第3部
とは言ったものの何から手を付けようか。この数字を使う場所とかか?いや、こんな風に隠してた紙なんだ、これを使う場所も隠されているのだろう。
それならば
「よし、わかんないからあいつらに聞こう」
あいつらは基本的に脱出に向けて動いている。それならその頭脳を借りさせてもらおうじゃないか。どうせこの紙がなきゃ脱出も出来ないんだ。あいつらに聞きにいく…までしなくても、会話の盗み聞き程度で大丈夫だろう。そうと決まれば善は急げ、あいつらの出す音をよく聞いて探そう。
図書室を後にし、耳を澄ましながら進んでいく。
3階はしんと静まり返っている、どうやらあいつらは3階まで来たわけではないようだ。とりあえず足音をたてないように2階へ降りると院長室の方から扉を開ける音っぽいのが聞こえたので、近付こうとしたが、よく見ると部屋の外に2人立ってるやつがいる。誰かと思えば空手とヤンキーだった。確実に俺をボコボコにする気でいる面子だ、だが考えて見れば当たり前、先程の俺の扉前ガン待ち戦法を見たあいつらは、俺の相手を分断しようとする動きを学習して、見張りをたてて俺の接近を察知し知らせるようにしたようだ。4人で行動を始めたのも、空手とヤンキーがいれば俺程度倒せると思っている上に時間制限がないため、どれだけ時間がかかってでも安全に探索を進めることができ、脱出に向かえるという自信からだろう。そうか、そうだよな。普通のホラー映画とかでは怪物側が強くて手に負えないから、手分けして探索して一刻も早く脱出しようとするものなのだ。そりゃ怪物側に攻撃効くんだったらゆっくり探索して、もし怪物にあったら攻撃、あわよくば倒してしまえばいいもんな。これは話聞くだけでも一筋縄ではいかなさそうだな。俺が院長室から離れた壁から様子を窺っていると、扉が開いて委員長と主人公が出てきた。4人で少し話した後部屋から離れていったため、とりあえず俺は院長室に入ることにした。謎解きがあって1度離れてヒントを探す定番の流れの可能性もあるし、何より院長室なんて絶対何かあるタイプの部屋に決まってる。中はそれほど広くなく、難しそうな本が並んだ棚で囲まれているため、そのせいか妙に圧迫感がある。ただ他にはデスクくらいしかなく、こざっぱりしている感じもする。まず本を見て回るが、どれも医療関係の面白くない本で、そんなに見る必要性がありそうだとは思えない。次にデスクを探ってみると、2段目の引き出しに鍵がかかっている。あいつらはこの鍵を探しに出ていったのかもしれない。なるほど鍵かあ…俺が院長ならどこに隠すだろうか。他の人の目につかず、尚且つ自分はすぐに取れる場所かな。毎回この引き出しを開けようとする度に滅茶苦茶長い工程を挟まなきゃいけないなんてのは考えられない。だとするとこの室内のどこかか?でもあいつらが漁った後だし無いとは思う、あいつらがとんでもない節穴じゃなければ。うーん、わからんな。
でも鍵が必要って事はわかったし別の場所探索するか。
扉をゆっくり開けて頭だけを出して周りを確認した俺は再び廊下を注意深く歩き出した。あいつらが向かったのは確かこっちだったはずだ。慎重に進みながら考える。多分現時点で俺よりもあいつらの方が賢いだろう、それなら俺が無理に探索するよりもあいつらが行った場所を順番に巡った方が良いに決まってる。暗号的な紙は俺が持ってるから、奪われない限りは脱出されないはずだ。あ、でもあいつらが全て探索し終えたのに暗号が無かったら俺が持ってる可能性も考えるかもしれない…やっぱり姿は現さないに限るな。
その時突然下から大きな音が響いた。なんだ?バットで壁でも壊そうとしたのか?無理に決まってるだろ。音は出さないように注意しつつ1階を見に行くと、1階へ続く階段の真下から音がする。どうやら本当にバットで壁を壊そうとしているらしい。そうか、この廃病院には階段が東と西で計2つあり、今いる階段の反対側の地下には霊安室、そしてこちら側の地下には…何があるんだ?まず何かあるのか?まあこいつらも何か考えがあってやっているのだろう。暫くしてバットでは壊せないことが分かった4人は別の部屋に向かっていった。あいつらが殴っていた壁を見に行くと、確かに他の場所と同じように黒ずんでいるしヒビも入っているように見えるが、少しだけ周りと違う感じがする。試しに俺も殴ろうと思ったが、音が鳴ると襲われそうなのでやめた。怪物界の恥晒しとは俺の事だ。
溜息をつきながらあいつらが向かった方へ歩き出す。どうやらナースステーションに行っているらしいな。話し声が少し聞こえたので耳を澄ます。
「おいおい、ここも難しい本ばっかだな」
「さっきの部屋でもそうだったね、さすがにこれを全て読むのは時間の無駄かな」
「階段下の空間に行く方法、どこかに無いかな」
「それと手術室の金庫のパスワード、あれも探さないと」
なるほど、有益な情報だ。手術室に金庫があるのか。なぜ手術室にあるのか分からないが、あるものはあるんだろう。もしかしたら俺が持っているパスワードが使えるかもしれない。俺は静かに、足早に手術室を探す。なんとなく1階にあった気がするので1階を周っていると、手術室の文字が見えた。俺の記憶力も大したものだ。とりあえず入って金庫を探そうと思ったが、探す必要はどうやらないようだ。壁についているカバーのついたボタンの様なものがカバーごと潰れている、おそらくバットで殴ったのだろう。そしてその横の壁に金庫がはめ込んである。ボタンを押すと出てくる仕組みらしいが、あいつらはカバーを外さずにぶん殴って無理矢理ボタンを押したのだ。なんというか…滅茶苦茶だな。
とりあえず金庫にパスワードを入れると、軽い音と共に金庫が開いた。中には謎の注射器が入っていた。金庫にしまってある何が入っているか分からない注射器がこの世で1番怪しい物という事は周知の事実なので、とりあえず持っておく。なるほど、これを見られたくないから他の場所と違って防犯カメラの無い手術室に隠したのか。
そして次に向かったのはまたしても院長室。さっきのあいつらの会話から、あの棚の本をあまり調べていない事は分かった。俺もあんまり調べてないしな。
院長室に入り棚をよく見る。俺なら1番読む気が起きなさそうな本の中で、尚且つ中をくり抜いたりしても心が痛まないくらいの本に隠すだろう、そう考えて棚の中から合致する本を1つ手に取る。ページを開いてみると…ビンゴ、中から鍵が出てきた。
それを使って引き出しを開けると中から日記が出てきた。どうやら院長の日記のようだ。中身を要約すると、ここの院長は家族が全員行方不明になり、気が触れて失踪してしまったらしい。(本当はもっと院長の心が爆発してるやばい文章だった)
院長の日記を読み終えて、さあ次は何処へ行こうかという所で、またしても階段の方から大きな音がした。今度はさっきと比べ物にならないくらいの爆音だった。もう俺にバレるのをものともしていない。
走って向かってみると、さっきの階段下の空間にでかい穴があいている。あいつら人工知能なのに脳筋すぎないか?俺は注意深くその穴の中に入っていった。
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