて不要ですよね?」とか言い出していないからセーフか。

……ところで何故にその相手が私?



その後森を散策したり川に石を投げてみたりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

そして夕食を終えて就寝時間になりまして。


「一木くん、それじゃあ明かり消すよ」

「おう、やってくれ」

「ところで、川の字ってこれでいいの?」

「ハイ、ダイジョウブ、デス」


はい、私はとんだ計算間違いをしていました。

確かに川の字はこれで正解だ。ただ、縦棒が一本多くなることを私はすっかり忘れていたのだ。

そう。このテントは三人用であり、一人分寝床スペースが足りないのだ。

細身の王子様なのでギュウギュウ詰めになれば私もテントに入れるわけだが。


「ミヤビ、本当に大丈夫か?

 その、女として」

「言うな。だがもう寝袋を新規調達する時間でもないから、私は心を無にして耐えるのだ」

「まぁ大丈夫でしょ。これまでも一応同居してたわけだし、免疫できてるって。ね?」

「管理者権限/アドミンでその口塞いでも良いんだぞ三崎」


ちなみに並び方としては三崎・一木・私・二条くんとなっている。

私は昼のように襲われる危険があるから外側には配置せず。

そしてここまでの経験から、三崎が一番心臓に悪いムーブをすると踏み、遠くにやった私の直感は正しかったな。


「けど、ほんとうに楽しかったですね。キャンプって」

「まぁな。実際の野営はもっとキツいんだろうが、遊び目的で準備すれば楽しいんだな」


うぅ、四人以上用のテントであれば多少距離を取って微笑ましく見守れるというのに。

あぁ、両脇のイケメンの声が心臓に悪い。もう、なんでこんなとこで間違えたんだよ私ぃ……


「……そろそろ、寝るか」

「わかった」

「これ以上はミヤビちゃんからお叱りがきそうだからね」


お、流石イケメン王子達。ここで揃って私に対して配慮を見せるあたり性格もイケメン。

これなら私も安心して……


安心して……


安心して……


イケメン三人の寝息の中で寝られるかぁッ!? 

と思ってから数分後、私の意識はいつもの神様(仮)の待つ夢の中に落ちていったのだ。



さて、その夢の中で必要事項の確認は終わった。ひーちゃんの見立て通りであれば、計画は成功する。

それ以降の日々は三人揃ってではなく、それぞれがそれぞれの日々を過ごしていた。

もちろん私も例外ではない。4月からは新学期が待っているのでそれの準備もした。



そして今日は3/31の夜。

私たちはリビングのテーブルを端に寄せ、五人並んで布団に入っていた。

異世界との窓口である私が眠ろうとしたときに五人まとめて神様(仮)に対面するらしい。


「みやちゃんと三人のイケメン王子様と同衾……これは興奮で気絶しちゃうね!」

「な、なにもしないでくださいね?」

「てか気絶しちゃダメだろヒカリ」

「最後の最後まで騒がしいなぁ」

「んじゃみんな、準備はいいね?」


神様(仮)は約束通りの時間を確保してくれた。

これから私たちは彼女に会いに行く。


「さぁて、それじゃあファイナルラウンド、いってみようか」

「最後にはさせないけどね」


ぼそっと何事かひーちゃんがつぶやくのが聞こえたが、私は構わず目を閉じた。

全てに決着をつけに行くために。

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