第11話 「解析眼」の使い道
昨日のピーマンパーリィから一夜明け、通販で買った王子様向けの適当な衣服が我が家に届きました。
二条くんはいくつか買い足した囲碁の教本とにらめっこし、一木は自分の番に備え気合満々。
そして勢い余って買いすぎたピーマンの炒め物を押し付けた三崎はというと。
「出されたものは律儀に食べるんだね」
「当然でしょ。というか苦い辛いって脅しかけてた割にこっちのピーマン美味いんだね」
「あー、まぁ農業の技術も色々違うだろうからそうなるか」
と、いうわけで炒め物をペロッと完食していた。
ちなみに「管理者権限」は途中で解除も可能ということは昨日改めて実験して、成功している。
……とりあえずここで現状を整理しておこうかな。
まず二条くんを図書館に連れて行く計画は彼の「もう少し囲碁をやってみたい」という意向によりとりあえず延期。
ちょくちょく碁会所に連れてってあげれば彦爺がみっちり鍛えてくれるだろう。
前回ので二条くんの性質は知ってるから、多分もうちょっと段階踏んでやってくれるはず。
一木に何をさせるべきかは正直ちょっとまだ曖昧だ。これについてはこの後「解析眼」について調査してから固めていく予定。
三崎については「直感眼」なるものが言葉的に「解析眼」以上にわからん能力なので、ひとまず保留。
と、いうわけでとりあえず次にやるべきなのは。
「一木、解析眼使ってみて」
「昨日もだけど俺の扱い雑すぎねぇ!?」
「いやぁ、このメンバーだと唯一の純ツッコミでしょ?
ちょっかい出したときのリアクションが一番おもしろいんだよね」
ボケ担当ならわかってくれるだろうこの感情。
まぁここに理解できる人はいないけど……あ、三崎が楽しげに笑ってる。
「ったく。で、何を見れば良いんだよ?」
「とりあえず床」
「床!?」
まぁ、一木が困惑するのもわからんではない。ぱっと見ただの木の床だろうからね。
ただし、この床の感触からして私は別の可能性を考えていた。
「……なんだ、これ」
「なにかわかる要素は?」
「泡のような構造が薄い布に詰まっているのか……?
だが、見た目は確実に木のはず」
やれやれ、見た目に惑わされるとはうんぬん。と腕を組む私。
けど、流石にこんなところに未確認技術があると言われたらそのリアクションもわかる。
「自分の眼力信じなさいな。
多分それは薄い泡の詰まった布に木目を書いて床に貼り付けたものだよ」
「何だそりゃ!? なんでそんな手の込んだ事してんだよ!?」
「詳しくはメーカーに聞け案件だけど、たぶんこの泡があると床のあったかさが持続するんだよ」
「はぁ? 意味分かんねぇ」
とりあえず色んな知識のバックボーンをつけないと「解析眼」も持ち腐れってことは理解した。
とはいえ義務教育テキストをほいっと渡して「読め」ってのは酷な話だ。
「一木は本読むの好きだったりする?」
「もちろんだ!」
ダメ元で振ってみたネタが受け入れられると不思議な気分になるよね。
それはさておき、実践派と思ってた一木が読書いける口とはちょっと意外。
「なにせ解析眼を活かすためには知識が必須だからな……
昔っから色々と本は読んでるぜ?」
「あー、そっか。生活環境がそうなるか。
ならさ……」
私はとりあえずスマホでちょちょいと「物理」について検索してみる。
そしてそれを後ろから覗き込む一木。……そんな距離感で大丈夫か?
「あ、これには「解析眼」使わないこと。
今の一木にはレベルが高すぎる化け物機械だから」
「そ、そうなのか」
「むむむ、そもそもどんなことを教えれば良いんだ……?
正直速攻で役立つ技術なんて魔眼があっても意味ないし……」
検索時間が流石に長かったのか、私の肩から離れる一木は、
何かを思いついたように言ってきた。
「なぁ、こっちの兵器はどんな感じなんだ?」
まぁ、ファンタジー世界で国同士の小競り合いがあるならそう聞くよね。
だがしかし、現代軍事には金と手間がかかる。
「鉄の車と空飛ぶ鉄の塊がメイン。
最近だともうちょっと小さな空飛ぶ爆弾とかもあり得る。
で、総じてそっちじゃ作れません」
「なんでだよ。解析眼があれば」
「設計図とかは作れるだろうね。
問題はその先で、金属を髪の毛単位で図面通りに整形したり、
そっちの世界にない不思議物体を複数組み合わせる必要がある。
しかも出来上がったものは強力だけど扱いが鬼のごとく繊細なもの揃い」
「げぇ……」
さっきの床材を見た感じからいくと、素材の性質とかまでは解析眼がフォローしていない可能性がある。
百歩譲ってこっちの化学知識全部持ち込んでも製造設備がなければ意味がない。
そして根本的に間違っていることが一つ。
「第一、なかよし計画するのに軍事技術持ち込んでどうするよ。
下手すりゃ永久に土地が使えなくなるレベルの物騒な品目もこっちにはあるんだよ?」
「そ、そっか……」
「基本は民間人に役立つ技術かつそっちで再現性の有りそうな技術じゃなきゃ……
……あ」
一つ、思いついたものがある。
今回の目的にはうってつけの技術だ。
「一木、そっちの世界の家や設備は何製だい?」
「石組みとか木とかだが、それがどうしたんだ?」
「ふふふ。木造建築があるなら好都合」
私の頭の中でバチンバチンとパズルのピースがはまっていく。
これなら何かしら役に立つだろう。
「一木の最初の課題は、寺社仏閣めぐりだ!」
「じしゃぶっかく?」
あ、流石にこれは意味不明単語だよね。
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