セックスしないと出られない部屋
セックスしないと出られない部屋
「ママー。僕、人間が交尾してるの見てみたいよー」
僕は、動物園の人間の檻の前で、柵にもたれかかりながらそう言った。なぜなら、目の前の檻にいる人間は、ただ座っていて身動きも取らないのでとてもつまらなかったからだ。
「こら、やめなさい。人間にだって交尾したい気分があるんだから」
僕の後ろに立っていたママが僕をそう嗜めた。すると、飼育員が近づいてきて、にっこり笑うと、僕たちに向かってこう言った。
「奥の部屋に行けば、人間の交尾を見ることが可能ですよ」
ということで、僕たちは人間の交尾を見るために奥の部屋に向かった。その部屋は、真っ白な部屋で人間のオスとメスが眠っていた。部屋のドアの上には、文字が書かれていた。しかし、僕は人間ではないので、その文字が読めなかった。だから、飼育員にこう訊ねた。
「あの文字はなんて読むんですか?」
「セックスしないと出られない部屋と読みます。まぁ、セックスしたところで出られないんですけどね。ただの気休めみたいなものです」
「すみません、セックスってどういう意味ですか?」
「セックスは、交尾の別名です。あと、この部屋はマジックミラーになっているので、私たちの姿は人間には見えません。なので、人間の自然な交尾を楽しむことが出来ます。それでは、ごゆっくりお楽しみください」
飼育員さんはそう言うと、催淫ガスと書かれたボタンを押した。すると1分もしないうちに、人間は目を覚ました。それから、ドアの上の文字を見て、口論を始めた。しかし催淫ガスの効果か、すぐさま理性を失い、貪るように交尾をし始めた。
「ママ。人間のメスの妊娠期間は280日ぐらいなんだって」
「よく知ってるわね」
「前に動物図鑑で読んだんだ。あとね、人間が住んでいた地球という星では、法律でデザイナーベビーが禁止されていたんだって」
「かわいそうな動物ね。賢い頭を持っていても倫理観があるなんて。だからきっと、私たちとの戦争に負けて、こんなうす汚い家畜に成り下がっちゃったのね」
セックスしないと出られない部屋 @hanashiro_himeka
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