第16話 雅と三崎のラブラブ()デート
はい。やってきました最寄り駅。
私にとっては珍しくもなんともない電車移動ですら、三崎にとっては新鮮なもの。
と、いうわけで現在三崎には「私の指示するところ以外ではよそ行きモード」という縛りをつけてます。
……思えば、ここまでで管理者権限/アドミンの命令使ってるのって三崎だけだったか?
「ミヤビちゃん、俺、この驚きの光景にもう少しリアクションしたいんだけど」
「我慢我慢。身分がバレて動きにくくなるよりマシでしょ。
それとも三崎はこっちの世界でも護衛を連れて遊ぶのがご所望で?」
「むぅ、イジワル」
我慢しなさい。こっちは金髪イケメン王子様と一緒にいる時点で注目浴びるのに耐えてんだから。
覚悟はしてたけど周囲の女性からの目線がひっどいなぁ。
「ちなみにここからどこに向かうの?」
「新宿ってとこ。人混み・自然・諸々の遊びスポットまでなんでもござれだよ」
「へぇ……!」
流石にワクワクした表情まで抑え込みはしない。
さて、しかし新宿に遊びに来るのも割りと久々だ。
……睦月との思い出の多い街だが、その分の経験値はあるんだ。
ここは経験部分だけ有効活用して、三崎のために動こうじゃないか。
その後私たちはゲーセンに行ったり洋服屋に行ったりと、いわゆるデート的なことをした。
三崎は当然いたるところに驚いていたが、管理者権限をつけていたので割と静かだった。
流石にリアクションを抑え過ぎてフラストレーションがたまっているようだが、
そこを考えていない私じゃない。私にいい考えがある、ってやつだ。
ここで休憩するためにやってきたのはテレビと大きめの音楽が流れる個室だ。
ちなみに今回はマイクとかは使いません。
「えっと、ここは何?」
「カラオケっていって、歌の伴奏が流れる機械があって、
周りを気にせずに好き勝手歌っていいところ。
つまり好き勝手声を出していいところって言っても良い」
「え、けど俺、こっちの歌なんて……」
「それじゃあ今日の楽しかったポイント、好きに話していいよ」
そう。今日の管理者権限は私の指示するところでは無効化される表現を使った。
多分おやつ時には我慢の限界が来るだろうと思って、事前に話せる場所を予約しておいたのだ。
ふふふ、私の頭脳は今日もフル回転だぜ。
「……あのでっかい猫の画像、すごかったね」
「うん」
「というか何この街。人多すぎて迷子になるかと思うって相当だよ。
この街じゃあんなパレードみたいなことが毎日起こってんの?」
「そうだよ。この国は人口の密集率がすごいからねぇ」
「それにあんな上等な布の服とか初めてだった」
「だよね」
おや? 三崎のテンションが思ったほど上がってないな?
てかむしろ目尻に涙浮かべて笑顔ってちょっと萌え……
いやいや、これは想定と色々違うことを怪しむべきか?
「ありがとう、ミヤビちゃん。こんなすごいところにつれてきてくれて。
それに、俺のこともちゃんとわかってくれてて、こんな……」
なるほど、ね。そっち/感謝 か……
わからんでもない話だ。三崎が自由を求めていたのは聞いた。
なるべく自由にできるように私に気を使ってもらったことにいたく感動したのだろう。
「っ、ゴメン。ちょっとトイレ行く。
どこにあるんだっけ?」
「ああ、青い人形のある扉の中だよ。
流石にそこまでは同伴できないけど、終わったら銀のレバーを下げればいいはずだから!」
「……うん」
そんなわけで一人外に出ていった三崎を見送り、私はふぅと息をついた。
これで三崎が何かを見出してくれればベストだが、
戻った後の思い出作りとしてはこれで達成、と言えるだろう。
いやはや、良いことをした後は気持ちがいいね。
と、思いながら十分が経過。……流石に長すぎやしないか?
「……ちょっと見に行くか」
こういうとき現代人相手であればスマホでチョチョイとやれば確認できるのだが。
と、思いつつトイレの方角へ行くと。
「ねぇ、私達と遊んでって言ってるじゃん」
「ちょっとの時間でいいの、お願~い」
「あのね、俺急いで戻らなくちゃいけないんだ。
頼むから離してよ」
……イケメンが逆ナンに遭遇する可能性を忘れてたぁぁぁぁぁ!!!
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