第3話 大きい方が好き

「いいなー」


 ちゃぶ台を挟んで、ちょっと可愛い子は色々な角度からうっとりとキジトラの猫人間を眺める。


「子猫にはない大人の魅力だわ……あ、すみません、大きい猫の方が好きなもので」


 この不気味な奴を大きい猫の分類に入れているこの人は大物なのかそれとも……。


「あ、自己紹介がまだでしたね私、朝倉真由美あさくらまゆみって言います」

「あ、僕は杉田研一すぎたけんいちです」


 名前教えてもらっちゃたよ。

 なんだかそれだけで、ときめいてきた。


「あなたのお名前は?」


 真由美はキジトラに向かって名前を訊いた。

 こいつに名前なんてあるのか?

 猫人間は腕を組んで考えている。


「ちょっとお待ちください」


 いや、無いんだろ。


「ミーちゃん……」


 嘘つけ!

 そしてキジトラの申告は、真由美に受け入れてもらえなかった。


「あのね、ミーちゃんっていうのは綺麗な白い雌猫の名前だよ」


 この人の知識はどうなってるんだ。


「私があなたにピッタリな名前考えてあげるね……」


 真由美は人差し指を額に当てると、眉間にしわを寄せてウーンと唸った。


「はい。出ました!」

「もう?」


 頭の回転凄い人なのか。


「猫っぽくもあり、また人っぽくもある。ちょっと大人の雰囲気漂うのいきなり思いつきました」


 関心があるのだろう。猫人間の瞳孔がやや大きくなった。


「ほう、どんな名前でしょう」

「ではではでは」


 ちょっとの期待と大きな不安。滅茶苦茶盛り上がっているちょっと可愛い朝倉真由美さんは、果たしてとんでもない人なのかどうなのか、次回に続く。

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