第3話 ヤバイJK登場。
「では、話をさせていただきます」
俺の前には、セーラー服を着た男と15、6歳くらいのセーラー服を着た少女が並んで座っていた。
水兵の服とは違い、薄手でお腹までの短い丈もひだがたくさんついたスカートも
こうして、並べて見るとやっぱり男は変態で間違いない。
「ちょっと、なんでこの変態野郎と一緒なわけ?」
その言い分はよくわかるが、可愛い顔に似合わず少女の言葉遣いが悪い。
「変態じゃありません。これはイベントで仕方なく」
「誰が、金に物言わせた、おっさんのコスプレマーシャちゃんを見たいのさ。ふざけんなよ」
少女はめくれ上がるスカートの
申し訳ないけど、止めるという気持ちがわいてこない。
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて。アランそこで
俺の横に座って、濡れた頭を拭いていたライトがうんざりといった様子で俺を睨むが、お前以上に俺の方がうんざりしてるんだ。
「アリスって偉大だよな」
改めて、こんな召喚者の相手をいつもしているなんて、本当に面倒見がよくなくてはできないと尊敬するよ。
「仕方ないだろ、今日はいないんだから」
「じゃあ、今日はいい機会だからお前が相手しろ」
「えーやだよ。ゲロかけられただけで十分だろ」
確かに。
「はぁ」と、この日何度目かのため息をつくと、俺は立ち上がり冷気を出し「いい加減にしてください」と二人を見下ろした。
男が俺を見て固まり、次に言い争っていた少女も仕方なさそうに口を閉じた。
ふん、だてに氷の王子様という不名誉なあだ名をもらっているわけではない。
「お二人とも、ある程度状況は
「あの、質問していいですか?」
「質問は私の説明を聞いた後まとめてお願いします」
「はぁい」
少女は納得はしていないようだったが、あきらめて俺の話を聞く気になったらしく、手もとに配った履歴書を
椅子の背にもたれかかり、両足を投げ出すように座る姿は何ともだらしがない。
まともなしつけはされずに育ったようだな。
「では、まず自己紹介から、私は責任者のアランです。あなた達を連れて来たのは社員のライト。ここは召喚者や転生者の案内所でもあります。先ほどあなた達が現れた森は魔王の森といって
「私たちの他にも地球の人がいるんですか?」
「そうです」
「うそ! マジヤバ」
俺の言葉を
「私たちは、そういった召喚者を保護してこの世界で生きていく手助けをしています」
「保護」
「そうです。あなた達のお名前と職業を聞いてもいいですか? できればそちらに書き込みながら教えていただけると助かります」
「私は吉本ひとみ。高校生。何でこれに書き込まなきゃならないのよ」
汚いものでもつかむように紙の角をつまんで、少女は俺の前につき返してきた。
俺は質問には答えず、ただ頷いてそれから男の顔を見る。
「私は鈴木良太。22歳。地球では地方新聞の記事を書いてる。フリーのライターです」
「ひとみさんと良太さんですね。これからよろしくお願いします。履歴書はここで生活していくうえの職探しに使用します」
「職探し! 私まだ高校生よ。何で働かなくちゃならないの? 普通、異世界から来た人間はお客さんでしょ。お城で面倒みるなりしなさいよ」
「残念ですが、そういう制度はこの世界にはありません。働かなければ飢え死にするだけです」
「信じられない……私まだ16歳なのに……うちに帰りたい」
ひとみは下を向き両手で目頭を押さえて「ぴえん」と何度も繰り返す。
なんだこいつ。
これは泣きまねか?
泣きまねにしても、もっと上手にできないものなのか。
「良太さんにも言いましたが、元の世界に帰ることはできないでしょう。どうしても諦められないというなら、ご自分で探し出すしかありませんが、旅をするにも身分証がないと何処の国にも入れません」
できるだけ優しく言ってやったつもりだが、返事はない。
「あの、仕事を紹介してくれるということはここは職業ギルドなんですか?」
「職業ギルドなんてよくご存じですね」
「ゲームでありがちでしょ」
この男はどこまでいってもゲームから離れられないんだな。
ある意味楽だけど。
「この町にも商業ギルドや職業ギルド、冒険者ギルドなんかはありますが、うちはどのギルドでもありません。独自のルートで職業を紹介しています」
「それって、闇ギルドとか暗殺ギルドですか?」
「いえいえ、違いますよ。これでも結構大きい商会なので取引先やあなた達の様に、この世界に落ちてきた人たちなどを通じてです」
流石に良太は地球でも働いていただけあって、俺のことをちゃんとあやしいと思っているらしい。信じていいのか思案するように俺の言葉を聞いている。
「まあ、この世界になれるまでは一定期間は生活のサポートはします。その間にどんな仕事ならやっていけそうか一緒に考えましょう。まずは履歴書を埋めてもらえますか」
「わかりました」
それしかないと思ったのか、良太は履歴書を書き始めた。
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