第2話・個性豊かな王子様s

さて、転生とやらが行われてしまったのはどうやら事実のようなので、

三人のイケメンにはひとまず自己紹介をしてもらうことにした。わけだが。


「俺はケイ……一木央司、らしい」

「僕の名前はリ……二条桜士、です」

「俺はホーク・ドラクル、三崎応治! よろしく頼むね、管理人さん!」

「……ごめん、まず現時点で情報量過多です」


なんで2人は偽名を使っている? なぜ三人目も条件は同じなのに彼だけ本名っぽいのを名乗った?

この時点で混乱の極みである頭を冷まそうとしていると、「二条」と名乗った青髪イケメンが新聞を差し出してきた。


「神様にはこれを持たされました。

 大体この しんぶん?に改変内容を押し込んだからミヤビさんに渡してくれと」

「不穏な言葉しか聞こえないけどまぁありがとう。

 さてさて……」


渡された新聞に書かれていたのは、たしかに三人の王子が私の家に殴り込んできたという内容だった。


『異世界転生してきた王子様、居候先はなんと日本!?』

『ご指名がかかったのは都内在住の女子大生との噂』

『戸籍を偽装して一般社会の生活を送ることを希望』

『邪魔した者はウィル・メイガ王国連合により厳しく罰せられるのでご注意を!』


「世間はこれをスポーツ紙って言うんですけど!?」


確かにわかりやすく一部には収まってるだろうが、明らかに状況悪くしてんじゃねぇか!

久々に出した大声とともにビリビリに破り捨てられる新聞紙。

最早荷物の梱包材にも使えなくなったそれを見てわたわたと慌てる二条くん。

なるほど、彼は臆病気弱小動物系と見た。


「ああ、せっかくの異世界の書物が……」

「そんなのコンビニで飲み物一本分のお値段で買えるから。

 それはそれとして神様(仮)呼んできて。私の元の生活を返してもらうようお願いするから」

「そりゃないぜミヤビ。こっちはアンタの世界を知るためにわざわざ来てるんだ。

 はいそうですかって帰るわけにはいかねぇの」


ふむ、二人目の赤髪イケメン…一木くんはなかなかにガタイがいい。

俺様系か軍事系かはまだ判断できないが、どちらにせよ荒い性格のように思える。

物理的に危険そうなので、おそらくは要注意人物。


「こっちの世界を知るより先にそのわがまま放題の性根を直せとか言われなかった?」

「ぐっ、なんでアンタがそんなことまで知ってるんだよ! 初対面だろう!?」

「勘」

「勘かよ!?」


しかし私は要注意人物だろうが平等にイジるのだ。仲間はずれ、良くない。

さて、そろそろ窓から外を見ていた三人目の金髪イケメンにも話を振ろうかと思ったが……

その彼の姿が見えない。


「わーすげー! このドア開けたらひんやりするぞー!」


なるほど。三崎くんは無邪気チャラ男か。確かに身なりも他の二人に比べて、なんというかゆるい。

だが電気代削減という正義の名のもとに、冷蔵庫を開けっ放しにして涼む行為は断罪対象だ!


「それは開けてる時間の分だけお金が飛んでいく箱なんだよー。だからとっとと閉めなさーい」

「え~? お金なら城から出してもらってよー」

「お金が飛んでいくってことは今日の夕ご飯が腐った卵一つになるってことだからねー

 それが嫌ならすぐ閉めろ、はい3,2,1!」

「わったった! 閉めます閉めます閉めました!

 も~、ミヤビちゃんはお硬いなぁ」


自己紹介されたのは名前くらいのものだったが、とりあえず三人のキャラは理解した。

残念なことに私の置かれている状況はスポーツ紙の見出しレベルしかわからなかったがな!


なお、私の後ろで顔を青くしている二人の王子は本気で今日の夕食が腐った卵になると思っていたようだ。

ちょっと脅しがひどすぎたのは反省しているので心のなかで神様(仮)を真似て誠心誠意謝っておく。

ゴメンネ♪

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