第3話 たび

 今日は月曜日か……。

 公園での出来事はまだ記憶に新しい。

 あいつ大丈夫かな? ……いや、自分の心配しろって!


 悩みを解決する糸口は未だに見つからない。ただただ時間だけが過ぎていく。そう思いながらリモコンに手を伸ばした。


「台風3号は北上し、明日には北海道の真横に到達するでしょう。今日一日、東北地方は暴風雨に警戒してください。関東地方は雨は降らない予報ですが、風が強くなると予想されます。お出かけの際は飛来物に注意してください」


 お天気キャスターの声が耳に入ると同時に、僕は突然立ち上がった。部屋を出て階段を下り、風のように勢いよく玄関のドアを開けた。



 近所の公園に着いた。

 なぜあいつのことがこんなにも気になるのか分からない。分からないからこそあいつに答えを求めているのか。考えながら東屋へと走る。ベンチの前まで行くと、タンポポが無事だと分かった。

 良かった……。

 その時、再び視線を感じた。


「今だ!」


 僕にはそう聞こえた。と同時に前方から強い風が吹き上がる。

 台風を耐え抜いたタンポポは、僕に背を向け大空へと旅に出た。




 彼らを見送った後、気づいたことがある。

 この大きな世界にちっぽけな体で立ち向かう彼らにとって、僕の悩みは些細なことだったのだ。流れに身を任すしかない彼らと違って、僕たち人間は流れに逆らうことができる。

 周りと違うなんて気にするな。僕は僕のやりたいことをやる。

 気づけて良かった……。


 いや、彼らに教わったのか。

 あのちっぽけで強いたんぽぽに。

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