第37話 1/24
「は?」
そう呟いて間も無く、骨で満ちた地面が、鹿芝の立つ位置を囲うように亀裂を残して割れた。その奥深くからいくつもの白骨の腕が、鹿芝の両足へと手を伸ばしながら姿を現して、足場を埋め尽くす。
(駄目だ...修復をしないと...)
身体にそう念じるも、纏わりつく白骨の腕が集中を乱し、修復を阻害する。爪先から膝の上までを、樹上を這う蛇のような無数の白骨の腕によって埋め尽くされ、胴体から下は微動だにすることすら不可能なほどに、既に拘束されていた。
(思考が追いつかない...どうなってる...?)
手段を模索する鹿芝の脳内に、不穏な気配が過る。
足元が、黒く染まっている。純粋な黒色、黒髑髏の口腔と同じ色彩を宿した黒一色の暗闇が地面を塗り潰し、沼地に浮かぶ淀んだ水面のように揺らめいていた。
そして徐々に、鹿芝の両脚に鎖のように絡まった白骨の腕ごと、爪先から少しずつ、その奥に沈み込もうとしている。
「意味が...わかんない...」
周囲を見渡すと、何が起きているのかが理解できた。理解できてもなお、思考が事象に追い付かなかった。
地面全てが、黒髑髏の口腔と化していた。
仕掛け罠である円形のトラバサミのように、口を大きく開いた黒髑髏が真下の地面から真上の空へ、地殻を突き破って屋敷の庭全てを捕食し、辺りを口腔の闇に沈めていた。
(もう...何もできない)
それが、正直な答えだった。抗う手段を損なった鹿芝の肢体に絡まり、這いずるようにその全身を拘束する白骨の腕ごと、一面中に広がる闇の中へと沈みゆく。
「地獄転移・骨の迷宮」
白骨で満ちた庭地全てをその口腔に満ちた漆黒へと沈めた黒髑髏は、掠れたペインの声を合図に一瞬でその口を閉じた。
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