殺人を犯した哀しき男の話

第1話

男は白いコートを着た若い女性が特徴の

女子大生、久野静香(21)の後をつける。


そして、男は徐に取り出したナイフで彼女の背中を刺した。静香「キャー!」


背中だけに留まらず、男は馬乗りになると腹や胸を数回刺した。静香は「キャー!ギャッ!」とそれでもかと言うくらい叫んだ。

その後、静香は動かなくなった。男はそれを確認して立ち去る。

男が次に向かった先は警察署だ。何と男は自首をしたのだ。警察の取り調べで男はこう言った。


「俺は人を殺したいと思った事は一度もない」


「だけど、あいつが俺から全てを奪ったんだ!!」


「だから殺した。それだけだ」


その言葉を聞いた警察官は彼を逮捕するどころか、逆に同情したという。

何故なら彼は被害者だったからだ。彼の証言によると、彼は元大手企業の社長の息子だったという。しかし、ある日突然社長が謎の死を遂げ、会社は倒産し家族も離散してしまったらしい。

その後、彼は職を転々としたが上手く行かず、最終的にはホームレスになった。そして1ヶ月前にあのアパートを見つけ住み着いたのだという。

警察は彼に同情したが、殺人を犯した以上それは許されなかった。


「お前は人を殺しておいて楽になりたいだけだろ?ふざけるなよ?」


そう言われて彼は逮捕された。しかし、彼の心には後悔はなかった。


「これでいいんだ。これで……」


こうして彼は獄中生活に入った。だが、彼が出所したのは2年後だった。

理由を聞くと、


「精神鑑定の結果、責任能力無しと判断されて釈放された」


という事だった。

だが、彼は何も言わずに去って行った。ただ一言、「やっと終わった」と言って……。

ニュースでは


「またも大学生の行方不明事件が起こりました。今月に入って3人目です」


と言っていた。

このニュースを見た時、僕は思った。


「きっと彼らは幸せだろう。僕とは違って……」と。


それから半年後、

今度は違う大学に通う女子大生が行方不明になる事件が起きた。彼女は2週間程行方が分からなくなっていたのだが、翌日遺体となって発見された。死因は不明だったが、首筋に大きなアザがあったという。


「あぁ……また犠牲者が出たのか……」


とテレビを見ながら呟く。


「次は僕の番かな?それとも別の誰かかな?」


そんな事を考えている内に眠ってしまった。


「うわっ!?」


目を覚ますとそこは真っ暗な世界だった。

(ここは何処なんだ?)と思っていると声が聞こえてきた。


「君が今回の候補者かい?」


声の主は男性の声だった。周りを見渡しても誰もいない。


「誰ですか?貴方は?」


「私は神だよ。君達の世界で言うところの神さ」


どうやら目の前にいる人物は自称・神のようだ。正直言って胡散臭いと思いながら話を進める。


「それで神様が何の用なんですか?」


「実はね、君の魂を異世界へ転生させてあげようと思って呼んだんだよ」


「異世界って剣とか魔法とかがあるっていうファンタジー小説に出てくるようなアレですか?」


「そうだよ。そこで君は英雄になって欲しいんだ」

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