第2話 猫狂いでした

 ピンクの壁紙。色々と可愛いインテリア。ちょっといい匂いのする室内。

 女の子の部屋って凄いなと、全く自分の部屋と同じ間取りでこうも違うものかと感心していた。

 部屋の中には小さな丸いちゃぶ台。それを囲んで自分とちょっと可愛いあの子とゴミ捨て場にいた猫人間。

 湯気の立つ三つの湯呑を前に少し寛いでいた。

 どうしてこうなったかと言うと……。



「猫ですか?」


 ゴミ捨て場で少し距離を取って、そう訊いてきたちょっと可愛い子。   

 こんな気持ち悪いやつをどう見たらそう見えるのかと、やや正気を疑ってしまった。

 ちょっと可愛い子はそのまま続ける。


「ひょっとして猫お好きなんですか?」


 いやその前に何を見てるんだこの人は。

 まずその前に最初の質問「猫ですか」に答えるならばノーだった。そして次の質問「ひょっとして猫お好きなんですか?」に関してはイエスだった場合にのみ広がっていく話だった。

 猫かどうかの前に不審者だろと言いたかったが、なんだかちょっと可愛い子が目を輝かせていたので言い出しにくくなった。


「まあ、猫は好きな方ですが……」

「私もなんです!」


 滅茶苦茶食い付いてきた。


「猫好きな方で良かった。その子野良ちゃんですか?」


 その子って、野良かどうかの前に気味が悪くないのかこの人は……。


「さっきなんだか争ってるような音がしてたんで、誰かに猫がいじめられてるんじゃないかって思ってたんですけど私の勘違いでしたね」


 そう言われて、さっき争った時にいっぱい抜けたキジトラの毛が掌についていることを思い出した。

 女の子に見えないように服でこすり落とす。


「それにしても立派な頭だわ」


 何だかうっとりとしている。


「そうだ、ちょっと私のお部屋に来ませんか?アパート、ペット禁止だけど猫っぽい人だったら問題ありませんよね」


 そうか、そう解釈できるのか。まあまあな屁理屈だった。

 待てよ。なら人っぽい猫と捉えた場合はアウトなんだな。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 猫人間はさっさとゴミ捨て場を出て行こうとした。

 こんな気味悪い奴を部屋に招くちょっと可愛い子。なんの遠慮もしていなさそうなゴミ捨て場の猫人間。

 まともなのは自分だけなのではないかという不安はあったが、女の子の部屋に入れるという誘惑には勝てなかった。

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