特殊部隊怪奇部門調査部~僕はツンデレなんかじゃない~
多羅千根らに
第1話
新幹線の窓を勢いよく叩く雨粒がそのまま僕の喉を貫いてくれたらいいと思った。十年経ったって僕はあの人が死んだ事実を受け入れられないでいる。これが夢なら覚めてくれ。八月の蒸し暑さが脳を茹で上げる。毎年この季節にあの人のお墓に訪れて、実家に赴いて線香をあげる僕をあの人の家族はどんな思いで見ているのだろうか。もっとも、墓参り自体はしょっちゅう行っていて、もはや僕があの人を手入れしているようなものなのだが。
あの人は家族に大切にされていたが愛されてはいなかった。死んでしまった優秀な子供は暫く同情を引くのに役に立っても十年も経てば効果も薄れるのかお盆にすら墓参りに来なくなっていた。あれほど毎日熱心においおいと墓の前で号泣していたというのに。母親もそうだが兄の方もいただけない。あの人が死んだときに滲ませていた怒りは、犯人を見つけ出すという決意は、どこに行ったんだ。警察の風上にもおけない屑野郎。マスコミの前に被害者の兄としてしゃしゃり出て、散々芝居がかった仕草であの人の想いを汚して、自分が称えられ持ち上げられることしか考えていないのだろう。
まだ目的地に着くまで暫くある。ガタガタと揺れる感覚に、不愉快な思いを洗い流すような雨の音に身を預けるようにしてひと眠りすることにした。
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