一日限りの逃避行
両親のいる俺の家で泊まるわけにもいかず、公園の裏手の屋根のある路地で野宿することとなった。
「なんか、ごめん。勢いでこんなところに寝させることになって。」
「全然気にしないで。あんな風にいってくれてうれしかった。」
「それにね、君とならなんでも楽しいよ。」
「ありがとう。」
二人で鞄を枕にして横になる。
「全く星ないな。」
「ね。」
「あのね、文化祭の前の日に言おうとしたこと、あったでしょ?」
「畑での?」
「うん。あれね、君と文化祭を回りたいって言おうと思ってたんだ。」
「無視しちゃって、ごめん。」
「結構勇気出して言ったのにひどいよ。 まあ結局君が言ってくれたからいいんだけどね。」
「君はなんで園芸部に入ろうと思ったの?」
「あー、特に理由はないな。しいて言えば植物が好きだからかなあ。」
「まあそんなもんか。」
「清水は?」
「君と一緒。」
そんなたわいのない話をして、二人で笑っていた。
この時間がずっと続けばいいなとおもった。
でも、そうはならないことを知っていた。
夜が更けて、人気のなくなった頃。
話し声が聞こえたのか、一人の警察官がやってきた。
それで、終わりだった。
その後は一瞬だった。
警察官に腕をつかまれた際に傷が発覚した。
彼女は保護施設へ入り、その後母親の実家に引き取られた。
その間も、その後も、彼女と話せる機会はなかった。
彼女が今どうしているかはわからない。
ただ自分のエゴで彼女の家庭を破壊してしまった。
こうなることはわかっていたはずだったのに。
そういう自責の念が自分の中でずっと渦巻いていて、いまだに連絡を取れないでいる。
ただ彼女があの時間に幸せを感じてくれていたら、いいな。
そう願うばかりだ。
一日限りの逃避行 わたあめ @wataame46
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