第2部
ハードの難易度設定についてだが、ノーマルとの違いは2つ。
1つ目は子供達4人全員が冷静且つ隙を見て攻撃してくるってこと。どこにそんな勇敢な人間がいるんだよ!怪物だったら問答無用で攻撃してもいいのか?俺?俺はあくまで怪物だから攻撃しても良いんだよ。
2つ目は殺してはいけない時間が長くなること。脱出も防ぎつつ殺してはいけない…シンプルだが1番効く。
さて、そんな条件で始まった研究のど初っ端、俺はとりあえず2階の床の穴から4人の行く方向を確認する事にした。今回の4人は、ホラー映画で最初に死にそうな金髪のヤンキー(仮にヤンキーとする)、委員長とかやってそうな女子(仮に委員長とする)、いかにもホラー映画の主人公っぽい見た目の男子(仮に主人公とする)、空手とかで段を持ってそうな女子(仮に空手とする)である。流石ハード、中々強そうな奴等だぜ。
暫く見ているとそれぞれ男同士女同士で固まって逆方向に歩き出した。普通男女ペアじゃないの?と思ったが、なるほど空手が女子ペアの用心棒、ヤンキーが男子ペアの用心棒なのね。人口知能やりおる。とりあえず様子見がてら女子ペアの方に向かう事にした。なんとなく偏見で女子ペアの方が弱そう(今の社会で言うのはあまり良くない気もするが)だったので行ってみたわけなのだが。
「っ!?来るなら来い!」
気配に気付いたらしい空手が拳を構えながら大声で言った。そこは普通叫んだりするんじゃないか?これまでどんな奴でも俺を見たら一旦逃げてたぞ。
しかし来るなら来い、かあ…ここで殺すと後で雇用主に注意されるんだよなあ。とか何とか考えていた所、
「来ないならこっちから行ってやる!」
好戦的すぎやしないか?血に飢えた野生の獣なのかこいつの考え方は。それにどう見たって敵う相手じゃないだろ、武人なら相手との実力差くらいわかんないとだめだ
「ハッ!」
ろ…痛っ!ちゃんと痛い!武人なら相手も構えてから攻撃しろよ!不意打ちとか人の心ないのか?
そういえば人口知能だったわ…
その後も連続で舞のような美しい技でボコボコにされる未来をいち早く察知した俺は、吹き飛んだ衝撃を利用して後ろに飛び、一時退却することにした。
ふう…ここまで来れば大丈夫だろ。流石にあいつもここまでは追ってこないはずだ…あれ?いつの間にか攻守が逆転してるぞ。いかんいかん、気をしっかり持たなければ。あいつらは一旦見逃してやろう。
空手達と会うのを避けつつ俺は男子ペアを探す事にした。とりあえず1階の扉という扉を片っ端から開けていく。だが中々見つからない…いつもならこんな事無いんだが。そして1階の全ての扉を開けて気付いた。
「もしかして、扉開ける音で位置バレしてる?」
なるほど見つからないわけだ。これまでの難易度ならそんな事はなかったから失念していた。相手は注意深く音まで聞いているのだ。だから俺の目に映らないところでも俺の場所を把握できる。人工知能の発展が著しすぎるな、こりゃあ人工知能に人類が滅ぼされる未来もそう遠くないかもしれない。
気を取り直した俺はとりあえず音を立てないように動き始めた。それに注意深く音を聞くと微かだがあいつらの扉を開ける音も聞こえるようになってきた。なるほど2階にいるらしい。俺は静かに2階へ向かう。音が聞こえた位置的にこの部屋にいるはずだ。周りを確認してドアノブに手を引っ掛けた瞬間に思いついた。待ってれば出てくるじゃん。探索終わったら出てくるんだから、わざわざ見つかりに行かなくても扉の近くに待機して出た瞬間に襲えば結果は同じ、いや寧ろ混乱に乗じて分断もできるかもしれない。
俺は精一杯体を縮めて扉横の壁に張り付く。流石に人工知能でも俺が今までと違う動きをしたら動揺するはずだ。
扉がゆっくりと開く、そこから出てきたのは
「お前かよ!」
心の中で叫ぶ。空手じゃねえか!まずいぞ。いや冷静になれ、逆に今度はこっちの不意打ちなんだ、とりあえず空手と委員長を分断しよう。
俺はさっき戦った事で俺に攻撃出来ると学習している空手ではなく委員長を狙おうと考えた。多分その考えは良かったのだろう。だが
「おい!そこに化け物がいるぞ!」
どうもタイミングが悪かった。声がした方向を見るとどこで見つけたのか、バットを持ったヤンキーと主人公が立っていた。ヤンキーの声で俺に気付いた空手は有無を言わさず襲いかかってきた。それを間一髪避けた俺が次にやるべき事は簡単だ。
「あっ!待て!」
全速力で逃げ出した。3階に上がり隠れられそうな場所を探す。すると奥の方に図書室の文字。そういえば3階には図書室があったな。病院にちゃんとした図書室があるって結構レアケースだと思うが。そんな事を考えながら図書室に入りすぐに本棚の裏に隠れた俺はとりあえず深呼吸した。
ヤンキー達…最悪のタイミングで出てきたな、おかげでせっかく考えた扉前ガン待ち戦法が使えなくなった。それにあいつら武器持ってたぞ、あんなの無かっただろ前までは。うーん、どうやって攻めるべきか…そんな事を考えながら、目の前の本を無意識に取る。何気なく開いたページから紙切れが落ちた。拾ってみるとそこには数字が書いてあった。どう考えても意図的に隠されていたであろう紙をなんとなくで見つけてしまったようだ。これ、もしかして相手側が謎解きとかに使う紙か?だとしたらこれさえ俺が持ってればあいつらは…脱出できない?
とんでもない裏技を見つけてしまったかもしれない。そうか、俺はあいつらの妨害をするばかりでここから逃げる方法について何も知らなかったのだ。今後のためにも逃げる方法を知っといた方が良いかもしれない。
そう考えた俺は、あいつらと戦うのを避けつつ脱出方法を探す事にした。
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