第8話 ティエルの思いと、ここでも料理
▷▷▷▷ティエル◁◁◁◁
私はティーレマンス王国の第三王女、ティエル•ミル•ティーレマンス。
約1年前、勇者を中心としたパーティーを選定することが王国で決まり、私はお目付役として配属を言い渡された。
その時、どれだけ私の心が躍り、まだ見ぬ勇者様に恋焦がれたことか•••。
だが、実際に私の前に現れたのは、顔は好みであったけれど、体がデブな男だった。
私は配属されたことを後悔し、どうにかこの状況を打破できないかと考えた末、この国の騎士団長でイケメンのマークをパーティーに追加招集するようお母様にお願いした。
私を可愛がってくれているお母様は、二つ返事で了承してくれたわ。
やっぱり、パーティーにはイケメンがいないとね。
私とマークは直ぐに恋仲になり、遠征先のテントの中で一晩中愛し合った。
遠征の度、デブと回復魔法使いのルイファを王族の名を使ってテントから締め出し、それはもう、愛し合った。
どうやっているか分からないけど、一晩中愛し合ってテントから出ると、いつもターゲットの魔物討伐が終わっている。
魔物の死体はないが、王都に帰還するとデブが提出していたから、討伐はされているのであろう。
状況から見て、あのデブが討伐しているのは間違いない。
だからこそ、先程パーティーから追放して欲しいと言われた時は焦ったが、流石は私のマーク。
しっかりとした状況分析を行い、討伐の秘密である剣を奪い取ったのだ。
ふふふ
邪魔者がいなくなって清々したわ
「ティエル、聞いておるのか?」
お母様でもあり、この国の王妃様であるマニーシア様に声をかけられ、我れに返る。
いけないわ
私としたことが、今は次回の討伐に関する話し合いをしていたのでしたわ
「申し訳ありません。少し疲れているようで•••」
「そうであったか。数日前に遠征先から戻ったばかりなのだから仕方あるまい」
「いいえ。もう大丈夫ですわ」
「なに、安心せい。次の遠征は10日後に出発であるから、少し休むがいい」
私はその言葉を聞き、花が咲いたような笑顔を浮かべる。
休めるからではない。
10日後に遠征を開始するということは、5日後の催しが予定通り行われるということだ。
「お母様。それでは、5日後の生誕祭は予定通り開催できますのね?」
「そのつもりだ。私も早30歳とはな」
「あら、お母様はまだまだ若々しく、美貌は年々増していますわ」
「ふふふ。ありがとう」
笑ったお母様には、王妃である時の厳しい表情はない。
その笑顔を見て、私まで嬉しくなる。
そんなお母様の生誕30周年を記念するパーティー。
近隣国にも招待状は渡っており、国を挙げて大々的に行うのだ。
他国の王子様に迫られたらどうしましょう。
美人というのも、大変だわ。
「お母様、必ず生誕祭を成功させましょう」
「ええ。ですから、パーティーの料理はよろしくお願いしますね」
「えっ??」
「本来なら魔物が活性化している中、パーティーを開催するのも憚れたが、どうにも、あの料理が私の頭から離れんのだ」
料理•••??
私は頭の中で過去のパーティーを遡る。
もしや
勇者パーティー結成を祝して大々的に行われたあの時では?
確かにあの時の料理は、これまでに食べたどんな料理よりも美味しく、各国の貴賓達も絶賛していた。
けれど、あの料理を作ったのは、あのデブだったはず•••。
主賓のくせに料理なぞしているデブを罵った記憶がある。
「あの、お母様。あの時の料理は、私で•••」
「そう。ティエルが作ってくれたのであったな。我が娘があのような料理を作れることを知って、私は泣いて喜んだものだ」
そうだ•••
あまりにも皆が絶賛するものだから、思わずパーティーの場で私が作ったと言ってしまったのだったわ。
「ティエル、楽しみにしているぞ」
「は、はい」
これはまずい状況だわ•••。
けれど、あのデブが調理場を借りて料理をしたということは、この王城の専属料理人が見ているはず。
あのデブが作れる料理なら、うちの料理人から作れるわよね。
ふふ
心配するだけ、無駄だったわね
▷▷▷▷マルティナ◁◁◁◁
勇者パーティーを無事追放され、私は心を軽くして王都の街を歩いていた。
屋台や防具屋、宝飾品屋など、様々な店がある。
そんな中、御目当ての武器屋があったため、騎士団長のマークに譲ったものとほぼ同じ値段の剣を買った。
そろそろ、防具、というか洋服が欲しいな。
そう、私が着用しているのは、マークが装備しているような鎧ではなく、俊敏性を重視した普段着に近いものだ。
その洋服に、私が魔法付与を施し、防御力を高め、サイズも自動で伸縮するようにしている。
太ったり、痩せたり、忙しいからね。
洋服屋を探して歩いていると、いつの間にか冒険者ギルドの前に来ていた。
元々、私は拠点をサングラニト王国にしていたから、ティーレマンス王国の冒険者ギルドには来たことがなかった。
もう、勇者パーティーではないなら、冒険者として今まで以上に頑張らないといけないし、どんな依頼があるのか確認しておくのはありかもな。
そう考えた私は冒険者ギルドの中に入った。
中に入った瞬間、冒険者達の視線が一気に向けられたが、私は構うことなく、1番奥の誰も並んでいない受付嬢の元へ歩き出した。
だが、受付嬢まであと少しの所で、私は冒険者の1人に肩を掴まれた。
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