第17話 やせいの ぎゃる が あらわれた!
さて、緊急事態だ。三崎が女子に絡まれている。しかも三崎は相当不機嫌な表情をしている。
そりゃ感想会まだはじまって少ししか経ってないし、邪魔されて怒るのは当然だな。
とりあえず、三人の間に割り込んでみるか。
「三崎!」
「ミヤビちゃん!」
さぁて、こちらは一人、相手は二人。
ここからどうやって女子二人をまくかは私の腕の見せ所……ってあれ、この二人見覚えあるぞ。
「え? このイケメン、風間さんの知り合いだったの~?」
「ちょうどいいや、一緒に行こうよ。私達暇してたんだ」
こ、これはマズイ。極めてマズイ。
なぜなら、彼女たちは私が大学でゲットした数少ない友人の二人。
ふわふわガツガツ系の吉見とサバサバガツガツ系の古野。
イケメンあさりが趣味と公言し、付き合って捨てた男の数は不明と言われているギャル2名……
なんでこんな奴らと友人になったのかは正直良く覚えていないが、
この状況において最悪の相手にエンカウントしてしまったようだ。
「えーと、この人はちょっと緊張しいでね?
あんまり知らない人と行動するのになれてないんだ。
だから今日のところは……」
「それじゃ今からお友達になればいいよね!」
「そういう問題じゃ」
「それとも何? 風間さんこの人独り占めする気なの? それはずるくない?」
さ、流石。逃げコマンドを選ぶ前に即座に回り込まれた気分だ。
だがここで私が切れるカードは正直限られている。
逃してくれないからって暴力に訴えられる腕力は私にはない。
かといって二人を煙に巻くためのコミュ力もない。
下手な逃げ方をすれば家までついてきてゲームオーバー。
え、切れるカードある?
「ミヤビちゃん、早く行こうよ」
「三崎、ここは慎重に頼む。
二人の機嫌を損ねるのはマズイ」
「……わかった」
だが私に現状を打破する手段がないのも事実。
どうしようか……
「ねぇ三崎くん? 風間さんより私達と遊んだほうが楽しいよ~?」
「そうそう。風間さん根暗だし、趣味も同人誌づくりで話題の広がりないでしょ?
こんなつまんない子無視して私達と一緒に行こうよ」
あー、そうですか。お二人にとって私はその程度の存在でしたか。
これは「友人」から「知り合い」に情報を訂正しておくべきだな。
だが……そこまでが限度だ。私には二人を突っぱねて大学で一人になる度胸はない。
仮初の友人、知り合いであっても貴重な存在。
結局打つ手が増えたわけでは……あれ、三崎?
「……もう一回言ってよ。聞こえなかったから」
「え? だからつまんない風間さんじゃなくて私達と」
「誰がつまんないってんだ!? えぇ!?」
突然ブチギレた!?
三崎、ちょっと落ち着け。慎重に行こうって言ったよな?
ああ、そういえば今現在は管理者権限効いてないじゃん!
「カラオケ店」という私がOKした領域内で動いてるだけだから何の縛りもない!
「ミヤビちゃんが日々どんだけ俺たちに振り回されてるのか知ってんのかよ!
俺たちの分までうまい飯作って色々俺たちのことを考えてくれて!
そんな人をバカにされて俺が怒らないとでも思ったのかよ、アァ!?」
しかも想定外の想定外なのは、普段チャラチャラした態度の三崎がここまでブチギレていること。
日々の色々を感謝されてるのは十分伝わったから一度落ち着け、な!
「な、なによこいつ!
風間さん、こいつアンタの彼氏!?」
「んなわけないだろうが! これ以上俺の前にいるんじゃねぇ!
これ以上つきまとうようならマジでぶん殴るぞ!!」
「ヒッ、い、行こう! こんなサイコパス誘わないほうが良いって!」
サ、サイコパス……流石に誘った相手に対するセリフじゃないぞそれ。
しかしそのセリフで私の堪忍袋、限界突破したぞ。
「管理者権限で命令。三崎、手段は一切問わないから、周囲にバレない程度の嫌がらせってできる?」
「……任せてよ」
三崎は懐から黄色い宝石つきの指輪を取り出すと、それに何事かつぶやく。
「きゃっ!?」
「痛っ!?」
あれ、誰も何もしてないのに二人が痛がってる。しかも連続で。
「さっさと、帰れ」
そこに三崎がこれまた珍しいドスの利いた声で脅す。
素晴らしい。この場に即したナイスな手段持ってるじゃん。
「わ、分かった! わかったわよ!」
「な、なんでこんなに連続で静電気が……痛っ!?」
そう言いながら二人は去っていった。
どうやらさっきの宝石は初日に言っていた「雷撃魔法」の媒体なのだろう。
しかしそれを静電気クラスまで弱めて使うってすごい……よね? たぶん。
「戻ろっか。ミヤビちゃん」
「そだね。あ、トイレは大丈夫だった?」
「うん」
さて、後日どうなるかはわからないけど、とりあえずミッションは成功だ。
うさ晴らしに一曲デスメタル歌ってやろうかな、とも思ったが、
今は三崎の話を聞くのが優先だ……時間が余ったらやろう。
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