第2話 街の異変
以前にラナはレイラと夢について話したことがあった。いつのことかは思い出せそうもなかった。しかし、その内容はハッキリ覚えている。
「ねぇ、レイラは夢ってある?」
何気なくレイラに問いかけると、レイラは考え込むようにして目を閉じる。
「私はずっとラナたちと一緒に居たいなって。そういうラナの夢は?」
「私はねー……うーん、レイラたちと遊ぶのが楽しくて考えた事なかったな」
「えーなにそれずるい」
そう言って笑い合ったのを覚えている。ラナがどうして今になってそのことを思い浮かべたのか、それはここ最近のレイラの様子がおかしいことが原因だろう。話しかけてもどこか上の空だったり、時々姿を見せないこともあった。そんなときは街中を探し回っても一向に見つからなかった。
そんな頃から街では小さな黒い影が見かけられるようになった。一番最初にそれを見たのは酔いどれアルコで、ふらふらと路地裏を歩いていたら小さな黒い影に襲われそうになったという話だ。酔っ払いの言葉だから誰も信じなかったが一人、また一人と目撃者が増えるにつれ、それは街中の話題となった。とはいえその影は住人に危害を与えるようなことはなく、ただ哀しそうに見つめてくるだけだった。
その他、ラナルタは奇妙な噂で持ち切りだった。小さな橋が一夜にして消えたという噂や姿を見せなくなった住民がいるという噂、時計塔から音が聞こえたなどとキリが無い。
そんな中、ラナはふらふらと歩くレイラを見つけた。疲れ切った様子で目には涙を浮かべていた。
「レイラ!? 一体どうしたの!?」
「ラナ……」
レイラはラナの顔を見上げるとその体に抱き着いた。ずっと我慢してきた感情が
「ごめんね……」
「どうしちゃったの……レイラ……」
声を掛けてもレイラはラナの胸に顔を埋め、泣いたまま首を振るばかりで何も答えない。困り果てたラナはふといつもの展望台が脳裏に浮かび上がってきた。
「あそこに行けばレイラも元気になるかな……」
レイラを支えるようにして立ち上がり、彼女の目を見て手を握る。
「私はずっとレイラと一緒だからね」
二人は手を繋ぎながら街を歩く。その景色はどこか異様だった。あちこちに小さな黒い影が立っていたのだ。それらはすべて、やはりどこか哀しそうに二人を見つめていた。
「よう、お二人さん。今日も元気……ではなさそうだな。どうしたんだ?」
「キャス兄! ……うん、なんだかレイラが元気なくて。いつもの場所に行けば元気になるかなって思ってたんだけど……あれ? 今日は珍しく飴を配ってないんだ」
「ん……ああ、そうだな。たまには休もうかと思ってな。ただ、いざ休むとなると何をしたらいいか分からないもんなんだな」
青年は何かを誤魔化すようにして笑う。そんな青年を見てラナは閃いたと言わんばかりに目を輝かせる。
「だったらキャス兄も展望台に来る? 景色は綺麗だしおじいさんが面白い話をしてくれるよ」
青年は
「いや、二人の楽しみを邪魔しちゃ悪いし俺は
「そっか……わかった! じゃあまた!」
ラナは元気に手を振って青年に別れを告げる。レイラもわずかに手を振るような素振りをしていた。そんな二人を青年は静かに見送る。青年が空を見上げると、朝と夜が混じった不思議な空がそこにはあった。
「後悔を残さないようにな」
青年と別れてあと少しで広場だというところで小さな黒い影たちが2体、行く手を阻むように立ち塞がる。住民たちからは影たちは人々に危害を与える訳ではないと聞いていたラナは、その影たちの行動に違和感を覚えた。
「えっと……なにか用?」
ラナは小さな影に声を掛けてみた。反応を期待した訳でもなく、なんとなくだ。ラナ自身がこの行動をなんだかおかしく思っていると、その予想に反して影はラナの言葉に返事を返してきた。
「アソボ……」
「ネェ……アソボ……」
その声は子供のようで、無邪気なものではあったがラナはその声にわずかながら恐怖を感じていた。思わず後ずさりしてしまいそうになるが
「ごめんね、これから行かないといけない所があるからキミたちとは遊べないの」
ラナが子供を
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