第2話
ゴン、という音と共に後頭部に痛みが走る。思わずそこを抑えて呻き声をあげてしまった。痛みを与えたものを探して視線を動かせば、むっつりと口を噤んで整った眉を顰め、怒っているとその表情で雄弁に伝えてくる先輩がいた。
「お前な、疲れているのも文字を追っていて退屈なのもわかるが勤務時間中に寝るな。寝るならさっさと宿舎に行って休め。」
ため息を漏らせば先輩は向かい側の席にどすんと勢いよく座り、積みあがっていた中で付箋が付いていない手つかずの本を手に取ってぱらぱらとめくり始めた。
「先輩、手伝ってくれるんですか?いっつもお優しいご指導してくださる先輩が珍しい」
皮肉を込めてにっこり笑いかけてやればその胡散臭い顔をやめろと片手に持っていた本をぱたりと閉じてゴツンと額に当ててくる。先ほどの後頭部の痛みもこれが原因かと今の一撃より重い衝撃を食らった後頭部を撫でさする。
「出動して帰ってきたところに厄介な案件持ち込まれたかわいそうな後輩を助けてやろうとしているんだ。先輩の好意はありがたく受け取れ」
「う、すみません。ありがとうございます」
外でも走ってきた帰りなのだろう。うっすらと汗ばんだ彼女も疲れているはずなのに手伝ってくれようとしているのだ。自分の業務を終えたか休みであるかのどちらかである彼女の少ない自由な時間もこの国に捧げられるのだなと思って思わず目を伏せてお礼を言った。珍しいなと虚を突かれたような表情をした先輩に頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。相変わらず素直になれない僕は思い切り頬を膨らませ、髪が乱れたことについて文句を言った。そんなやり取りをしながら本に纏められた古い雑誌やら新聞の情報を当たっていく。こんな作業をしているのにも理由がある。
二十年ほど前僕の母親が殺された時と同じように神社に死体を飾る悪趣味な事件がこの国では度々起きているからだ。全くといっていいほど同じ手口で何年か事に起きる事件は百年以上前からこの国の民を蝕むこの事件の完全解決を政府は決断し、それを目指すべく最初の一手として僕はこの作業に充てられたという訳だ。
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