第4部

中に入ると霊安室のように周りが近未来的な材質のでできた螺旋階段だった。恐る恐る降りていくと、誰かが倒れている。見ればそれはさっきまで戦っていた4人だった。ヤンキーが壁を壊すのに使ったであろうハンマーを持っている。そしてその奥には

「ここまで来てしまうとは予想外ですね…ここから先は企業秘密なんですが」

雇用主が立っていた。そりゃお前だろうな。怪しさMAXだったし。

よく周りを見渡してみると4人の子供が謎の液体の入った水槽の中で浮かんでいた。映画とかで見るあれだ。

「素晴らしいでしょう…このクローン技術は」

そう言って阿呆みたいに裏事情を全て自白しだす、ラスボスにあるあるのやつが始まりそうだった。でもこいつが言う事に俺はさほど興味が無い(というか見れば大体わかる)ので

「素晴らしい空間ですね、ちょっと近くで見て良いですか?」

こういうやつはとりあえずおだてれば何をしても許してくれる。案の定許してくれたので、雇用主が話しているのに相槌をうちながら歩いて考える。雇用主の話の内容も合わせてみると、多分元々の院長がおかしくなって俺が打たれた薬の試作品的なのを作ったのだろう。そして怪物になったため、雇用主達に倒された。

「そういえばこの子供達って誰なんですか?」

気になったので聞いてみると

「それはですね…」

情報が出るわ出るわ、どうやらこれは院長の子供達で、攫ったのはこいつららしい。クローンと人工知能、そして生物兵器という映画の黒幕が作りがちなもの欲張りセットを作るのが目的だと。おいおい、喋りすぎだぞ。俺が黒幕ならもう頭撃ち抜いてる。どうしようかと考えていると、突然雇用主が銃を向けてきた。セオリー通りの動きだ。

「貴方はもう用済みなんですよ…」

その後も何だかんだ煽り続けてくるのでその間に考える。ここからどうするべきか。俺が今持ってるのは謎の注射器だけだ。あいつに打つか?いや、その前に俺が撃たれるに決まってる。注射器と銃では射程が違いすぎる。打つ手無し。俺はここで死ぬのかもしれない。…いや待て、打つ手はある。俺自身に注射を打つ手が。撃たれて死ぬくらいなら、よく分かんない薬品打って死んだ方が面白いかもしれない。雇用主にバレないよう後ろ手で注射を打つ。途端に全身に激痛が走り、俺は気を失った。

次に目が覚めた時には雇用主の姿はなく、俺の胸からは血が滲んでいた。だが痛みも怪我も無い。おかしいなあ。周りを見ると、部屋の明かりが消えている。どうやら急に倒れた俺の胸を撃ち抜いてそのまま放置したらしい。ザルなのもセオリー通りなようだ。そして俺の体はというと…元通りになっている。俺が薬を打ち始めて数日の、1番健康的な状態だ。都合が良すぎる気もするが、別に良いだろう。俺が幸せになって何が悪い。

流石に雇用主に見つかる訳にはいかないので、周りを確認しつつ静かに俺は廃病院から出ていった。

その後の事だが

俺の口座には本当に金が振り込まれていた。どうやら俺があの部屋に気付かなければそのまま帰らせるつもりだったのだろう。俺はその金を見てニヤニヤしながら雇用主を警察に通報した。その後あいつがどうなったのかは知る由もない。そして俺は貰った金を貯金して、元の生活に戻った。バイトしたりしなかったり。以前と違う所と言えば、貯金がそこそこあるので3食食べられることだ。贅沢さえしなければこれからも食っていけるはずだ。それともう1つ、俺がネットでちょくちょく書いていたこの廃病院での出来事がちとばかし有名になり、書籍化が決定した。色々なタイトルを考えたが、やはりシンプルなのが1番いいだろう。よし決めた。タイトルは__

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