第2話 俺とコイツのデートは予定すら合わない。

6時間目の授業も終わり、俺は浅野あさのをデートに誘うことにした。

流石の俺も、ノープランで誘うほど野暮じゃない。行く当てはもちろん考えてる。誘う展開まで何度もイメージトレーニングしている。

タイミングはもちろん部活中。俺もあいつも同じ部活だから何かと接点があるのだ。


帰りのHRも終わった。

俺は席を立ちあがると、さりげなく浅野の席の前に歩いて目配せをする。だけで伝わればいいのだが、生憎そこまで関係が進んでいるわけではない。俺は素直に浅野に話しかける。

「なぁ浅野、今日部活中に話したいことがあるんだけど、いいか?」

「藤野君、帰宅部のくせにいっちょ前に部活中とか言わないでくれる?」

「あ、はい…すみません…」

「まぁ、ほら行きましょ。あんまり教室で話していると周りからの視線も集まるし」

実際、俺が軽くいなされている様子を一部のクラスメイト(主に男子)は、面白そうにはたまた、悔しそうに眺めていた。

俺は、少し恥ずかしくなり浅野を連れて足早に教室を出た。


校門を出て、最寄り駅まで歩く。10分ほどで着いてしまうので、俺は早めに話題を切り出した。

「で、言いたいことっていうのは、今度デートでも行かないかって話なんだけど」

「はぁ」

「い、いや別に深い意味は無くてね。ただ、俺たちほんとに付き合ってるのかってレベルで何もしてないから、ね?」

難色な反応を示されて俺は慌てて取り繕う。

「まぁいいわ。で、日程は?」

「こんどの土曜日の午後なんてどうかな。午前中授業終わってそのまま、行く感じ」

「一ついい?私は別に構わないけれど、藤野君は学校の人とかに見られるのは嫌じゃないの?」

「え、浅野は嫌じゃないのか……」

思わぬ気遣いと、浅野も別に俺を嫌っているわけではないと知れたことにより、俺は一瞬思考が止まって、オウム返しのようになってしまう。

「別に構わないわ。藤野君も大丈夫ならそれでいいんだけれど」

「全然、大丈夫だよ。それじゃあ、どこに行くかとかはその時までのお楽しみでね~」

「分かった、楽しみにしてるわ」


よし、よしっ!よっしゃー-!あの、浅野をデートに誘えたぞ!しかも、楽しみにしてるだなんて、これは俺たちの関係も一歩進むんじゃないか。

俺の心がフィーバータイムになった矢先、スマートフォンに顔を向けていた浅野から突然声がかかる。


「あ、その日、ピアノの発表会あるから行けない。ごめんなさい」

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