第2話 風使いの目覚め
謎のエルフの少女と輝く宝石プラスフィアに遭遇した僕。
正直、僕は困惑を隠せなかった。
そのあとのことは簡単な説明だけだった。
僕が選ばれた存在であること、それは運命だということ、ミーナとは昔あったことがあるはずということ、母のことが関係しているということ。
どうやらミーナ自身もなんとなくしか理解していないらしいが大方の事情は分かった。
それにしたって、いきなりハイそうですかといえる話ではない。
「ごめんね。私もまだわからないことが多いの。2人で力を合わせて進みましょう」というミーナ。
「3人なのだ。」ツッコむトララ!
「2人とも、どうもありがとう。とても心強いよ。」
なにせ今までずっと1人で母を探してきたんだ、仲間がいるに越したことはない。
「そういえば名前を聞いていなかったわね。あなた名前は?」と聞くミーナ
「ああ、僕?僕の名前はミコー、ミコー・ガブリエル。」と自分を指して名乗った
「いい名前ね、じゃあこれからはあなたのことはミコーと呼ぶわ」と頷くミーナ。
「ところで、ミーナさんの知ってることはわかったんだけど、待っていたってどういうこと?トララは何故一緒にいるの?」と尋ねる
「ミーナでいいわよ!それについてはトララが関係してくるトララから説明するわ。」とトララの方を向くミーナ。
トララは待ってましたと言わんばかりに飛び出てしゃべりだした。
「私はプラスフィアの精霊なの!だから話すことも、飛ぶこともできるの!」とくるりと宙返りして見せた
「なるほど……。」と言いながら疑り深い目見る僕。
「なんなのその目はー!疑ってるでしょう!」とトララは膨れた顔をする。
「もう仕方ないから見せてあげたら?」
いたずらっ子のようにニヤニヤと笑いながらミーナはトララに言った。
「え?……?」唾をごくりと飲む僕。
「わかったのだ。」とくるりと回って手を合わせるトララ。
するとまばゆい光がトララと僕たちを包み込んだ。
「じゃーん!これが私の本当の姿!あまり長い時間は入れないけどね」
そこには猫耳(トラリス耳と呼ぶ人もいるのだろうか?)の10歳前後女の子が立っていた。
「こ、これが本当の姿……?どういうこと……?」
「私から説明するわね。トララはプラスフィアの精霊っていうのはさっき言った通りよ。でもそれだけじゃないの。トララには未来を見る力があって、その力でミコーのことを見て待っていたというわけ。」とミーナが説明する。
「ただその力のせいで悪い人たち、“黒帰団”(こっきだん)に追われているの。それを私が助けたってわけ」
まさか人型に変身できるとは思わなかったけど、とミーナは続けた。
えっへんという感じに誇るトララ。
しかし「へー、なるほど」と簡単にはのみ込めない事実がまた出た……未来を見るって……?へ?
「未来を見るはそのままの意味よ。極端な例をあげればミコーの明日の夕食を当てることだって、何ならミコーのお母さんが見つかるかどうかまでわかるの。使うにはそれなりの条件があったり、使ったらしばらく目を覚まさないとかいろいろあるんだけど」と長い髪をもてあそびながらミーナが説明してくれる。
「母が見つかるかわかるんですか!?ぜひやってください!」と前のめりになる僕。
「言ったでしょう使うには条件があるって!慌てないの。」
ミーナはあきれたように言う。トララはいつの間にかトラリスの姿に戻っている。
「少なくとも私が把握している条件は2つ。1つは対象の人や物に触れていること。そしてもう一つは強い思いがあること。悪いんだけどそれくらいしか私にはわからないの。あとは能力を使ったら5時間は目を覚まさないということ。そして残念なことにトララ自身も条件を全部わかってないの」
「わからないのだ」とトララは言う。
でも――とすがる僕
「でも、それなら二つの条件は満たしているじゃないですか!できるかどうかわからないけど、とりあえず試してみましょうよ」と促す僕
そんな僕を制して周りに急に気を配るミーナ
「どうやら、今はそんな場合じゃなくなったみたいね。」というミーナ
話に夢中になって気づかなかったがどうやら建物の周りを何者かが囲んでいるようだ。
窓の外にうごめく人影のようなものが見えた。
「ミコー戦える?武器は持ってる?私たちのこと守れる?」
「え、戦う?今、周りにいるやつが黒帰団ってやつですか?戦うって言っても護身用の短剣しか持ってないし、実戦経験なんてありませんよ?」とオドオドする僕。
「あら、期待してた運命の人も大したことないのね」とあからさまに肩を落としてがっかりした風に言うミーナ。
「もういいわ、ミコーがやらないなら私がやる!トララは隠れてて!」と腰のレイピアを構えるミーナ。
するとその様子を窓から確認したのか、大勢の黒いローブの者たちが入ってくる。
「こいつらが黒帰団?」と困惑する僕
「そうよ。こいつらが黒帰団、今回は下っ端だけのようね。」とミーナ。
黒いローブの者たちは距離感をうかがいながらじりじりと寄ってくる。
先に動いたのはミーナだった。ミーナは素早くレイピアで突きを繰り出したり敵の攻撃を受け止め敵を退けていく。
どうしよう……やらなきゃ……怖い……でも。
そうこうしてるうちにミーナの背後から飛び掛かろうとする敵が……ミーナは気づいていない。
「ミーナ、危ない」
そう言いながら僕は敵に飛びかかると、右腕が淡い緑色に輝いた。
敵はびっくりしながら一旦離れ距離を取った。
僕はハッキリとした確証はないが敵に向けて振りぬいた。
すると右手の先から緑色の光が現れ疾風のように飛んで行った……それはまるで美しい小さな女性のようだった。
その女性は敵にあたると光って消えた。
当たった敵は後ろに吹っ飛ばされ壁にぶつかった。
「これは……一体……?」
僕は自分に何が起き、また何を起こしたのかがわからなかった。!
「シルフ!!ミコー、風使いだったの?」と問うミーナ。
予想外の出来事に戸惑う黒帰団……そのまますごすごと退散していった。
「ミーナ……ケガがなさそうでよかった……。」とミーナに近寄る僕。
「ありがとう。ミコーのおかげで助かったわ。」と言いながらレイピアをしまう。
「ところで、シルフって?」風使いって言っていたけど……何のことだろう。
「ミコーは自分の力が何なのかわからないようね。いいわ、説明してあげる。」とほほ笑んで話しかけてくるミーナ。
「あたしも聞きたい。」とトララが言った。
「風使いはね、シルフっていう精霊を自在に操ることで風を操るの。炎や水を操る人に比べたら数が少ないから、私も見るのは初めてよ」
まさかこんなところでお目にかかれるとはね、と観察するような目で見られる。
「風使い……?僕が……?」と戸惑いの表情を浮かべた。
「すごい!すごい!あたしも長く生きてきたけど初めて見るのだ!」と僕を気にする様子もなく叫ぶ。
「長く生きてきたってあんたいくつよ……。」とミーナがあきれた様子で言う。
トララはヒミツ―と子供のように笑った。
僕はトララの年齢にも少し興味があったが、自分の力についてのほうが気になったので、これ以上年齢の話を聞くのはやめておいた。
「どうやって使うんですか……?」と自分でもバカみたいな質問だと思いながらミーナに聞いた。
「えー……知らないわよ、そんなの……でもさっきの感じからすると、強く念じたりしたら使えるんじゃない?」と本当に知らない様子だったので、トララにも聞いてみることにした。
「ねえ、トララは何か知らない?」
オッホンとトララは偉そうに咳払いをして、テキトーな推察を偉そうに語り始めた。
「あたしの見立てによると右腕が光っていたのだ!だから右腕が何か関係してると睨んでいるのだ!あたしの見立てに間違いはない!」と偉そうに言った。
「そんなのだれが見てもわかるわよ――ミコー右腕に何かあったりする?」
何かと言われても特に何もない……昔母さんにもらったブレスレットがあるくらいだ。
「あら、きれいなブレスレットね。それちょっと見してくれる?」と右手を握ってくるミーナ。
年頃の女の子に手を握ってもらう経験なんてないからドキッとする僕。
ドキドキしてる僕を尻目に、しげしげとブレスレットを見つめるミーナ。
ミーナはあっと声を上げた。
「このブレスレット凄く強い思いが込められてる……暖かくて優しい思い……。」
念入りにブレスレットを見回すように触った後、ミーナはこういった。
「どうやらこれがきっかけになって発動したようよ!力そのものはミコー自身が持ってるみたいね」とりあえず色々試してみたらと言って手を放してくれた。
「一緒に頑張りましょう。何かあったら手伝うから。」
「ありがとうございます!頑張ります!ハイ。」と緊張のあまり僕は変な口調になってしまった。
ミーナは不思議そうな顔をしたが、話を続ける。
「とりあえず、ここを離れましょう。いいわねミコー?トララも準備して、とりあえずプラスフィアをしまって!」と当たり前のようにものすごいことをいうミーナ。
「し、しまう……?」僕が驚いてると、トララはさも当たり前のように「はーい」と返事をして、なんとその小さな体に飲み込んだ。
「えぇ!口が伸びて広がって!?えぇ?」僕は口をあんぐりあけて呆けてしまった。
トララはお腹をぽんぽんと叩いていた。
それを見てミーナはけらけらと笑う。
「大体みんな同じような反応するのよねーすごいでしょ」
まぁそんなことよりさあいくわよと言って建物の外へ向かうミーナ。
慌てて追う僕……やれやれ、まあ愉快な旅になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます