勇者一行のその後

青いバック

お待たせ、早すぎるよ

 魔王の脅威が過ぎ去ってから、幾星霜の月日が流れだたろう。焼けた森は再生し、絶望に包まれていた国は活気を取り戻した。それもこれも、全て勇者一行のおかげ。


 夜空に浮かぶ星達は今日も世界を照らし続ける。


「隼人ー! 久しぶりだね〜! よぼよぼになったね」


「お前達が変わらなすぎなんだよ」


「ハッハッハッ、何も変わっておらぬな隼人」


 十本指では数え切れない程に、地球が巡った時勇者一行はまた出会う。

 ヨボヨボに皺くれた顔と指。勇者は自分の老いを嫌という程に感じていた。言うことも聞かずに動かすことすらままにならない、かつての剛腕も見る影をなくしていた。

 ヒーラー、タンク。二人の姿は何十年前と変わらず健在で、どこかに懐かしさの面影を漂わさせていた。


「……色々あったよね。燃える森に下がらない水位の国。 何十年前も前のはずなのに昨日のように思い出せてさ、なんか苦しいんだ」


「急なセンチメンタル」


「その一言余計なのも変わっておらぬな、隼人よ。しかし、分かるぞ。 私達の冒険、いや私の旅は早々と終わりを迎えてしまったが、昨日のように思い出せる」


「それも私だよ」


 三人が力を合わせ、幾度も打破してきた旅の思い出。昔のことだから、少し美化されているかもしれない。けれど、美化されていたとしても、その当時は確かに光り輝いていたものだ。


 俺だけの人生は無駄に長くて、息苦して何度も何度も泣きじゃくった。枕を濡らし、窓から顔を覗かせる星に願いを託した数は分からない。


 いつしか魔王を屠り去った英雄の剣と呼ばれた物も埃をかぶっていた。一度だけ売り払ってしまおうかと思ったが、旅の思い出がこれでもかと詰まっている。それを手放すことなど出来なかった。


「……でもさ、こうやってまたみんなに会えて嬉しいよ」


「おっ、そっちも急なセンチメタル〜。でも、嬉しいよ。私も」


「俺もだ」


 夜空に輝く星空は今日も世界を見守る。

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