「ただいまー。」


 母親も父親もまだ帰ってきてはいなかった。


 あーあ。告白、受けちゃったなあ。


 「痛っ」


 割れたグラスの破片がかかとに刺さる。


 昨日はで帰ってくるの遅かったからお母さん大変だったろうな。


 母に心の中で謝りながら慣れた手つきで破片を片付ける。


 鈴谷にはちゃんとこのあざのこと言わなきゃな。


 私なんて愛されるような人じゃないって。


 灰皿を拾い上げ、床に散乱した吸い殻とビールの缶をゴミ袋に入れる。


 あざを人に見せるのなんて久しぶりだなあ。


 見せてもまだ友達でいてくれるかな。


 玄関のほうから足音が聞こえる。


 乱暴に扉が開く音がする。


 汗が出る。体がこわばる。


 明日、ちゃんと鈴谷には話そう。


 それで、終わりにしよう。

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