―紺碧―
このまま進んでいても延々と廊下が続くだけだと感じた。変わり映えのしない景色から脱する為、目に付いた扉を開ける。
最初に瞳に飛び込んできたのは、青い光を忙しなく発するブラウン管テレビだった。今時珍しいなと感じるも、今が西暦何年なのかさえ私には分からない。妙に理解が早いのはそういう世界だからだろうか。私は六歳の少女で、人生経験だってきっと少ない。それどころか記憶がないのに直感的に理解できることが多すぎる。
この世界について考察するのはここから無事に出てからにしよう。ブラウン管の前には注意深く見れば少女がいた。その事実はこれと言って驚きではなかったから、特に感動はなかった。
「ここがどこだか分からない?」
同年代の少女なはずだ。それどころか、後ろから見ている限りは容姿がそっくりに見えた。
彼女は振り返る。
「ひっ」
息が漏れるような声を発した彼女のその顔立ちは、予感の通り私にそっくりだった。しかし所々のパーツが違うような気もする。
表情が強張ったその少女は、その青いワンピースには不釣合いな刃物を取り出した。そこでようやく私は、この邸宅の異質さを理解出来たのかも知れない。
「消えろ」
「何なの!? 私はただ……」
「殺してやる」
幸いにも、彼女の足は遅かった。必死で逃げるとすぐに諦めたようだった。
扉を跨ぐ直前に振り返ってみると、彼女はトボトボと置いてある黒電話の方へ向かって行った。何を喋っているのかは分からないが、とにかく逃げよう。
再び黒い廊下へ出ようとしたはずなのだが、どうしてかそこは大きな玄関ホールのような形をしていた。期待を持たずに玄関の戸を開けると、やはりと言うべきかその先にも廊下が広がっているのみであった。そこへ進んでもまた同じことの繰り返しだと思い、一先ずはこのホールを調べてみようと考えた。
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