4日目 騎士学校がおしえてくれない大事なコト
5.民兵・農兵をもたない
一部、第3項の要素も続いてるが、ギルドとスキルの存在は関係してくる。
民兵・農兵は、なーぜかほぼ出てこないパターンが多い。
ただでさえ様々な脅威が領内にある上、ストーリー上どうしても家の内情が荒れがちである。有能チートはだいたい出て行くし、チョーシこいてプライドだけ肥大化した血族しかいない。
ヒーローは荒れ場に登場するもんだから、しょうがないね。
いやまあ、市民が戦う描写はけっこうある。
あるんだが、見たことあるのは非常時徴集しかない。
敵が目前、街があぶない、男は武器になるもん持ってとにかく集合!
城塞都市に多い。
なぜに民衆に役務を賦課して非常時の人手を増やしておかないのか、常々気になっていた。
ここで注意してほしい。増やすのは直接戦闘する兵ではない。いちおう軍隊のメシを食うので兵だが、ほしいのは『人手』だ。
ジョブが農民でスキルが農耕牧畜だとしても、人間である以上は経験知というものがある。
家畜の世話に慣れている所なんかまず、軍的に超うれしい。
馬の世話してもらおうぜ。
あと生活の知恵。この木は明るく燃える、長く燃える、火口や焚き付けになる、渡河の材木に耐えうる、噛めば糖分が取れる、エトセトラ、エトセトラ。
どれも実在する。
そしてどれも戦争では、拝みたくなるほどありがたい。ファンタジー世界ではなおのことである。
そしておそらく騎士学校という謎組織を卒業した生え抜き貴族は知らない。基本的に生活苦じゃないとしない工夫だから。
だいたいバカでかい寄宿舎ぶっ立てて一日ぶっとおし授業できるくせ、あの騎士学校とかいうのは数年間かけて何をやってるのか。ほぼ魔法好き剣好きしか製造してないじゃないか。どうも全教科Aの何でもできる秀才より、Sが一個の戦闘の天才ばかりもてはやされている。
よくない傾向だ。そもそも貴族はなんでも屋でなければいけない。貧乏で他にできる奴が一切いない中、自分達しかできないから貴族が全部やってあげているのである。偉そうにするのは、雑でいいから、ひととおりできるようになってからにしなさい。全教科Aの何でもできる秀才であれ。
また話がそれた。民間の力をうまく使おう。
まあ一年のうち30日でも10日でもいい。主に農閑期に集まってもらう。
指導者は騎士なり従士なりが派遣できると忠誠心を煽れていい感じ。ただ内容的にはぶっちゃけ門番でも関所守りとかの地元役人でいい。
そいつらをリーダーに、人員を育てるべき。
町内会のキャンプやラジオ体操みたいのをイメージしよう。あれをキッチリ泊まり込み、訓練としてやるのだ。
さて何を鍛えるか。それは小学校のとき体育でやらされたヤツ。
整列。真っすぐ前にならえ。休め。気を付け。
とりあえず、アレひととおりやらせとけばいい。
整列をバッチリおぼえたら、板と竹槍持たせて、皆でエイヤーッとかボイラーッとか叫ばせとこ。なんか強くなった気になって脱走しにくくなる。
夜はみんなでちょっといい食材の汁物つくって、ちょっと酒振舞えばなおよし。民はやんごとなきお方から奢りを受けると、すごい嬉しいのだ。ちょろい。
帰るころにはみんな国のためなら命ささげられる、とか錯覚してるし同期は無二の親友になってるぞ。
主目的は、落伍者を出さず、なかよく行軍できるようになること。
はだしのゲン思い出した人とかいる? 確か一巻。ゲンのお父さんがやらされてて、わざとふざけて怒られるアレ。竹槍で本土決戦という集団訓練。
国としてはまあ、滑稽でもやらなきゃならない。
実際、余裕のある頃は小銃と実弾でやってた訳です。
昔よく覗いてた、骨董がらくた何でも屋、つう素敵なとこがありました。戦時中の国民手帳とか軍隊手帳みたいのが各種ごちゃごちゃ置いてあって、何月何日にドコドコで町内の射撃訓練があり何発撃ちました、参加証明のハンコがコレ。
ってページがあるんですよ。
どんな平和教育より効きました。その時は手元に欲しくならなかったですけど、買っておけばよかったです。詳しい方いませんか、今いくらぐらいだろう。バサバサテキトーに置いてあったので、骨董として特にめずらしい品ではないんでしょうけど。
なんで思い出話がはじまるのか? 何言ってんだキミ。これエッセイだぞ。
さてとにかく、隊伍を組んで行進。
ひとまずこれで必要にして十分。
ちょっとでも武道なりスポーツの経験がある方ならよくわかると思うが、武器だろうが球だろうが、ひとつの動きにそれなりの威力を持たせるトコロまで稽古するのは、メチャクチャ時間がかかる。
そういうのは貴族様に任せて、貨物輸送・行軍の補助として動員できる民兵を用意しましょ。横のつながりを強めておくのは大事。
村どうしの諍いを収めるのも結局は貴族の仕事になるので、仲良くなっておいてもらうのがいいよ。一石二鳥。
あと、来そうなツッコミがある。
マスケット銃の操法か、長槍の刺突だけ教えれば、さほど時間はかからない。
戦えるのでは?
というトコロだ。
一理ある。俺もそう思った。でもやっぱ無理だと思う。
なぜか。魔法が存在するからである。
ギルドでの一般的な請負単位は、個人かパーティ、たま~に複数パーティでの連合、というところのようだ。個人で受けるときは、だいたい追放を受けた直後の主人公が実はスゴイという力試しの見せ場だったりする。あとは一匹狼と知られる凄腕冒険者がどんだけすごいかエピソードだったりの何らかの説明。
まあ4~5人パーティが常識とする。
そしてこの中に、ほぼほぼ魔法職が加わる。
まずヒーラーは生命線なので必須になるのはすごくわかる。自然回復に頼ってたらダンジョン内で何カ月も過ごす羽目になる。やたら布が多い服着てそうな清楚系女キャラがこいつ。まあ聖女とかが治癒担当なのは伝統なので。
そしてキャラ的に対照的なのがいた方が映えるというのもあるだろうが、イケイケで布面積なさそうな服の女キャラが攻撃魔法担当者として高確率で加わる。
さて、こいつは必須なのか?
手元に竹刀かクイックルワイパーのある方は、柄頭(はじっこ)持って腕伸ばして、横にブーンと振ってみて欲しい。意外に攻撃範囲がある。これを熟練者がぐんと踏み込みつつガンガン剣だ斧だふりまわしたらすごい痛い。エリアカバーだけなら攻撃魔法は要らないのでは、とも思わせられる。
つまり攻撃範囲の面積と高さにおいて、魔法はそれ以上ということになる。
でないと基礎体力が劣るデメリットを無視してまで、パーティに入れる理由がないな。
個人的に釣り合う威力を空想したんだけれど、2トン箱型トラックぐらいのサイズで火炎やら真空の刃やら爆発が巻き起こることになると思う。
2トントラックがピンとこない人は、コンビニの前によく止まってるマーク付きトラックや、狭い道で横付けして引越作業してる車両を想像してください。
で、ようよう考えたところ、このレベルの攻撃魔法がわりと一般的である限りは、槍兵とマスケット銃兵の出番ないんです。
こいつらは密集してなんぼだから。
一撃で全滅なんです。なんという生命の無駄使い。冒涜だ。
銃ならワンチャンは、異世界でもないだろうと思われます。
「あの集団に集団で撃てば何割か当たるから脅威だろう」
という作戦だし、仮にすごい良い銃でも2発目の前に距離詰められてエンド、バリア張られてもエンド、じゃあ機関銃でもだすかとなればもうそれは異世界ミリタリー。ジャンル違い。
利点の後で欠点を書いたので印象悪いですが、民兵の活用は本当に大事。
これから領地経営する貴族のみんなには、早く気付いてほしい。
しかしこの魔法というやつ、ホントいろいろものすごく訳わからなくしてくる。こいつめ。
さて基本的には、異世界貴族は王権神授の隆盛期にある様子だ。
ただし、自称でもなんでもない、ガチで神に選ばれし一族ぽい。
つぎはソノヘンか。
でも個人的に異世界貴族でいちば~ん尊敬している点がある。
そっちかもですね。
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